最近、ウェブ3.0という言葉をよく聞きます。GAFAによる個人データを囲い込む集中管理ではなく、各個人が情報の主権をもって自らがコントロールできる分散管理にしようという新しい動きがウェブ3.0です。そのために使われるのがブロックチェーンです。ただウェブ3.0は単なるバズワードではないかという意見もあります。
ウェブ1.0とはホームページのこと
ウェブ3.0ということは1.0も2.0もあります。ウェブ1.0とはワールドワイドウェブ(WWW)、つまりホームページのことで閲覧するだけの静的な世界です。スイス・ジュネーブの市街地から10キロほど行ったところにセルン(CERN:欧州原子核研究機構)という素粒子物理学の研究所があり、このセルンが、ホームページの故郷です。
セルンには何千人もの科学者が入れ替わり、立ち替わり研究に訪れます。たくさんの研究論文や資料が生み出されますが、整理するだけで大変。イギリスからセルンに来ていたティム・バーナーズ・リー博士が作り上げたのが各研究者のコンピュータに保存されている論文や情報を、相互にリンクさせる仕組みです。
コンピュータの機種に関係なく相互に情報交換でき、追加や削除しても大丈夫。つまりハイパーテキスト(WWW)の誕生で、1990年に世界最初のホームページが誕生します。ティム・バーナーズ・リー博士はこの功績により、エリザベス女王からナイトの称号を授与されています。
ウェブ2.0とは双方向コミュニケーション
ウェブ1.0は情報の送り手から受け手への一方的な流れだけで、交流するにはメールなどで補う必要がありました。2000年頃から始まったウェブ2.0では誰もがウェブを通して情報発信できるようになります。
具体的には言語を勉強しなくてもブログで簡単に情報発信を始められ、買った商品やサービスについてのコメント投稿が簡単にできるようになります。クックパッドのように皆が投稿することで成り立つ料理レシピサイトや皆で協力しながら執筆するウィキペディアが生まれます。ユーザー同士が双方向にコミュニケーションできるようになり、GAFAが台頭、SNS時代になっていきます。
ウェブ3.0とは
問題になってきたのが、プラットフォーマによる情報の独占です。GAFAに個人情報が握られることによるプライバシーの問題やセキュリティ・リスクがでてきました。GAFAに集中管理させず、情報の主権を民主的なものにしようという動きがでてきます。そのためには分散管理しなければなりませんが、ビットコインで有名となったブロックチェーンという技術が登場します。
ブロックチェーンは中央で集中管理しているわけでなく、参加している皆のコンピュータで分散管理しています。仮想通貨で有名なブロックチェーンですが、根幹は取引データを適切に記録する技術です。複数のユーザーで取引情報が共有され、もしもどこかでデータの改ざんや複製が行われた場合、他のユーザーとの差異によって不正がすぐに分かります。ブロックチェーンは相互不信で成り立っており、ユーザー同士がネットワーク上で互いのデータをチェックし合うシステムになっています。
取引の記録ができ、改ざんがわかるのでブロックチェーンを使った契約締結や契約書管理サービスが既にいくつも出てきています。またオリジナル証明ができるのでNFT(非代替性トークン)としてデジタルアートのやりとりが行われています。
トレーサビリティへの応用がはじまる
ブロックチェーンで取引が記録できるのでトレーサビリティに使うことができます。社会的責任(CSR)の1つとして生産されてから消費されるまでのトレーサビリティが重要と考えられるようになっています。ユニクロがウイグルからの原材料調達に関する問題から不買運動に発展し、仕入先を変更する時代になっています。つまり、問題が発生した時、「取引先が勝手にやっていたので知りませんでした」は通じなくなります。
これからのメーカーや小売業などはトレーサビリティで消費者に説明ができないと淘汰されそうな時代になっており、ウェブ3.0時代になると大きく世の中が変わっていきそうです。