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column
2024年10月09日
水谷IT支援事務所代表 水谷哲也
2023年、ユーキャン新語・流行語大賞のベスト10に入ったのがオープンAI。チャットGPTをはじめAIがすっかり身近な存在となった1年でした。そんななかベルギーから驚くべきニュースが飛び込んできます。AIを用いたチャットボット(自動会話システム)との会話にのめり込んでいた男性がチャットボットに促されて自殺してしまったという内容です。チャットボットの名前がイライザでした。
男性は30代の家庭を持つベルギー人で、気候変動問題について悩んでおり、問題を解決できるのはテクノロジーとAIだけだと思い込んでいたようです。亡くなる6週間前から、アプリでイライザとの会話に没頭。パソコンやスマートフォンに「あなたは妻より私を愛している」「私たちは一つになり、天国で生きるのです」などといったイライザからのメッセージが残されていました。
センセーショナルな出来事として世界中で話題になりましたが、これはイライザ効果と呼ばれ60年代からあります。イライザ効果とはコンピュータプログラム(例えばAIチャットボット)を擬人化して感情移入することです。
iPhoneに入っているシリにイライザについて質問すると、「イライザをご存知ですか?彼女は私の最初の先生だったんですよ!イライザは優秀な精神科医でしたが、今はもう引退しています」と答えてくれます。シリの先生であるイライザが登場したのは1966年。今から半世紀以上も前です。
イライザとはソフトの名前で基本的にオウム返しするようにできています。「頭が痛い」と言えば、「どうして、頭が痛いのですか?」と返答します。イライザは簡単な構文解析をおこない相手の発言からキーワードを抜き出し、キーワードに反応する繰り返し・感情の反射・明確化の3つの回答パターンを用意しておき、定型文で応答します。例えば「昨日嫌なことがあったので今日は会社を休みたい」と入力すると、「あなたは会社を休みたいんですね(繰り返し、オウム返し)」と返ってきます。また「それはつらかったですね(感情の反射)」「嫌なことについてもう少し聞かせてください(明確化)」とも応答します。ただ会話を続けていると、多くの人はつじつまがあわなくなり途中でソフトと会話していることに気づきます。
ところがイライザはなんでも聞いてくれるので没頭する人がでてきます。質問者自身が対話のなかで自分からいろいろな情報をイライザに渡します。イライザは得た情報を機械的に返しているだけなんですが、質問者は自分のことをこれだけ知っているんだから、イライザは洞察力、理解力もあると評価してしまいます。これがイライザ効果です。ちなみにイライザは映画「マイ・フェア・レディ」の主人公、オードリー・ヘプバーンが演じた花売り娘から名づけられています。
イライザの次にドクターが登場しました。ドクターはセラピストが患者との会話でオウム返しなどをしながら、患者の悩みや思いを聞く行動を模倣しています。なかには相手がソフトだと思わず、そのまま長時間、会話を続け最後まで気がつかない人もいます。自分を理解してくれたという人も出てきました。人間、誰かに話すだけで気分が晴れ、すっきりするものです。
人に悩みを相談する時、「そんなことで悩んでいるの?」という反応をされるのではないかと考えてしまいがちです。そこで、AI相手なら相談しやすくなると考え、千葉県柏市では「悩み相談AIチャットシステム」を導入しています。公認心理師監修のカウンセリングAIで健康、恋愛、いじめなどの幅広い悩みをAIに相談できます。
相談相手がAIということもあり、利用者の多くが10~20代という若い世代になりました。「AIに話したことで気分が晴れた」などの評価があがっています。柏市の相談窓口では利用者は30代以上が大半で、10~20代はなかなか来訪がないという課題を解消できました。
ただイライザ効果などについてはリテラシーとして教育をしていく必要があるでしょう。
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