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2025年01月15日
社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一
令和5年4月に解禁された給与のデジタルマネー払いについて、令和6年8月に「PayPay株式会社」が、同年12月に「株式会社リクルートMUFGビジネス」が、給与のデジタルマネー払いサービスを発表しました。各社のサービス開始により、今後、会社や給与計算担当者だけでなく、給与を受け取る労働者側の関心が高まることが予想されます。
賃金の支払いに関しては、労働基準法において「通貨(現金)払い」の原則が定められています。例外として金融機関口座への振込が認められています。今回のデジタルマネー払いもそれと同様に、通貨払いの例外として認められる方法となります。概要のおさらいから、導入時の手順まで確認しておきましょう。
給与のデジタルマネー払いサービスの厚生労働大臣の指定が受けられるのは、PayPay等の「資金移動業」に限られます。いわゆるSuica等のプリペイド式デジタルマネーや仮想通貨は対象外です。
資金移動業の大きな特徴として挙げられるのは、一度自分のデジタルマネー口座に入金されたお金を、現金に換え、また金融機関口座に移すことが可能という点です。金融機関口座による入出金と比べて、送金スピードの早さや手数料の安さがメリットになります。
給与のデジタルマネー払いは、「指定資金移動業者」のデジタルマネーのみ利用が可能です。指定資金移動業者とは、厚生労働大臣の指定を受けた業者のことであり、現時点では「 PayPay株式会社」、「株式会社リクルートMUFGビジネス」の2社のみとなります。
指定を受ける要件としては、口座残高が100万円を超えることがないようにするための措置を講じていること、1円単位で入出金ができること、毎月1回は手数料負担なく出金等ができること、破綻等した場合に口座残高の全額を弁済できる仕組みを有していること等を満たす必要があります。今後は指定を受ける業者が増えてくることが予想されます。
給与のデジタルマネー払いを導入する際に、会社が行うべき対応は主に次の3つです。
まず、通貨払いの例外としての取扱いであるため、「就業規則への規定」が必要となります。なお、厚生労働省が公開している令和5年7月改訂版のモデル就業規則には、給与のデジタルマネー払いに関する規定がありません。今後、指定資金移動業者が増加し給与のデジタルマネー払い利用者が増える場合には、規定例が示されることを期待します。
次に、労働者と使用者との間で、給与のデジタルマネー払いを行うことにつき、「労使協定の締結」をする必要があります。このため、会社が労働者に対し一方的にデジタルマネー払いを強制することはできません。反対に、労働者がデジタルマネー払いの希望をしたとしても、会社がその希望に応じる義務はありません。
最後に、デジタルマネー払いを希望する「労働者の個別同意」が必要となります。会社が、現金払いかデジタルマネー払いかの二択を迫ることのないよう、金融機関口座への振込という選択肢も併せて提示しなければなりません。
厚生労働省HPにおいて、 労使協定書及び個別同意書の雛形 が公表されていますので、あわせてご確認ください。
※「2.法令、通達、ガイドライン等」の箇所参照。
PayPay給与受取を利用したデジタルマネー払いでは、金融機関口座への振込と同様、「全銀フォーマット」による振込対応が可能です。しかし、今後指定される指定資金移動業者によるデジタルマネー払いサービスについては、全銀フォーマットに対応していない可能性があります。給与振込対応時の手間という観点から、全銀フォーマットに対応しているか否かをサービス業者決定の前に確認すると良いでしょう。
なお、PayPay給与受取サービスの導入にあたっては、前述の手順に加えて、労働者自身がPayPayアプリにてPayPay給与受取の申し込みをする必要があります。申込が完了したら、会社は、全銀フォーマットで使用するための「入金用番号」を労働者から入手しましょう。
給与のデジタルマネー払いは、タイミーやメルカリハロのようなスポットワーク、いわゆるスキマバイトへの給与支払いに適していると考えられます。
スポットワークの労働者の中には、即日入金を求める労働者が一定数いると予想します。金融機関口座への振込と比較して、デジタルマネー払いの方が、送金スピードの早さや手数料の安さに魅力があるため、今後デジタルマネー払いの需要が増える可能性があります。
昨今注目されるスポットワークの人材活用により、即雇用・即日入金の対応を上手く行っていくためには、給与のデジタルマネー払いに対応するための準備をしておくことが望ましいでしょう。
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