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改正育児・介護休業法への対応について

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2022年03月30日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

育児・介護休業法および雇用保険法一部を改正する法律が施行(2022年4月1日と同年10月1日)されます。企業としても対応の最終確認段階かと思います。ここで、育児・介護休業法(以下、「改正法」という。)対応の直前チェックとして、改正概要等のおさらいをしていきます。

改正法の概要

施行日順に項目を並べると、以下のとおりとなります。

  • 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け 【令和4年4月1日施行】
  • 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 【令和4年4月1日施行】
  • 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設 【令和4年10月1日施行】
  • 育児休業の分割取得 【令和4年10月1日施行】
  • 育児休業の取得の状況の公表の義務付け 【令和5年4月1日施行】

以下に、本年4月1日施行の具体的内容を見てきたいと思います。

労働者への「個別の周知」と「意向確認」

本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項の周知を個別に行わなければなりません。

  • 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  • 育児休業・産後パパ育休の申し出先
  • 育児休業給付に関すること
  • 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

※産後パパ育休に関しては、本年10月1日施行。

また、育児休業取得の意向確認を、以下の方法により個別に行わなければなりません。

1)面談 2)書面交付 3)FAX 4)電子メール等のうちいずれか。

上記3)および4)については労働者が希望した場合のみ対応可能となります。

「個別の周知」と「意向確認」措置の留意点

  • 労働者の意向を確認するための措置は、労働者による育児休業申出が円滑に行われるようにすることを目的とするものであることから、取得を控えさせるような形での周知および意向確認の措置の実施は認められません。
  • 意向確認措置については、事業主から労働者に対して、意向確認のための働きかけを行えば良いです。
  • 労働者から妊娠・出産の報告があったときに、「育児休業は取得しないので、制度の説明(周知)は必要ない。」と言われたとしても、周知・意向確認措置を実施する必要があります。
  • 意向確認の面談についてはオンラインでも可です。ただし音声のみは不可です。
  • 個別周知、意向確認措置は、事業主またはその委任を受けた者が行います。担当部署、担当者を選任しておきましょう。
  • 個別周知については、書面を利用することをお勧めします。上記①から④の内容を記載して作成しておきましょう。

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

育児休業と産後パパ育休の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければなりません。

  • 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  • 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
  • 自社労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  • 自社労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

※産後パパ育休に関しては、本年10月1日施行。

雇用環境の整備措置の留意点

  • 短期はもとより1か月以上の長期の休業取得を希望する労働者が希望するとおりの期間の休業を申出し取得できるように配慮しましょう。
  • 上記①から④の措置のうち、可能な限り、複数の措置を行うことが望ましいです。
  • 「研修」は、全労働者を対象とすることが望ましいですが、少なくとも管理職については、研修を受けたことがある状態にすることが必要です。
  • 「相談体制の整備」は、相談体制の窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知することを意味します。窓口を形式的に設けるだけでなく、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることが必要であり、また、労働者に対する窓口の周知等により、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要です。
  • 「自社の育休取得の事例提供」は、自社の育児休業の取得事例を収集し、当該事例の掲載された書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者の閲覧に供することを意味します。提供する取得事例を特定の性別や職種、雇用形態等に偏らせず、可能な限り様々な労働者の事例を収集・提供すること により、特定の者の育児休業の申出を控えさせることに繋がらないように配慮することが必要です。
  • 「制度と育休取得促進に関する方針の周知」は、育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示することを意味します。

有期雇用労働者の取得要件の緩和

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件は、以下のように変わります。企業の対応としては、勤続1年未満の者にかかる労使協定を新たに締結する必要があります。

現行

育児休業の場合

  • 引き続き雇用された期間が1年以上あること
  • 1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでないこと

介護休業の場合

  • 引き続き雇用された期間が1年以上あること
  • 介護休業開始予定日から93日経過日から6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでないこと
改正施行後(4/1以降)

育児休業・介護休業いずれも、(1)の要件を撤廃し、(2)のみになります。ただし、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により育児・介護休業の適用を除外することができます。

※雇用保険の育児休業給付、介護休業給付についても同様に緩和されます。

※参考:厚生労働省HP 
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
令和3年改正育児・介護休業法に関する Q&A (令和3年 11 月 30 時点)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000860549.pdf

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