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column
2025年11月26日
利墨(上海)商务信息咨询有限公司 倉田 瑞穂
誰もが必ず迎える「死」に関わるため需要がなくならないとされ、長らく“铁饭碗(鉄の飯碗)※”と呼ばれてきた中国の葬祭業ですが、近年は大きな転換点を迎えています。業界最大手の福寿园国際が初の赤字を計上し、株価も下落しました。今回は、この中国葬祭業の現状について見ていきたいと思います。
※「鉄製の飯茶碗は割れない」ことから、失業のない安定した職業を比喩した言葉。
| 区分 | 内容の概要 | 特徴 |
|---|---|---|
|
葬儀サービス |
遺体処理・搬送・化粧・火葬・出棺式・霊安室レンタルなど |
火葬は政府の責任・管理のもとで実施され、営利企業は関与できない |
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墓地サービス |
墓地販売、陵墓設計・建設、墓石販売など |
墓地は政府・公営・集団所有が基本で、民間参入が制限される |
|
その他の製品・サービス |
棺、供花、香炉、祭壇などの販売、葬儀用品・代理代行など |
「合法登録業者」のみ提供可能で、無許可営業は処罰対象 |
2018年以降、中国の葬祭市場は毎年8~11%の成長を続け、2022年には日本円換算で約6.2兆円規模に達しました。日本の直近市場規模(約1.8兆円)と比べると、およそ3.4倍に相当します。
【中国の葬祭業の市場規模推移】
結論として、葬儀費用は中国が安く、日本が高い。一方で墓地費用は両国で大きな差はないという結果になります。
葬儀費用:14~40万円
墓地費用:160~240万円
※上海企業の葬儀パッケージ費用例
葬儀費用:162万円
墓地費用:155.7万円
※2022年に日本消費者協会調べの全国平均、お墓の消費者全国実態調査(2025年)より
1994年に上海で創業し、2013年に香港上場。2023年には約526億円の売上(利益約160億円)を上げるなど、規模・知名度ともに中国最大手の葬祭企業とされています。
2025年上半期の販売数は6,253基で前年同期比451基減。中価格帯へのシフトで平均販売単価も240万円→120万円へ約50%下落。
2024年より国家監察委員会が不正・腐敗防止を強化。民政部は「葬祭管理条例」を改正し公益性を重視。これにより、従来の「土地割当+低コスト取得」に依存したモデルが成立しづらくなった。
若年層(1990〜2000年代生まれ)の62%が葬儀費用を30万円以内に抑制。親世代より約40%削減。
VR・AIを活用したデジタル墓園やAI追悼サービスが登場し、競合も急増。
福寿園だけでなく業界全体に影響し、他社も赤字に転落する“レッドオーシャン化”が進行。
【デジタル墓園(北京の事例)】
中国の葬祭業は、墓地販売中心の「土地経済」から、個別性・感情価値を重視する「感情経済」への転換が急務です。政府は公益性を強化しており、企業は商業利益と社会責任の両立が求められます。また、若年層のコスパ志向に応える環境配慮型の簡素なサービスや、AI・AR/VRを活用した“非土地依存型”の供養モデルが拡大しつつあります。さらに、“死後の消費”から“生涯を支えるサービス”への発想転換が必要で、高齢者の健康・心理ケア、家族支援を含む広義のライフエンド市場への進化が期待されています。
【引用元】
※ 記載の円表記は1元20円の換算となります。
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