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column
2023年03月01日
合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也
「モデム無料ですので、お持ち帰り下さーい!!」。今から20年ほど前、全国の駅前でヤフーBBと書かれたジャンパーを着た一団が紙袋を配っていました。紙袋に入っていたのがADSLモデム。一世を風靡したADSLサービスですがNTTのフレッツADSLサービスが2023年1月末で終了しました。
フレッツADSLがスタートしたのは、ちょうど21世紀を迎えた2000年。昔、ハードディスクが、べらぼうに高く、少しでも節約するため年号は下2桁で管理していました。2000年になると、これが「00」となり、壮大な誤作動が起きると危惧されたのが2000年問題。21世紀を迎える前から世界中でプログラム修正を行い、大晦日は会社に泊まり込んで、2000年正月を無事に迎え、祝杯をあげました。
同じ2000年、森首相が唱えたのがe-Japan戦略です。日本型IT社会の実現を目指す国家戦略ですが音頭をとる森首相がITを「イット」と呼んで話題になりました。予算がつき各地の中央公民館や役場で無料のパソコン教室が開催されます。シニア層の参加が多かったですがパソコンの電源の入れ方からホームページの検索方法まで教えてもらい、家庭内にパソコンが普及します。
パソコン業界ではスティーブ・ジョブズがアップルのCEOに戻り、業績悪化で身売り寸前だったアップルを奇跡的に復活させます。劇的に変わったのが価格重視からデザイン重視という流れ。スケルトンモデルのiMacが登場し、斬新なデザインに皆が驚愕。さらにカラフルな5色のiMacが発表され、パソコンがインテリアとなります。お洒落なパソコンを求めて、オジサンだらけのパソコン売場に女性が来るという社会現象まで巻き起こしました。
インターネットにつなぎたいと考えるユーザーが増えましたが、当時は電話回線しか、つなぐ手段がありません。電話料金は従量制ですので、つなげばつなぐほど料金がかかります。1995年、画期的なサービスであるテレホーダイが登場します。あらかじめ指定した2つの電話番号に対して料金が固定になるサービスです。ただし一日中ではなく深夜早朝の時間帯(23時から翌日8時まで)のみです。夜型の人は深夜にアクセス、朝方は早朝にアクセスしていました。
そんななか登場したのがフレッツ・ADSLです。2000年、完全定額(月4600円程度)で常時接続できるサービスが登場します。この影響でテレホーダイは急速に減っていきます。ADSLは電話回線を使い、コンピュータのデジタル情報をアナログに変更して電話回線で送り、着いた先でデジタルに戻す仕組みです。ADSLの「A」は非同期という意味で、パソコンからインターネットにアップする上りの情報に比べ、下り(ダウンロード)の情報が多い仕組みになっています。パソコンからURLを送って、ホームページの情報をダウンロードするには最適な仕組みでした。
翌年の2001年、ソフトバンクがヤフーBBサービスの名前でADSL事業をスタート。一気にユーザーを獲得しようと始めたのが「モデムのばらまき作戦」です。パラソル部隊を組成して、冬の寒風のなか、各地の駅前で、ヤフーBBのジャンバーを身にまとった一団が声かけをはじめます。ADSLモデムの入った紙袋を手に、「無料ですのでお持ち帰り下さーい」と道行く人に片っ端から声をかけていました。これによって驚異的な勢いで加入者を伸ばします。なかなか強引なやり方でしが、日本のブロードバンドを一気に広げる要因となりました。
ADSL時代が続きましたが、やがて光回線が充実してくることによってADSLから光へユーザーが移行するようになり、ADSLも終焉を迎えることになります。「フレッツ光」の提供エリアでは「フレッツ・ADSL」のサービス提供を2023年1月31日で終了。ヤフーBBは2024年3月末でADSLサービスが終了します。
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