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シンプルイズベスト

column

2023年08月09日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

衣食住について必要最小限のモノで生活するライフスタイルであるミニマリストが注目を集めています。シンプルイズベストな生活の実践ですが、生活だけでなくコンピュータの世界でもシンプルさが求められています。

 

シンプルな法体系は難しい

「畑うちや法三章の札の下(もと)」という蕪村の句があります。戦乱が終わり、悪政から解放された人々が、三章の高札のもとで、のんびりと畑仕事をしている様子をあらわしています。法三章とは史記に出てくる言葉で漢の高祖が、秦軍を破って咸陽に入った時に人民を集め、秦の苛酷な法を批判して三章だけの法を定めます。殺してはダメ、人を傷つけてはダメ、盗むのはダメの三つだけを定めたという故事に由来しています。

本来はシンプルな法体系が望ましいのですが、現実世界ではそうならず、国会で新しい法律が次々に作られます。刑法には「法の不知はこれを許さず」と書かれており、つまり法律を知らない方が悪いことになりますので、気をつけてください。

 

成功は、シンプルから生まれる

グーグル創業者であるセルゲイ・ブリンの言葉です。言葉どおりグーグルのトップ画面にはニュースや天気などを出さず、検索窓しかないシンプルで使いやすいデザイが採用されています。

アップル創業者のスティーブ・ジョブズもシンプルさを追求していました。ジョブズが出したiMacやiPhoneなど分厚いマニュアルをみなくても、ユーザーがすぐ操作できるシンプルなデザインを実現しています。

Chat-GPTなどで注目を集めている生成AIでも、このシンプルさがカギになっています。生成AIのきっかけになったのは2009年3月に発表されたグーグルの論文です。論文ではビッグデータの革新性について述べており、「大量のデータで構築した簡易なモデルは、少ないデータで作られた精緻なモデルに勝る」と記載されています。なるべくシンプルな構造でたくさんのデータを集めることが成功のカギでした。

 

データ伝送もシンプル・イズ・ベスト

パソコンから外部のプリンターやハードディスクなどを接続するための規格があります。よく使われるのがUSBやプロジェクターを接続するHDMIという規格で、これらはシリアル伝送というデータを一つずつ送る仕組みが使われています。一つずつ送るより、一度にデータをたくさん送った方が速くなるのではと考えるのがふつうです。そして登場したのがパラレル伝送です。複数のデータを同時に送信することができました。昔、プリンターをパソコンにつなぐのに大きなケーブルをガチャンとはめていましたが、あれがパラレス伝送です。ところが2000年代に入ると、もともとのシリアル伝送に置き換わっていき、USB接続が主流になっていきます。

パラレル伝送は一度にたくさんの情報を複数の信号線を使って送ります。バラバラにデータを送ると管理が大変なので、同期をとる必要がありました。つまり信号線が増えるほどケーブルの設計や製造が複雑になります。USBなどシリアル伝送では、1つの信号線でデータを送るため、ケーブルがシンプルでコスト削減できます。またシンプルさを追求することでデータ転送速度をあげることができ、今ではほとんどがシリアル伝送になっています。

 

システム開発でもシンプル・イズ・ベスト

俊敏なシステム開発を行う手法としてアジャイル開発があり、シンプルさが求められます。シンプルにする理由の一つは理解しやすさです。シンプルなシステム設計は、開発チーム全体が容易に理解できます。複雑な設計だとシステムがどう動くのか、なかなか理解できません。またシンプルな設計は、バグの特定や新しい機能の追加も容易です。次に変更への適応性が高まります。システム開発では要件や環境が頻繁に変わることがあります。シンプルな設計にしておくことで、変更に対して柔軟に適応でき、素早く反応することができます。

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