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そして誰も使わなくなった

column

2022年12月14日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

卸業のX社では扱い品目が少なかったこともあり、コンピュータを使った在庫管理を行っていませんでした。表計算ソフトで商品の単価管理をする程度で、在庫は年一回、社員総出で棚卸しを行い把握するだけでした。一番売上の多い1品目について1年間、帳簿上で在庫管理をしてみましたが棚卸在庫とかなり乖離がありました。 これではいけないと考えた社長は思いきってIT投資を行い在庫管理システムの導入を行います。期末に棚卸しをしてみると実在庫とシステム在庫にまだかなりの差があることが判明。何のためのIT投資だったのか社長は頭をかかえてしまいました。

難しい在庫管理

 御社の在庫管理はうまくいっていますか?

 ある会社では顧客から電話注文が入った時、在庫管理システムがあるのに、受注担当者が画面を見ずに隣にある倉庫へ走って、現物を見て納期回答していました。受注担当者が倉庫へ行った理由はコンピュータ画面に表示されている在庫の数字が信用できないからです。つまりコンピュータを信頼して仕事をしていません。

 製造や販売の現場では、在庫をどう管理するかが重要です。ところがせっかく在庫管理システムを導入しても活用できていないケースが意外に多くあります。

情物を一致させる

 在庫管理で難しいのが、「情物一致」です。「情物一致」というのは情報の流れと物の流れを一致させることですがこれが一筋縄でいきません。

 商品を倉庫に入れ「入庫」、必要時に出します「出庫」。この入庫と出庫の差が実在庫になります。これが物の流れになります。一方の情報の流れですが、倉庫に「入れた」数字、倉庫から「出した」数字は人が在庫管理システムに入力します。しかし、「物」が動くタイミングで「情報」を入力すればよいのですが、このタイミングをあわすのが至難の業になります。

 例えば出庫伝票を元に出庫・配送を朝一番に行ったとします。この時点で「物」が動きます。この後、出庫伝票が総務部へ回され、夕方に在庫管理システムへ入力する業務の流れだったとすると、「情報」の入力は夕方となります。朝「物」が動き、夕方に「情報」が動きます。日中はシステムの在庫と倉庫の実在庫があわなくなります。

 受注担当者が在庫管理システムを見て、在庫があるはずだと顧客に回答し出庫伝票を発行しました。ところが夕方になった時に朝に行った物の動きが反映され、在庫がゼロとなります。つまり顧客に回答して引当するべき在庫がなくなっていまいます。これが頻繁に発生するようになると受注担当者は画面を見ずに倉庫に走ることになります。

 タイミングだけでなく人が介在しますので、他にも色々な要因で実在庫とシステムの在庫があわなくなっていきます。

 <在庫管理がうまくいかない例>

 ・本採用に向けてサンプルで出荷した在庫の引当をしなかった

 ・取扱品目が多く、品名などを確実に調べずに出庫指示したため誤配した

 ・検収をほったらかしにしていた在庫を引き当ててしまった

 在庫管理システムを導入した当初は、棚卸を行いシステムの在庫と実在庫をあわせます。ところが色々な要因が一つ一つ積み重なり、信用できない在庫管理システムになってしまいます。使い続ければ、ますます信用できなくなり、最終的に誰も使わなくなります。ではどうしたらよいのでしょうか?

業務の流れを見直す

 まずは関係部門が集まって現業の「物」の流れと「情報」の流れがどうなっているか分析します。「情物一致」させるには、どういう業務の流れにすればよいか「あるべき姿」を考えていきます。

 例えば現場に端末を入れて「物」を動かした時点で在庫管理システムへ入力するようにすれば「物」と「情報」のタイミングがあいます。出庫伝票と在庫管理の画面のプリントアウトをつけて総務へ回し、総務で二重チェックを行う方法も有効です。

 人が介在しますので入力を忘れることもあります。間違いを前提にして業務上チェックが働くようにし、システムの在庫数が実在庫とかけ離れないようにします。高度な在庫管理はコスト的に高くなるので、棚卸回数を増やすなど他の方法もまじえ在庫精度を向上しましょう。

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