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2024年04月17日
社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一
近年、働き方の多様化が進み『フリーランス』という働き方が社会に普及してきました。一方で、フリーランスの方が取引先との関係で様々な問題やトラブルを経験していることが明らかになっています。そのような背景により公布された「フリーランス新法」の概要についてご紹介します。
フリーランス新法は、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、令和5年5月に公布され、令和6年秋頃の施行予定となっています。
この法律は、一人の個人として業務委託を受けるフリーランスを対象として、交渉力などに格差が生じることを踏まえ、「1.取引の適正化を図ること」及びハラスメント防止など「2.就業環境の整備を図ること」の2つを目的としています。
内閣官房が実施した令和2年の調査では、「462万人」がフリーランスとして働いていると試算され、毎年増加傾向にあります。また、内閣官房が実施した令和3年フリーランス実態調査では、フリーランスのうち約4割の方が、
などの取引上納得できない行為を受けた経験がある者が多数いるという実態が明らかになりました。
このように、発注者である組織と受注者である個人との契約では、組織の方が強い立場になりやすい傾向にあるため、フリーランスに対しても労働契約における労働者と類似した保護が必要であると考えられます。
この法律の対象となる者は、以下の通りです。
「フリーランス(特定受託事業者)」・・・業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないもの。
「発注事業者(特定業務委託事業者)」・・・フリーランスに業務委託をする事業者であって従業員を使用するもの。
※「従業員」とは、「雇用保険対象者(週所定労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者)」をいいますので、従業員が短時間・短期間等の一時的に雇用される者のみであれば、フリーランスに該当し得ることとなります。
この法律に規定される義務項目は、大きく次の7項目となります。大まかな内容を押さえておきましょう。
次の①~⑦は独占禁止法や下請法に準じて規制されます。また、①~⑦は労働者と類似の保護を実現するために規定されています。
委託業務の内容、報酬の額、支払期日、その他「公正取引委員会規則」で定めるその他の事項の明示を義務付けています。メールやSNS等での明示も可能とされると考えられます。
「成果物等を受領した日から起算して60日の期間内」のできる限り短い期間内に報酬の支払期日を定め、その支払期日までに報酬を支払わなければなりません。
※発注事業者が、他の者から受託した業務委託をフリーランスに再委託する場合は、「他の者から発注事業者への報酬支払期日から起算して30日の期間内」とされます。
独占禁止法及び下請法に準じて「受領拒否」「報酬の減額」「返品」「買いたたき」「購入・利用強制」「不当な経済上の利益の提供要請」「不当な給付内容の変更、やり直し」が禁止事項として列挙されています。
発注事業者とフリーランスの取引条件のミスマッチやトラブル防止の観点から、広告等によりフリーランス募集に関する情報提供をするときは、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。
発注事業者は、フリーランスが育児や介護等と両立して業務が行えるよう、その申出に応じて必要な配慮をしなければなりません。特に、継続して委託されるフリーランスについては一方的な契約解除とはせず、「オンラインでの業務を可能とする」等、育児や介護等に配慮した対応が想定されます。
ハラスメント防止のための措置は、「ハラスメント対策の方針明確化、方針の周知」「体制整備」「ハラスメント発生時の迅速かつ適切な対応」等が想定されます。措置の具体例は、今後厚生労働大臣の指針により明確にされる予定です。
発注事業者は、継続的業務委託を中途解除する場合は、原則として中途解除日の30日前までに、フリーランスに対し予告しなければなりません。契約の中途解除や不更新をフリーランスに予め知らせ、フリーランスが次の取引に円滑に移行できるようにすることを目的として設けられたものです。
前述した法律の内容に関し、詳細は政令、公正取引委員会規則又は厚生労働大臣の指針により定めることとされている部分があります。最新情報をご確認の上、令和6年秋頃の施行に備えて、事前に準備しておきましょう。
厚生労働省HP:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ
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