奈良や京都で家を建てようとすると埋蔵文化財が見つかり発掘が始まるのは、よくある話です。発掘現場では記録が大切でデジタル写真も使われますが今も銀塩写真が使われています。銀塩写真は画質に優れ100年以上も色あせず残すことができます。デジタル写真でもよいのですが保存する記録媒体が問題になります。
デジタル保存の最初はカセットテープから
大型コンピュータが登場したのにあわせハードディスクもありましたが、おいそれと手が出せる金額ではありませんでした。そこでプログラムの保存によく使われたのがカセットテープ。15分録音のカセットテープで32Kバイトぐらいのちょっとしたプログラムの保存ができました。昔のマイコンショップの店頭では、15分の生カセットテープがパックで売られ、ゲームなどもこの15分テープの形で販売されていました。
次にフロッピーが登場します。フロッピーには8インチ、5インチ、3.5インチなど様々な種類がありましたが、やがて3.5インチが主流となります。1.44Mバイトほど保存できましたがソフトの肥大化とともに1枚のフロッピーでは収まりきらなくなります。ソフトのインストールに10枚以上のフロッピーディスクを入れ替えないといけなくなり、大容量の記憶装置が求められようになります。
一時期、ZIPドライブという大容量フロッピーディスがありました。フロッピーと互換性はありませんでしたが1枚あたり100~250Mバイト入りましたのでフロッピーを何十枚も送らなくてもZIPを1枚送るだけでよく重宝しました。ただし相手もZIPドライブを持っていることが条件です。出版社が原稿の受け渡しなどでよく使っていました。フロッピーはZIPディスクに置き換わるともいわれましたがCDなどの光学ディスクに破れ、市場から消えてしまいます。
光学ディスクの時代へ
今では考えられませんがアップルには倒産の危機がありした。復活させたのがスティーブ・ジョブズで、斬新なデザインのiMacを送り出します。衝撃を与えたのがパソコンからフロッピーをなくしたことです。代わりに読み書き可能なCDドライブが搭載されます。CD1枚に640Mバイトほど入りました。
時代がすすむとさらにCDより大容量な媒体が要求されるようになり、DVDが登場します。DVDに映画をのせたいというハリウッドからの要求があり「片面133分以上の収録時間」となりました。DVDの容量はCDの約7倍、4.7Gバイトの容量を記録できます。
現在は光学ディスクの時代からネットワーク経由で保存するクラウドストレージの時代へと変わりつつあります。
8ミリビデオはどこへいった
記録する時の媒体は重要です。昔、子供の運動会などを8ミリビデオで撮影し、撮りためていましたが、8ミリビデオからDVなどへと変わっていき、やがてCDやDVDなどの光学ドライブへと変遷していきました。どこかで新しい記録媒体に移す必要がありましたが、いつか移そう移そうと思っている間にビデオを映す機器が市場から消えてしまいます。結局、見られない8ミリビデオだけが残り、記録媒体をコンバートする事業者を探す羽目に陥ります。
考古学の世界では銀塩写真など、あえてアナログで記録を残しています。デジタルで保存すると媒体などが変わった時にコンバージョン作業が必要になるからです。
平城京が造られ奈良時代が始まりましたが、1300年前の木簡が今も発掘されています。同じ時期に作られた百万塔陀羅尼に納められた陀羅尼経は世界最古の印刷物で、こちらも現在まで伝わっています。長期間の保存にはアナログが一番強いのかしれません。実際、細菌のDNAにデジタルデータを格納しようという実験も行われ成功しています。