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事前にシステムをつなぐ仕組みが必要

column

2023年11月08日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

システムとシステムをつなぐ仕組みとしてAPI(Application Programming Interface)があります。今はシステムを作る時に事前に用意しますが、昔はAPIなんてものはなくシステム接続する必要が出てくると双方のシステム関係者が集まり、話し合いながら仕様を決め、実現していました。ですので必要性が検討されてから実際につながるまで時間がかかりました。

APIを活用してマッシュアップを実現

マッシュアップという用語があります。マッシュアップとは色々なサイトから提供されている技術やサービスを複合させて新しいサービスを提供することです。もともとはポピュラー音楽で、二つの楽曲を合わせて一つの新しい楽曲を作り上げるリミックス手法をマッシュアップと呼んでいました。

マッシュアップはサービスを一から作らなくても、既にあるサービス上に新しいサービスを付け加えることで、提供までの時間をすごく短くできます。このマッシュアップを実現するのにAPIを使います。

不動産紹介サイトを見ると、よくグーグルマップ上に物件が表示され、クリックすると詳細情報が分かりますが、これはグーグルが提供しているグーグルマップのAPIを活用して実現しています。同様のシステムを自社だけでやろうとすれば地図データを提供している会社とライセンス契約を結ぶところからはじめなければなりません。

銀行はAPIが必須

銀行業界にも、このAPIの波が押し寄せています。金融庁が銀行法を改正し、API整備が努力義務化されています。これは銀行システムへの接続仕様をAPIとして公開し、フィンテック事業者(金融と技術を組み合わせたサービスを提供する事業者)にアクセスを認めることです。フリーやマネーフォワードなどクラウド会計を提供する事業者では銀行のAPIを使って、事業者が使っている銀行口座へアクセスし、取引情報を取り込んで自動仕訳します。自分で銀行の通帳を見ながら会計ソフトに仕訳を入力しなくても、自動仕訳された取引を確認するだけですみます。

レガシーシステムはいまだに現役

ただしAPIに対応できていないシステムもたくさん残っています。2023年10月、三菱UFJ銀行などで振込ができなくなりました。原因は全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)の中継コンピュータが不具合を起こしたためです。

全銀ネットは汎用機(レガシーシステム)で運用され、しかもコボルをプログラミング言語に使っています。コボルは汎用機全盛時代によく使われた言語で、できたのは60年以上前です。コボルを現役で使っていた往年のプログラマーは既に定年を迎えています。

汎用機を導入すると同じメーカーの汎用機を使い続けないとソフトウェアなどの資産がいかせません。汎用機メーカーとしては、ずっとコンピュータを買ってもらえるので、おいしい商売でしたが、時代とともにユーザーが減り、少ないユーザーのために作り続ける羽目に陥ります。つまり手間だけがかかるお荷物になりました。これは中小企業でよく使っていたオフコンでも同じです。負担に耐え切れなくなったメーカーでは期限を区切り、これ以上のサポートは無理とユーザーに通知しています。

全銀ネットが使っている汎用機は2030年に製品販売が終了し、2035年が保守期限になると通知を受けています。そこで2027年をめどに汎用機から脱却し、プログラムもコボルからジャバに書き換える予定で進んでいます。それまでは今のシステムを使い続けないといけませんが、今回、2017年に更新した中継コンピュータを入れ替える必要があり、ソフトも新しくしました。このソフトが不具合を起こしてトラブルになりました。

予定通り、2027年にシステムを全面刷新できると今回、不具合を出した中継コンピュータそのものがいらなくなり、API連携で銀行システムと連携できるようになります。

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