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2026年01月21日
社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一
近年、顧客対応や採用活動の場でのハラスメントが社会問題化しています。令和7年の法改正により、企業にはカスタマーハラスメントと就活等ハラスメントへの対策が義務化されます(公布後1年6か月以内の政令で定める日に施行されます)。今回は、その概要と実務対応のポイントを解説します。
令和7年通常国会で成立した労働施策総合推進法の改正により、企業にはカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます。)への対応が義務付けられました。
カスハラとは、顧客や取引先等の外部関係者による、社会通念上相当な範囲を超えた言動によって、労働者の就業環境が害される行為を指します。
従来のハラスメント(セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産・育児・介護休業等に関するハラスメント等)対策は、社内の従業員間で発生するものが中心でしたが、カスハラは行為者が社外の人間である点が大きな特徴です。このため、企業が講じるべき措置や対応の考え方は、従来のハラスメント対策とは異なります。
国の指針は今後公表されますが、東京都のカスハラ防止条例や厚生労働省の報告では、以下のような行為がカスハラに該当するとされています。
判断にあたっては、言動の内容や態様を総合的に見て、社会通念上許容される範囲を超えているかどうかを基準とします。強い身体的・精神的苦痛を与える場合は、1回でもカスハラに該当することがあります。
今回の改正法では、事業主に以下の措置が義務付けられます。
具体的には、方針の明確化と周知・啓発、相談窓口の設置・周知、発生後の適切かつ迅速な対応等が求められます。方針の明確化では、カスハラの定義や対応方法、顧客向けメッセージを含めて、企業のホームページ等で公表することが望ましいでしょう。また、従業員への周知・啓発では、従業員向け社内研修を実施し、カスハラの基準や正当なクレームとの違い、初期対応の方法(複数人で対応する、不当な命令に従わない)等を周知することが望ましいでしょう。
さらに、就業規則及び諸規程には、カスハラを受けた場合の報告義務や、自社の従業員による他社へのカスハラ禁止規定を盛り込み、相談者への不利益取扱いを禁止する条項を設ける必要があります。こうした体制整備は、従業員の安全な就業環境を確保し、企業の信頼性を高めるために不可欠です。
就活等ハラスメントとは、就職活動中の学生をはじめとする求職者に対し、企業の採用担当者等が求職者より優越的な立場を利用して行うセクハラやパワハラのことをいいます。
カスハラ対策と同じく令和7年通常国会で改正された男女雇用機会均等法により、企業には就活等ハラスメントのうち、就職活動中のセクシュアルハラスメント(以下「就活等セクハラ」といいます。)への対応が義務付けられました。
これは、求職者に対して、採用活動中に企業の従業員が行う性的言動により、求職活動が阻害される行為を指します。近年、面接やインターンシップ、OB・OG訪問等で、立場の優位性を背景とした不適切な言動が問題視されており、企業の採用活動における信頼性確保が急務となっています。
通常の社内セクハラと異なり、被害者は会社外の求職者です。行為の場も職場内に限らず、飲食を伴う非公式な場面等、プライベートな雰囲気で行われることが多く、求職者は「内定に不利になるかもしれない」という心理から拒否しにくい状況に置かれます。このため、企業は従業員に対し、こうした場面での適切な対応を徹底する必要があります。
改正法で義務付けられた雇用管理上の措置は、カスハラと同様に以下の内容です。
方針は、社内だけでなく社外にも公表し、求職者に相談窓口を周知することが望ましいでしょう。相談窓口は電話だけでなく、Webフォームやメール等を活用し、相談のハードルを下げる工夫が求められます。発生時には、事実確認と加害者への懲戒処分、被害者への謝罪や選考継続の意思確認を行い、公正な採用活動を維持することが不可欠です。
また、OB・OG訪問やリクルーター面談等、従業員が求職者と接触するすべての場面を想定し、ルール化・マニュアル化を進め、研修で徹底することが防止策となります。就業規則には、就活等ハラスメントの禁止規定を設け、報告義務や不利益取扱いの禁止を明記することが必要です。
カスハラと就活等セクハラはいずれも、企業の外部との接点で発生する点が特徴であり、従来のハラスメント対策とは異なる視点が求められます。企業は、方針の策定・公表、相談体制の整備、従業員への研修を通じて、未然防止と迅速な対応を実現することが重要です。改正法に施行にあわせて、就業規則及び諸規程の改定・整備を事前に行えるよう、最新の情報を確認しましょう。
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