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ハリウッド女優が発明したブルートゥース通信

column

2021年02月10日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

コロナ禍でオンライン会議があたりまえになってしまいました。会議で重宝するのがブルートゥース接続のワイヤレスイヤホンです。このブルートゥース通信では周波数ホッピング方式が使われており、それを発明したのはヘディ・ラマーというハリウッド女優でした。

ブルートゥースで使われる周波数ホッピング方式

ブルートゥース接続のワイヤレスイヤホンを利用すると、無線で接続できるので机周りがすっきりします。さらに、ブルートゥースは赤外線通信などと違い、PCとイヤホンの間に遮蔽物があっても電波が回り込むことで通信できます。また10mほど離れていても届きます。

このブルートゥース通信で使われているのが周波数ホッピング方式で、周波数を高速度(毎秒1,600回)で切り替えしながら通信しています。この周波数ホッピング方式によって他のデバイスがあっても、その影響を極力少なくすることができます。この周波数ホッピング方式を発明したのがヘディ・ラマーというハリウッド女優です。

センセーショナルなハリウッド女優

ヘディ・ラマーは1914年にウィーンで生まれ、父親は銀行家、母親はピアニストでした。17歳で女優としてデビューし18歳の時、チェコ映画「春の調べ」で全裸シーンを披露し、センセーショナルな話題となりました。この後に結婚しましたが相手は14歳年上の武器商人。女優は辞めさせられて家に閉じ込められる生活になります。家では夫を訪れるお客さんとの場に同席します。お客さんは科学者や軍事技術の専門家が多く、ヘディ・ラマーは笑みをうかべながら聞き耳をたてていて、これがきっかけで応用科学の分野に興味をもつことになります。

やがて、結婚生活に嫌気がさしたヘディ・ラマーは夫と別れアメリカに渡り、23歳でハリウッドデビューします。デビュー作はシャルル・ボワイエと共演する「カスパの恋」(1938年)です。セシル・B・デミル監督の「サムソンとデリラ」など、たくさんの映画に出演し、クラーク・ゲーブル、ジェームズ・ステュアート、ラナ・ターナー、ジュディ・ガーランドなど数多くの有名俳優と共演します。また黒髪を中央で分けた彼女の髪型が話題になり、「風と共に去りぬ」でヴィヴィアン・リーが同じ髪型を真似していました。

発明家でもあった

ヘディ・ラマーはアイデア豊富でもあり、いろいろな発明に取り組んでいます。第二次世界大戦ではナチスの潜水艦が子供たちの疎開船を攻撃したことにショックを受けます。また米海軍の無線誘導システムが相手の通信妨害によって魚雷が当たらないようになっていることを知ります。

そこでピアノの連弾から転調して弾いていくことをヒントに妨害されにくい無線システムを考えます。電波をいろいろと変えていくやり方で、仲間が形にして特許にしてくれ認められます。さっそく海軍に技術提供を申し出ても無視されました。

ところが1962年のキューバ危機の頃からこの技術が見直され、使われるようになります。これが現在の周波数ホッピング方式となります。高速でホッピング(周波数を移動)し、搬送波の周波数を短時間で次々に変更していきます。どこかの周波数が他と干渉しても、ほとんどの情報は邪魔されずに届きます。周波数がコロコロ変わるので第三者が高速で追尾することができず妨害されにくく、かつ盗聴されにくい技術でした。周波数ホッピング方式はブルートゥースだけでなくGPSやWifiでも使われています。

ヘディ・ラマーは6人と結婚・離婚を繰り返し、映画界を引退してからは不遇な人生だったようで2000年に85歳で亡くなりました。しかし発明した周波数ホッピング方式は今も使われており、ヘディ・ラマーの誕生日である11月9日はオーストラリア、ドイツ、スイスで「発明家の日」とされています。

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