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2024年03月20日
社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一
昨今の物価上昇に伴う賃上げが注目される中、国の施策としては、令和6年度の税制改正により、定額減税、賃上げ促進税制、ひとり親控除や子育て向け住宅ローン控除の拡充等、様々な取り組みが実施される予定となっています。今回は、人事労務の分野において特に注目される「定額減税」についてご紹介いたします。
所得税の定額減税は、いわゆるデフレからの脱却を目的として、本来の納税額にかかわらず「均等な減税」を提供する制度です。
令和6年分の所得税に係る一定要件を満たす方を対象に、令和6年6月1日以降最初に支払う給与等につき源泉徴収を行う際から、定額による所得税額の特別控除が適用されます。
実務においては、毎月の給与及び賞与から定額減税額を控除する「月次減税事務」と、年末調整の際に定額減税額の精算を行う「年調減税事務」を行うことになります。
令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下(給与収入2,000万円以下)である「基準日在籍者」に適用します。この「基準日在籍者」とは、令和6年6月1日現在、給与支払者のもとで勤務している人のうち、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の「甲欄」が適用される居住者のことをいいます。
※以下の者は基準日在籍者に該当しないため、定額減税が適用されません。
定額減税額は、次の合計額となります。
ここで「同一生計配偶者」とは、控除対象者と生計を一にする配偶者(青色事業専従者等を除く)のうち、年間の合計所得金額が48万円以下の者をいいます(非居住者を除く)。
また、「扶養親族」とは、所得税法上の控除対象扶養親族(年末調整の際の扶養控除申告書に記載される者)だけでなく、16歳未満の扶養親族も含まれます(非居住者を除く)。
月次減税について、具体的事例をイメージしてみましょう。仮に、給与支払者のもとで勤務する本人、同一生計配偶者及び扶養親族1人の3人家族の場合、月次減税額は合計90,000円になります。この月次減税額につき、令和6年6月給与の所得税から控除しきれない場合には、翌月以降の給与や賞与に順次繰り越して控除します。
本事例において、毎月の給与が約50万円、そのうち所得税が月17,000円だとすると、6月~10月までの毎月17,000円(5か月×17,000円=85,000円)と、端数となる5,000円が11月の所得税から控除されることになります。従って、11月の給与では残る12,000円を源泉徴収税額とします。
そして最終的に、年末調整の際に年調減税事務を行い、定額減税額の精算を行います。
給与計算実務等において、給与所得者各人ごとの減税額の算出や月次減税額の繰越についての管理、給与明細書への記載項目の追加など、事務手続きが煩雑になることが想定されます。事務取扱上の注意点について、簡単に押さえておきましょう。
月次減税額の控除を行った場合には、従業員へ交付する給与明細書の備考欄等適宜の箇所に「定額減税額(所得税) 〇〇円」等の表示をします。
源泉徴収簿作成の際に、「本来の所得税額」と「控除した定額減税額」を分けて記載しなければならない可能性があるため、給与明細書への記載等、事前に工夫しておくとよいでしょう。
例年通り算出した「年調所得税(住宅借入金等特別控除後)」から、新たに「年調減税額」を控除することとなります。 年調減税額は、年末調整を実施する際に「扶養控除等申告書」や「配偶者控除等申告書」にて確認できる同一生計配偶者や扶養親族の人数に基づいて、最終的な定額減税額を決定します。
年末調整終了後に作成する源泉徴収票については、「摘要」欄に「源泉徴収時所得税減税控除済額〇〇円、控除外額〇円」と記載します。「控除外額」とは所得税より控除しきれなかった金額のことで、全て控除できた場合でも、「控除外額0円」の記載が必要です。
令和6年6月1日以後に給与所得者が退職し、既に月次減税額の適用を受けている場合、再就職先での年末調整又は確定申告で最終的な定額減税との精算を行うこととなります。退職時には減税額の精算は行わないため、退職者の源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄には、月次減税額を控除した後の実際に源泉徴収した税額の合計額を記載し、「摘要」欄には定額減税額等を記載する必要はありません。
定額減税の制度概要に関するパンフレット及びQ&A、その他「各人別控除事績簿」の様式が、国税庁HPの『定額減税特設サイト』にて公表されております。情報が随時更新されておりますので、同サイトにて最新情報をご確認くださいませ。
国税庁HP:定額減税特設サイト
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