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障害者への「合理的配慮の提供」義務化

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2024年05月15日

社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長  味園 公一

障害者差別解消法では、障害者への「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」及び「環境の整備」を行うこととしています。これまで事業者(企業、店舗、個人事業主やボランティア団体など)の努力義務とされていた「合理的配慮の提供」が、令和6年4月1日より義務化されましたので、今回はその概要と注意点についてご紹介します。

合理的配慮の提供

日常生活・社会生活において提供されている設備やサービス等については、障害のない人は簡単に利用できても、障害者にとっては利用が難しく、結果として障害者の活動などが制限されてしまう場合があります。

そこで、障害者から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としていることの申出(意思の表明)があったときに、負担が重すぎない範囲で対応すること(合理的配慮の提供)が、行政機関や事業者に求められています。

また、「過重な負担」があるときでも、障害者に、なぜ過重な負担があるのか理由を説明し、別のやり方を提案することも含めて話合い、理解を得るよう努めることが大切です。

※「意思の表明」について、障害特性等により直接本人からの申出が困難な場合には、障害者の家族や介助者など、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う申出も含まれることに注意しましょう。

※「過重な負担」があるか否かについては、事務・事業への影響、人的制約、費用、技術的制約などにより総合的・客観的に判断します。

対象となる障害者

この法律でいう「障害者」とは、障害者手帳をもっている人のことだけではなく、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害なども含まれます)、その他心や体のはたらきに障害がある人で、障害や社会の中にあるバリアによって、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人すべてが対象となります。

※「○○障害のある人は・・・」と一律に判断するのは合理的ではありません。同じ障害でも程度等によって適切な配慮が異なる場合がありますので、個別に検討すべきでしょう。

合理的な配慮の提供の具体的事例

  • 視覚に障害のある人からの申出
  • スーパーマーケットにおいて、店内での写真撮影は禁止されているが、弱視のため商品をタブレットで撮影・拡大して確認したい。

    →店員にて売場案内のサポートを行うとともに、視覚障害を補うための撮影は認めることとした。

  • 肢体不自由のある人からの申出
  • 飲食店で、備え付けのいすを使用せず、車いすのまま着席したい。

    →他のお客さんの移動の妨げにならないテーブルへ通し、店舗に備え付けのいすは片付けて、車いすのまま着席できるスペースを確保した。

  • 発達障害のある人からの申出
  • 今度のセミナーに参加したいが、文字の読み書きに時間がかかるため、セミナー参加中にホワイトボードを最後まで書き写すことができない。どうにかしてほしい。

    →会場だけでなくオンラインでのセミナー配信を同時開催することとし、ホワイトボードとあわせてセミナー内容のアーカイブ視聴をできるようにした。

    建設的対話の注意点

    合理的配慮の提供に当たっては、障害者と事業者との間の「建設的対話」を通じて、障害のある人もない人も互いに理解を深め合いながら、共に対応策を検討していくことが重要です。

    仮に対応が難しい場合でも、障害者と事業者双方が持っている情報や意見を伝え合い、目的に応じて代替となる手段を見つけていくことを心がけます。

    ※建設的対話を「一方的に拒むこと」は合理的配慮の提供義務違反となる可能性があるため注意が必要です。

    ※「前例がないので対応できない」「特別扱いできない」「もし何かあったらいけないので対応できない」という一律的な判断や、正当な理由のない判断は避け、どのような対応ができるのか個別に検討する必要があります。

    おわりに

    今回の義務化では、障害者から社会的バリアを取り除くため対応について申出があったときに、「負担が重すぎない範囲」で対応を行うことが求められます。申出に対して一律にお断りはせず、「建設的な対話」により可能な範囲での柔軟な対応が求められることでしょう。

    特に接客業務・窓口業務など、従業員が、障害者と直接かかわり合いのある職種については、建設的対話が現場レベルで行えるよう、想定される場面とその対応を検討し、従業員への研修や周知を行っていくことも効果的でしょう。

    令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!(内閣府)

    障害を理由とする差別の解消の推進相談対応ケーススタディ集(内閣府)

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