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グレース・ホッパーって誰?

column

2023年09月13日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

エヌビディアが発表したGPUの名前がホッパー。アメリカのコンピュータ業界ではグレース・ホッパーという名前をよく聞きます。グレース・ホッパーとはコンピュータ黎明期に活躍した女性で、「コンピュータおばあちゃん」という異名もありました。

 

エヌビディアから次期GPU「ホッパー」発表

エヌビディア(NVIDIA)という会社をご存じですか。アメリカの半導体メーカーで、昨今のAIブームでとても注目を集めています。パソコンには頭脳にあたるCPUがあり、インテルが有名です。エヌビディアはGPUの設計に特化した会社です。GPUはCPUと役割分担し、画像処理(GPUのGはグラフィックス)を行います。

GPUがあることでCPUは重たい画像処理から解放され、他に注力できます。ゲームや動画編集等の機器には必ずGPUが入っています。このGPUが生成AIで特に活用されるようになり、ChatGPTの登場などで注目を集め、エヌビディアの株価はうなぎのぼりになっています。そのエヌビディアが次世代のGPU開発に乗り出していますが、その名前がホッパーでグレース・ホッパーから名づけられています。

 

グレース・ホッパーとは

グレース・ホッパーはコンピュータ黎明期に活躍した女性です。当時のコンピュータは電磁リレー式回路が使われていました。稼動中はカチャカチャと機械が動いており、摩擦などで暖かく、こういった部分によく小さな虫(蛾)が入り込んでコンピュータが故障していました。

そこで、まさに彼女は「虫をとる」(デバッグ)ことにより、不具合を直していました。これが転じて、プログラムやシステムの不具合をバグと呼ぶようになります。またバグを直すことをデバッグと呼ぶようになりました。グレース・ホッパーは、女性で初めて数学の博士号を修得した後、いろいろなコンピュータの開発に関わりました。

 

コボルの母になる

コンピュータを動かすには機械語(0と1の2進数)のプログラムを作る必要がありますが、0と1だけを使ってプログラミングするのは至難の業です。そこでプログラマに分かりやすいよう英語に近いプログラミング言語でプログラムを作り、これを機械語に翻訳するコンパイラを作りはじめます。やがて世界初のコンパイラ・フローマチック(FLOW-MATIC)が誕生します。このフローマチックを発展させたのがコボルというプログラム言語です。この功績によりグレース・ホッパーは「コボルの母」と呼ばれています。

コボルは事務処理用のプログラム言語として1960年に誕生、世界中の政府、金融機関、企業がコボルを採用し誕生から60年以上たっていますが、まだまだ現役です。ただしプログラムをメンテナンスできる技術者が高齢化しており、レガシーシステムとして問題になっています。

グレース・ホッパーは女子大で数学を教えた後、海軍に入ります。当時、コンピュータの開発と軍とは一体の関係ですので軍人でありながらコンピュータの開発に関わっていました。グレース・ホッパーは准将にまでなっています。退役した時は79歳で、これは現役士官では最年長でした。「コンピュータおばあちゃん」とも呼ばれています。グレース・ホッパーは1992年に85歳で亡くなります。1997年に就役したアメリカ海軍ミサイル駆逐艦は彼女の名前をとって「ホッパー」と名付けられました。

 

コンピュータ業界でよく聞くホッパーの名前

計算機協会(ACM)という国際学会があり、コンピュータ業界に貢献した専門家を表彰しています。有名なのがチューリング賞でコンピュータ業界のノーベル賞と言われています。この計算機協会がグレース・ホッパー賞を贈呈しています。対象は35歳以下のコンピュータの若手専門家で、技術的または業務的な重要な貢献をした者に送られます。

インターネットの通信の99%は海底ケーブルが使われていますがGoogleは海底ケーブル敷設のプロジェクトをすすめています。米国、英国、スペイン間を結ぶ海底ネットワークケーブルは「グレース・ホッパー」と名付けられています。ちなみに最初の海底ケーブル敷設は1858年でヨーロッパと北米間を結びました。日本は安政5年で井伊直弼が朝廷の勅許をえずに日米修好通商条約を締結し、この後、尊王攘夷運動が吹き荒れることになります。

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