ロボットやAIの発展によって、今後10年間でなくなる仕事リストが週刊誌などを賑わしていますが、昔からいろいろな仕事が生まれ消えていきます。その一つがキーパンチャーという仕事。言葉どおりキーをたたいてパンチする(穴をあける)仕事です。
落としたら大変なパンチカード
パンチカードは1枚に1行のプログラムをパンチしたカードで、例えば「1」と入力すると「1」のところに穴があき、OMR(光学式マーク読取装置)でパンチカードに光をあてると、「1」に穴が開いていることがわかり、これでデジタル化できました。パンチカードには数字、アルファベット、記号をパンチできました。プログラム1行にパンチカードが1枚必要ですので、プログラムが2000行なら2000枚になります。
OMRで読み取る前につまずいて落としてしまったら、さあ大変。2000枚を順番通りに並べ替えないといけません。プログラマーの多くはパンチカードの横にマジックで模様を書いて、落としてもこの模様を復元することで時間短縮する生活の知恵を実践していました。
パンチカード以前には紙テープの時代があり、同じように紙テープをパンチしてプログラミングしていました。パンチカードでは、どの穴が開いているか一番上に文字や数字が印字されていましたが紙テープは穴だけ。先輩プログラマーが穴の位置だけを見てプログラムを読む神業のようなことをしていました。当時、紙テープを切って、セロテープで貼ってプログラムを修正できる達人がいるという伝説もよく聞きました。
キーパンチャーに分かるような工夫
手書き文字をキーパンチャーにパンチしてもらわないといけませんので、いろいろな工夫が生まれます。例えば「ゼロ」と「オー」を識別するために「オー」には斜線をいれていました。同じように「D(ディ)」も「ゼロ」と見分けにくいので「D」の直線に横線をいれました。
プログラマーにとって大切なことは字をきれいに書くこと。汚い字でコーディングシートに書いて、納品されたプログラムをコンピュータに読み込ませると文法エラーのオンパレードとなり、頭をかかえながら膨大なエラーを修正していました。きれいな字が必須でした。
ただ昔のプログラマーは端末を使ってプログラムがちゃんと動くかすぐに試せる環境ではなかったので、プログラムがどう動くか頭の中で考え続けました。これが机上デバッグで、プログラマーの教育には最適でした。
端末が増え、キーパンチャーが消える
やがて時代がすすむとキーパンチャーの会社からはパンチカードではなくフロッピーや磁気テープに格納されて届くようになります。さらに時代がすすむと端末の値段が下がり、自分に割り当てられた端末でプログラム編集できる時代となります。汚い字でコーディングシートに書かなくてもキーボード入力できるようになり字が汚かったプログラマーには朗報でした。
現在、キーパンチャーという仕事はなくなりましたがデータエントリーという仕事として健在です。