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インターネット永続のコツは皆で管理すること

column

2019年08月14日

合同会社エムアイティエス代表 水谷哲也

問題です。1969年10月29日にスタートしたインターネットが半世紀を過ぎた今も動き続けているのはなぜでしょうか?

答えは「皆で管理しているから」です。

動き続けるブロックチェーン

前回のコラム記事で登場したブロックチェーンも中央で管理せず皆で管理しています。ブロックチェーンの基本は相互不信です。ブロックチェーンに参加しているPCやスマホに台帳が格納され、誰かが不正をしても分かる仕組みになっています。ブロックチェーンは中央で管理する必要がないため安価にシステム運営でき、参加者が多ければ多いほど信頼できるブロックチェーンとなります。また特定の団体などが管理していないため一度、スタートしてしまえば、ずっと動き続けます。

以前、P2P(個人と個人を結ぶネットワーク)技術を応用したファイル共有ソフト「Winny(ウイニー)」がありました。ウイニーは匿名性が高く不正なファイルのやりとりが多く行われたためウイニーの開発者が逮捕されることになり、“殺傷能力のある包丁を作るだけで犯罪になるのか”などの論争を巻き起こしました。結局、無罪が確定しますが開発者はそのあと、亡くなります。開発者が亡くなってもウイニーはこの瞬間も稼働しており、一度稼働を始めたネットワークは止めらません。ただ開発者が亡くなったためソフトの改良が行われず使うにはセキュリティ上の問題があります。

インターネットはアメリカも国連も管理していない

インターネットも同様で世界中のボランティアが参加して運営しています。国連や発祥地のアメリカが管理しているわけではありません。例えばジョン・ポステルという人物がいて大学院生時代からインターネットの構築に関わり、ドメイン名の割り当てなどを行っていました。

研究者は新しいものを創り出す仕事が評価されやすいため縁の下の力持ちのような地道な作業は、ほとんどの研究者が避けます。これを黙々とやり続けたのがジョン・ポステルです。

やがてインターネット上にWWW(ホームページ)が生まれると爆発的にドメインが増え、さすがに個人対応は無理となりIANA(Internet Assigned Numbers Authority)というボランティアグループを創設し、ドメイン名の割り当てなどはIANAが運営していました。このIANAの仕事は国際的な非営利法人 ICANN にさらに引き継がれ、IANAが行っていた各種資源のグローバルな管理の役割を担当しています。

非営利団体などが手分けして運営

インターネットのさまざまな技術仕様やルールなどもどこかで管理しなければなりません。それがRFC(Request For Comment:コメントちょうだい)でジョン・ポステルは30年間にわたりRFCの編集者でした。生涯で200以上のRFCに関わりインターネットに多大な貢献をして、55歳の若さで亡くなります。ジョン・ポステルの偉業をたたえインターネットに多大な貢献をした人物や組織に授与される「ジョン・ポステル賞」が創設され、2005年度にはアジアで初となる村井純教授が受賞しています。RFCはインターネット技術の標準化を推進する任意団体であるIETFで管理されています。

日本でも同様で通信を担当する総務省が管理しているわけではなく、WIDEという組織が作られ、企業などがスポンサーとなり、日本のインターネット運用の一翼を担っています。

企業の寿命は30年と言われるように、一つの企業が100年続くことは稀で、続くと老舗となります。国家も同じで時代や為政者によって方針が変わります。そんな企業や国家が中央で管理するのではなく皆でいろいろな組織を作り管理しているのがインターネットです。時代によってIANA がICANNに変わったように皆で議論して組織も変えていきます。インターネットが誕生から半世紀以上も運営されているのは中央で管理していないからで、もっとすごいネットワークが登場するまで半永久的に続いていくでしょう。

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