傷病手当金通算にかかる実務上の注意点
傷病手当金の総支給日数は、支給開始日(一般的には連続した3日間の待期期間が経過した休業4日目)から1年6か月の歴日数分となります。また前述の通り、支給期間の通算は「同一の負傷又は疾病及びこれにより発した疾病」のみ行われます。この「同一の・・・」は保険者(協会けんぽ又は健康保険組合)が決定します。なお、同一の疾病に起因する傷病手当金であったとしても、症状が治ゆ(これ以上改善の余地がない状態)していたり、あるいは一度治ったものがある程度の期間の後に再発した場合などは、別個のものとして取り扱われます。
経過措置
改正法の施行日は令和4年1月1日ですが、これには経過措置が設けられており法施行日の前日(令和3年12月31日)において、支給開始日から1年6か月を経過していない傷病手当金が対象となります。
具体的には、令和2年7月2日以降に支給開始日がある傷病手当金が対象ということです。
支給期間とカウントされるケース
全日休業により傷病手当金が満額支給された日を支給期間としてカウントすることは当然のことです。レアなケースだと思いますが例えば、半日年次有給休暇を取得して半日を休業した場合は、傷病手当金額が満額支給されなくとも支給期間としてカウントされます。極端な話、1円でも傷病手当金が支給されれば支給期間となるのです。少し乱暴ですが、全支給期間につき満額受給した場合と、そうでない場合とで受給総額が変わることになります。傷病手当金を申請しない日については支給期間1年6か月には通算されませんので、あえて申請しない日をつくるケースも有り得るのかなと感じます。
傷病手当金の見直しに関するQ&A
健康保険法改正に関するQ&Aは、令和3年11月10日に発出されました。以下に重要と思われるものを説明いたします。
さらにQ&Aの内容が令和3年12月27日事務連絡により追加されました。詳しくは、以下URLをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220104S0060.pdf
支給期間の計算方法
(問)以下のケースにおいて傷病手当金の申請がなされた場合、傷病手当金の支給期間及び支給満了日はどうなるのか。
【例】①令和4年3月1日~4月10日 労務不能(支給期間:38日間)
②令和4年4月11日~4月20日 労務不能(支給期間:10日間)
③令和4年5月11日~6月10日 労務不能(支給期間:31日間)
(回答)
- 上記のケースにおいては、令和4年3月1日から3日までの3日間の待期期間 を経て、令和4年3月4日が傷病手当金の支給開始日となり、支給期間は令和5 年9月3日までの549日間となる。①の支給期間(38日間)後、残りの支給日数は511日、②の支給期間(10日間)後、残りの支給日数は501日、③の支給期間(31日間)後、残りの支給日数は470日、となる。
- なお、今回の法改正により、残りの支給日数が0日となる日が支給満了日とな る。例えば③の期間が終了した翌日(令和4年6月11日)より、1)連続して470日間労務不能であった場合は令和5年9月23日、2)支給期間の合間に合計して40日間就労した場合は令和5年11月2日、 がそれぞれ支給満了日となる。
資格喪失後の給付について
(問)資格喪失後の継続給付の取扱いはどうなるのか。
(回答)
- 資格喪失後の傷病手当金の継続給付については、健保法第104 条において、「継続して」受けるものとされているため、従来どおり、被保険者として受けることができるはずであった期間において、継続して同一の保険者から給付を受けることができる。
- ただし、一時的に労務可能となった場合には、治ゆしているか否かを問わず、同一の疾病等により再び労務不能となっても傷病手当金の支給は行わない。
※参考:厚生労働省HP