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2023年03月22日
合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也
対話型AIが検索で使われるようになるなど話題になっていますが、エッジAIという言葉をご存じですか。2017年頃からアマゾンがクラウドでAIサービスを始め、一気に拡がりました。以前のようにAIを使うために専用機を導入して多額な投資をしなくても、クラウドですから利用期間に応じたチャージ料を支払えば個人でもすぐに始められます。最近、登場してきたのがエッジAIでエッジとは端の意味です。エッジAIとは、末端のいろいろなデバイスにAIを搭載したものをいいます。
ビッグデータという言葉がありますが、データが増えた要因の一つがセンサーです。秋葉原などの電気屋街へ行くと加速度センサー(歩数が分かる)、ジャイロスコープ(姿勢が分かる)、地磁気センサー(デジタル方位計)、近接センサー(耳元に近づけると電源を落とす)、照度センサー(周りにあわせて明るさを調整)、圧力センサー(気圧がわかる)、GPS(位置情報)が売られています。
これらのセンサーは全てスマホに入っています。スマホの普及で大量に作られるようになり、センサーが簡単に安く手に入るようになりました。さまざまなセンサーが手に入るようになったため、IoTが進化、普及しました。このセンサーをデバイスに組み込んだエッジデバイス(IoT)にさらにAIを組み込んでエッジデバイス側で処理を行うのがエッジAIです。
対話型AIはクラウドでのサービスになっています。5G(第5世代移動通信システム)など通信速度が速くなりましたが、通信にはタイムラグがあります。
車の自動運転では瞬間的にAIが判断しないと事故になってしまいます。他にもたくさんの製品を流す産業用ロボットや工作機械でも即時性が求められるので、エッジAIが活躍をします。エッジAIには、クラウドに依存せずエッジデバイスだけで行う「スタンドアロン型」と、判断・制御はエッジデバイスで行いますが、その他はクラウドを活用する「併用型」があります。
エッジAIの事例をみていきましょう。街のパン屋で難しいのがレジでの計算。パンが全て均一料金のお店は少なく、まずはパンの種類と価格を覚えなければレジの計算ができません。アルバイトを雇うと覚えてもらうのに時間がかかり計算ミスをすると顧客からのクレームになります。そこで作られたのが画像認識AIレジです。
ベーカリースキャンという名前でトレイ上のパンの種類・値段を一括で画像認識します。本格的なディープラーニング(深層学習)を導入すると大変なので、パンの認識にさまざまな角度から5つほど撮影すればOKと小さなパン屋でも導入しやすいように工夫をしています。セルフレジと組み合わせて、お客さんが会計している間にパンの袋詰めができ、素早くパンを提供できます。
エッジAIは大手企業でも導入が進んでおり、例えばドローン物流の実証実験が始まっています。離島や僻地へはドローンを目視で飛ばせません。ドローン自身が自分の位置を把握し各種センサーから得たデータをリアルタイムに計算して、飛行速度や方向、高度などを判断し飛び続け確実に届けなければなりません。
工作機械ではAI切りくず除去の搭載が進んでいます。何千万円もする工作機械内に切りくずが貯まると工作機械が止まってしまい生産計画に大幅な影響を与えます。そこで切りくずの画像をAIに覚えさせ、切りくずにあわせて工作機械内の洗浄経路を制御し、効率的に取り出せるよう実装が始まっています。これで工作機械を止める必要がなくなります。
新型コロナウイルスの影響で人と接触しないビジネスが着目されています。ホテルや施設などで活用できるAI業務用掃除機もエッジAIの一つです。走行ルート上の障害物や段、人を検出して適切に行動します。施設によっては夜に掃除をする必要があり、人の確保が大変な点も解消できます。同じようにAIを使った食事の配膳や荷物を運ぶロボットも登場しています。
私たちが日常的に使っているスマホにも各種センサーが組み込まれクラウドで接続されています。現在発売されている端末のほとんどはクラウドを活用するデバイスにすぎませんが、スマホにAI機能を搭載すればスマホ自身をエッジAIにすることができます。新しいビジネスモデルが生まれるインフラになるかもしれません。
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