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2025年02月19日
社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一
転職市場の活発化、リスキリングや教育訓練の強化、育児・介護と仕事の両立に関する在り方等について注目される中、2025年には雇用保険法や育児介護休業法における制度改正や給付制度の見直しが行われます。本年に対応が必要となる主な法改正について紹介します。
次の法改正については既に施行済みのため、対応ができているか改めて確認しておきましょう。
労働安全衛生関係の手続きについて、電子申請が義務化されます。労働基準監督署への訪問や郵送手配が不要となり、手続きの効率化が期待できます。対象となる主な手続きは次の通りです。
求人サイトでの入社祝い金等の提供が規制されます。企業の採用活動において直接影響する部分はあまりないと思いますが、リファラル採用(自社の社員から友人や知人などを紹介してもらう手法)による報奨金制度を設けている場合には、社内のリファラル採用制度の在り方についてあわせて注意しておきましょう。
次の通り、雇用保険法の改正や育児介護休業法の改正について施行されます。
労使協定により「65歳未満の定年年齢」を設定することができる経過措置が設けられていましたが、2025年3月31日をもってその経過措置が終了します。
よく言われる「2025年4月から65歳定年が義務化される」とは、経過措置の終了に伴い、これまで通りの高年齢者雇用確保措置(①定年制の廃止、②65歳までの定年の引き上げ、③希望者全員65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかを実施)が完全に適用されることを意味します。
これを機に高年齢者雇用確保措置③を講じている会社から、措置②の導入をしたいといった相談も増えてきているところです。
障害者雇用促進法により、一定の労働者数を上回る企業には、法定雇用率に基づく数の障害者を雇用する義務があります。2025年4月以降、労働者を40人以上雇用している事業主は1人以上の障害者を雇用し、実雇用率が「2.5%」を上回るようにしなければなりません。(ちなみに、法定雇用率は2026年7月から「2.7%」に引き上げられる予定です。)
また、障害者の雇用義務の軽減措置として、除外率制度があります。
除外率制度とは、免許・資格等が必要であることや安全面での懸念があること等の理由から、障害者の就業が一般的に困難と認められる業種について適用される制度で、法定雇用労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数が控除され、障害者の雇用義務が軽減されます。
なお、この除外率制度は、2002年の法改正で廃止が決定しており、2025年4月より除外率を引き下げていくとのことです。
雇用保険法に関する改正等については、次のものが挙げられます。
このほか、通達の改正により、原則の給付制限期間が2か月から「1か月」へ短縮されます。(ただし、5年間で3回以上の自己都合離職の場合には給付制限期間を3か月とする取扱いは現行通りです。)
60歳時点の賃金額の75%未満になった方に対して、60歳以後65歳に達するまでの期間、各月の賃金の「15%」を上限に支給されていた高年齢雇用継続給付ですが、2025年4月1日以降に60歳に達した日を迎えた方を対象に、支給率の上限が「10%」に縮小されます。
なお、2025年3月31日以前に60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年を満たすこととなった日)を迎えた方は、現行の支給率上限に変更はありません。
保育所などへ入所できないことを理由に育児休業給付金の延長手続きをする場合の手続きが厳格化されます。理由なく自宅や勤務先から遠い保育所に申し込んでいないか等、いわゆる「落選狙い」をしていないかを確認するために、延長申請の際に次の書類添付が求められます。
※これまで3.のみであった添付書類に1.、2.が加わります。
なお、この取扱いは2025年4月1日以後に育児休業に係る子が1歳に達する場合、または1歳6か月に達する場合から適用されます。
2025年4月1日から、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給を受ける方が、両親ともに一定期間内に通算して14日以上の育児休業(産後パパ育休を含む)を取得し、一定の要件を満たすと「出生後休業支援給付金」の支給を受けることができます。
出生後休業支援給付金として休業開始前賃金の13%を支給することで、育児休業給付金等の67%とあわせて給付率80%(税・社会保険料控除後の給与手取り100%相当)へと引き上げます。
2025年4月1日から、2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業した場合に、賃金が低下する等一定の要件を満たすと「育児時短就業給付金」として、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を上限に支給を受けることができます。
男女とも仕事と育児・介護を両立できるように、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置や介護離職防止のための措置についての改正が実施されます。
※育児休業及び介護休業等に関する改正についての詳細は、2024年7月17日掲載のコラムをあわせてご確認ください。
これまで労働者が1,000人を超える企業の事業主に義務付けられていた「男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表すること」について、育児介護休業法の改正により、労働者が300人超1,000人以下の企業にも公表が義務付けられます。
公表内容としては、次の1.または2.のいずれかの割合を企業HP等に公表します。
公表内容2.の「育児を目的とした休暇制度」とは、育児休業や子の看護休暇など法定の制度は除き、「育児を目的とするもの」であることが就業規則等で明らかにされている休暇制度を指します。会社独自の育児目的休暇(有給)を創設することで、1日~数日程度の短期間の休暇を気軽に取得できる社内の雰囲気を作るとともに、公表する男性の育児休業取得率等を向上させることに期待できます。
主な内容としては、次の通り雇用保険法や育児介護休業法の改正が挙げられます。
2025年10月1日から施行される改正内容としては、次の措置があります。
柔軟な働き方を実現するための措置として、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、次の5つの措置の中から2つ以上の措置を選択して講ずる必要があります。選択した措置について、就業規則等の見直しをあわせて行いましょう。
また、事業主は、次の時期に子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する以下の事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければなりません。
教育訓練休暇給付金とは、リスキリングの重要性が高まる中、自己啓発やスキルアップを支援するために創設される制度です。5年以上の雇用保険被保険者期間を有する方を対象とし、職業に関する教育訓練を受けるために無給の教育訓練休暇を取得した際に、その期間中の経済的支援を目的として、失業給付と同額の給付金が支給されます。
その他予定される施策や検討されている事項について紹介します。
2024年12月2日より開始された健康保険証の新規発行終了及びマイナ保険証への移行について、2025年12月1日をもって従来の健康保険証が有効期限切れとなります。
2024年12月2日以降は、従来の健康保険証に代わり、「資格確認書」の発行ができるようになっており、現状医療機関等を受診の際には、従来の被保険者証やマイナ保険証を用いるほか、資格確認書による受診が可能です。
既に加入している被保険者については、保険者が必要と判断した場合(マイナ保険証をお持ちでない方、マイナンバーが未登録の方等)に、従来の健康保険証が失効になるまでに「資格確認書」が自動交付される予定です。ただ、移行期間の不安を解消するためにも、事前にマイナ保険証の利用登録をしておくことをお勧めします。
労働基準関係法制研究会の報告書によると、定期的な休日を確保するため、「13日を超える連続勤務を禁止すること」や「法定休日をあらかじめ特定すべきこと」を法律上に規定するよう検討されているとのことです。
今後、法定休日の特定(毎週日曜日等)が義務化されれば、就業規則の見直しだけでなく、勤怠システムの設定や給与計算方法にも影響が出ることが予想されます。
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