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第119期 2025年全人代での決定政策について

column

2025年04月23日

利墨(上海)商务信息咨询有限公司  南 みなみ

中国では毎年3月に全人代(全国人民代表大会)が開催され、中国政府は今後の経済運営方針を発表しました。
本コラムでは、全人代の概要や重要発表事項に加え、過去3年の重点業務の推移をまとめます。 中国ビジネスに携わるご担当者様にとって、今後の戦略を立てるご参考にご活用ください。
なお、全人代については「全人代が中国で重要なワケ」というテーマで以前ご紹介しておりますので、ご参照ください。
https://www2.rismon.com.cn/column73/

2025年全人代の概要

開催概要

開催期間:2025年3月5日~3月11日

開催場所:人民大会堂(北京市)



(出典:人民網日本語版)

議論されたテーマ

  • 経済成長率目標率
  • 税制や金融政策の変更
  • 外資企業の投資環境改善

これらの方針は、今後の中国経済の方向性を決定づける重要な指針となります。

2025年全人代での重要発表事項

今年の全人代では、以下の発表が注目を集めました。そのうち、日系企業に関連するものを中心に記載いたします。

  • 主要な目標数値について
    • 実質GDP(国内総生産)は約5.0%の成長を目指す。
    • 都市部の調査失業率を約5.5%に抑える。
    • 都市部の新規就業者は1,200万人以上を目指す。
    • 消費者物価指数(CPI)の上昇率を約2.0%に保つ。
    • 国民所得の伸びを経済成長率と同程度の水準にする。
    • 国際収支は基本的に均衡を保つ。
    • 穀物の生産量は約7億トン以上にする。
    • 国内総生産(GDP)あたりのエネルギー消費を3%削減する。
  • 積極的な財政政策の推進
    • 財政赤字の対GDP比を4.0%前後とする。
    • 地方政府特別債の発行規模を4.4兆元とし、インフラ整備や不動産市場の支援に活用する。
  • 適度な金融緩和政策の実施
    • 必要に応じて預金準備率・金利引き下げを実施し、流動性を確保する。
    • 不動産・株式市場の健全化を支援し、中小企業・技術革新・グリーン成長への資金供給を強化する。
    • 社会全体の資金調達コストを引き下げ、金融サービスの利便性を向上する。
    • 人民元の為替レートを安定維持し、金融市場の安定を確保する。
  • 新質生産力の発展
    • 商業宇宙開発、低空経済などの新興産業を安全かつ健全に発展させる。
    • バイオ製造、量子技術、具身知能(エンボディードAI)、6Gなどの未来産業を育成する。
    • 製造業のデジタル化転換を加速させる。
    • スマートEV、AI搭載スマートフォン・PC、スマートロボット、次世代スマート端末、スマート製造装備の発展を推進する。
  • 不動産市場の安定化の継続推進
    • 都市ごとの政策に基づいて制限措置を緩和する。
    • 都市部の旧市街・老朽住宅の改修を強化する。
    • 保障性住宅の再ローンの使用範囲を拡大する。
    • 在庫不動産の買収を進める。
    • 不動産融資調整メカニズムを活用し、住宅の引き渡し保証政策を維持する。
  • 高水準の対外開放の拡大
    • 対外貿易の安定発展を推進し、企業支援や越境ECの強化を実行する。
    • 重要な展示会(進博会、広交会、服貿会、数貿会、消博会など)を高品質で開催する。
    • 電気通信、医療、教育などの分野で開放試験を拡大する。
    • 外資企業が要素の取得、資格許可、基準設定、政府調達などの面で国民待遇を実際に保障する。
    • 「一帯一路」の高品質な共同建設を深化させ、重要プロジェクトや民生プロジェクトを推進し、国際的な協力体制を強化する。
    • 中欧班列の安定した運行を保障し、西部陸海新通路の建設を加速する。
  • 基本医療サービスの強化
    • 医薬品の集団調達制度の最適化、品質評価・監督を強化する。
    • 薬品価格形成を健全化し、革新的薬品や医療機器の発展を支援する。
    • 住民医療保険と基本的な公衆衛生サービスの財政補助を、それぞれ1人あたり30元・5元増額する。

その他、質の高い教育体系の構築の加速、農村全面振興の深化推進、社会保障の確保などを発表しています。

2025年の政策の方向性

2025年の政策の方向性は下記の通りと発表しています。

安定を維持しつつ発展を推進し、新たな発展理念を全面的に実践。

新たな発展構造の構築を加速し、高品質な発展を着実に推進。

改革を深化させ、高水準の対外開放を拡大し、現代な産業システムを構築。

発展と安全を統一的に管理し、より積極的なマクロ政策を実施。

国内需要を拡大し、科学技術と産業のイノベーションを促進。

不動産市場と株式市場を安定させ、リスクと外部衝撃に対応。

期待を安定させ、経済の活力を引き出し、経済の持続的な回復を推進。

人民の生活水準向上と社会の安定維持を実現。

「第14次五カ年計画」の目標任務を高品質で達成し、「第15次五カ年計画」の良好なスタートを築く基盤を確立。

より積極的な財政政策と適度な金融緩和政策を実施し、包括的な政策対応を強化。

(2024年の政策の方向性)

ハイレベルの科学技術の自立自強を推進。

マクロコントロールを強化、「内需の拡大と供給側改革の深化」、「新型都市化と農村の全面的振興」、 「質の高い発展と高水準の安全保障」を統一的に手配。

経済活力の増進、リスクの予防・解消、期待の押し上げに着実に取り組む。

経済の復調を持続、強化、経済の質の効果的な向上と量の適正な拡大を持続的に推進。

公共の福祉を増進、社会の安定を維持。

重点業務の推移

中国では全人代の中で、要点を抑えてしっかり取り組むべき任務が毎年発表されます。ここでは、直近3年間の重点業務の推移を確認いたします。


まとめ

2025年は第14次5ヵ年計画の最終年として、また来年から新たに始まる計画に向けて、大変重要な一年となります。中国ビジネスの今後を見据えるうえで、今回の全人代で示された方向性をしっかりと読み解き、自社の戦略にどう落とし込むかが問われる一年になりそうです。

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