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2025年05月21日
社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一
今回は、2025年6月1日から施行される改正労働安全衛生規則について紹介します。この改正は、「職場における熱中症対策の強化」を目的としています。
厚生労働省の業務上疾病調べによると、職場における熱中症による死亡災害の傾向として、死亡災害が2年連続で30人レベルに達しており、他の災害に比べて約5~6倍の割合で死亡に至ります。また、死亡者の約7割が屋外作業者であるため、気候変動の影響や気温の上昇でさらに増加する懸念があります。
さらに、熱中症による死亡災害のほとんどが初期症状の放置(発見の遅れ、重篤化した状態での発見)や対応の遅れ(異常時の対応不備、医療機関に搬送しない等)が原因であると分析されていることから、死亡に至らせないための適切な対策を実施するために、その対策の強化・周知が早急に求められます。
今回の改正労働安全衛生規則では、熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、その状況に応じ、迅速かつ適切に対処することにより、熱中症の重篤化を防止するため、「体制整備」「手順作成」「関係労働者への周知」が事業者に義務付けられます。
「熱中症の自覚症状がある労働者」や「熱中症のおそれがある労働者を見つけた者」がその旨を報告するための体制(連絡体制や状況把握方法)を事業場ごとにあらかじめ定めます。
早期発見を目指し、職場巡視やバディ制の採用、ウェアラブルデバイスの活用や双方向での定期連絡等、実態に合った方法により積極的に状況を把握しましょう。
熱中症のおそれがある労働者を把握した場合に迅速かつ的確な判断が可能となるよう、次の点を事業場ごとにあらかじめ作成します。
次のパンフレット5ページ目、6ページ目のフロー図を参考に、実態にあった内容で作成しましょう。
「体制整備」及び「手順作成」を実施したら、その内容について、関係労働者へ周知及び教育を実施しましょう。
朝礼やミーティングでの周知、会議室や休憩所など分かりやすい場所への掲示、社内メールやイントラネットでの通知による方法が考えられます。
高温多湿な場所において連続して行われる作業等、熱中症を生じるおそれのある作業に従事する労働者がこの対策の対象となります。具体的には、「WBGT28度以上又は気温31度以上の環境下で、連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業をする労働者を指します。
WBGT基準値とは、暑熱環境による熱ストレスを評価するための指数のことです。前述のパンフレット(厚生労働省:職場における熱中症対策の強化について)の2ページに記載された表に基づいて、身体作業強度(例:安静=0、軽いタイピング作業=1、シャベルを使った激しい作業=4)からWBGT基準値(例:身体作業強度0=33度、身体作業強度1=30度、身体作業強度4=25度)を確認し、作業現場で測定したWBGT値と比べます。測定値が基準値を超える場合は、まず冷房や作業内容の変更等の対応を行います。
冷房や作業内容の変更を行ってもなおWBGT基準値を超えてしまう場合には、次の熱中症予防対策を実施しましょう。
事業者が対策を怠った場合、労働安全衛生規則の義務を履行しないことに対する罰則やそれによるレピュテーションリスクの他、労働者から安全配慮義務違反を問われる民事訴訟リスクを抱えることとなります。また、実際に作業を行う労働者にとっては、暑さに慣れていない時期の熱中症リスクも存在するため、事業者は、労働者の命を守るという観点から、早期に適切な対策を実施しましょう。
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