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ネットショップに過酷なチャージバック

column

2023年02月08日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

チャージバックという仕組みがあります。ネットショップの支払いでよく使われるクレジットカード決済ですが、便利な反面、不正利用が増大しています。カード会員がカード明細を見た時、身に覚えがない買い物があればカード会社に問い合わせて異議申し立てができます。不正利用による損害をカード会員が受けないためのルールで、これがチャージバックという仕組みです。カード会員にはやさしい制度ですがネットショップには過酷な制度になっています。

 

カードの不正利用が増えている

一般社団法人日本クレジット協会が発表しているカード不正利用被害実態調査によれば2022年第2四半期(4月~6月分)集計で不正利用被害額は106.4億円になっており、前期比6.3%の増加になっています。調査によればカード番号が盗まれる被害が95%とダントツで他は偽造などによる被害です。

番号が盗まれる原因はいろいろありますが多いのはフィッシング詐欺です。公式サイトを詐称したメールを送り、メール内にあるURLをクリックすると表示された本物そっくりのホームページがあらわれます。ここにクレジットカード情報などを入力させる手口です。送り主はアマゾン、宅配業者、銀行、税務署などからで、それらしいタイトルをつけたメールが届きますが、まず疑いましょう。気になる場合はURLをクリックせずに、直接、該当サイトを検索してからログインして確認しましょう。

またパソコンがウイルス感染していて、カード情報が漏えいしているケースも多々あります。ダークウェブという匿名性の高い特別なネットワークがあり、検索では出てきませんもで、強権的国家などで安心してコミュニケーションをとるために使われていますが、犯罪にも使われています。世界中のカード情報もやりとりされていて日本人のカード情報は1枚あたり5千円ほどで売買されています。

 

チャージバックになるとどうなる

身に覚えがない支払いでカード会員が異議申し立てをするとカード会社は内容を調査し、確かに不正利用と確認できれば、その代金を取消します。問題は取消した代金の負担です。以前はカード番号だけでなくカード裏面に記載されたセキュリティコードという番号を入力し決済していればチャージバック代金はカード会社持ちでした。不正利用が増えるにつれ、ネットショップ側が代金をもつことになっています。つまりカード会社からネットショップに代金請求が届きます。

ネットショップにとってはオーソリ(カード決済確認)が終わって安心していたらカード会社から金払えと言われ、現金が減る上に商品も返ってこないので、踏んだり蹴ったりになります。では、どうすれば損害を防げるのでしょうか。

本人認証サービス(3Dセキュア)を導入することになります。3Dセキュアではカード会社に事前登録したパスワードや、ワンタイムパスワードやデバイスでの認証などで本人認証を行います。これで発生したチャージバックについてはカード会社が代金を持つことになります。カード決済代行会社では月千円ほどで3Dセキュアを提供しています。

問題はカゴ落ち率です。決済が面倒だとお客さんは買わずに、どんどん離脱していきます。この率をカゴ落ち率といい3Dセキュアを導入すると60%ほどに下がるデータがあります。つまり売上が下がります。ただ3Dセキュアの導入が進んでいるので消費者の意識も変わっていくでしょう。

 

チャージバック制度を知らないネットショップ

コロナ禍で店舗売上が減る中、テイクアウトやネット販売で乗り切ろうとしたお店がたくさんあります。最初は売れるかどうか分かりませんのでBASEやSTORESなどの月額利用料金がかからないプラットフォームを利用しているところが多くあります。もちろんクレジットカード決済できますが3Dセキュアは導入できませんのでチャージバックがあるとネットショップ側の負担になります。

一番の問題はこのチャージバックがネットショップに浸透していないことです。特に昔からネットショップを開設しているお店では3Dセキュア導入が進んでいません。カード会社はクレジットカード決済サービス約款を変更し、チャージバックに関してネットショップに通知していますが、積極的に注意喚起して通知しているわけではないためネットショップとのトラブルにつながっています。

 

チャージバックされないために

ネットショップとしては商品発送前に注文を確認するしかありません。ふつうの注文に比べ金額や個数が極端に多い、メールアドレスなどがおかしい、短時間の内に複数回購入が入るなど疑わしい点があれば相手にメールで問い合わせをして確認するワンクッションが必要です。

抜本的には3Dセキュアを導入しましょう。ShopifyやStripeなどのネットショップ作成サービスでは、不正利用の検知サービスがあるので費用は増えますが導入してもよいでしょう。またカード決済代行会社ではチャージバック保険を提供しています。例えばBASEでは不正決済保証APPを設定し、月額千円ほどを払えば月額5万円まで補償してくれます。

 
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