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2024年01月17日
社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一
前回に引き続き、2023年10月20日より実施されている「年収の壁・支援強化パッケージ」のお話です。今回はその後編です。概要の振り返りと紙面の都合により前回説明できなかったものにつき、ご説明いたします。
年収の壁を超えて働く短時間労働者が社会保険に加入するにあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給する手当がこれに該当します。本人負担分の社会保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定基礎額から除外されます。この手当は「106 万円の壁」の時限的な対応策として、臨時かつ特例的に労働者の保険料負担を軽減すべく支給されるものです。
2025年度末までに労働者を社会保険に適用させ、賃上げか労働時間の延長によって労働者の手取り収入を増加させた事業主に対して、1人あたり最大50万円が助成されます。
一時的な収入変動である旨の事業主の証明により、年収130万円を超えても引き続き被扶養者認定がなされます。
企業における配偶者手当の在り方について見直しが進むよう、見直し手順のフローチャートや事例紹介パンフレットが示されています。
後編では、3.及び4.についてご紹介します。
年末時期等の「人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨」を事業主が証明することにより、年収130万円を超えた労働者を引き続き健康保険制度上の被扶養者として認定するための措置です。130万円の壁への当面の対応策として2023年10月20日以降の被扶養者認定及び被扶養者の収入確認に適用されています。
「一時的な収入増」の具体的な上限額は定められておらず、雇用契約書や実態に応じて判断されます。なお、本措置は2年間(連続2回)までが対象とされています。
※健康保険組合によっては、被扶養者として認定されている方の年収が130万円を超えることになった場合、「収入増」を理由として一度被扶養者資格を喪失させ、健康保険組合から収入確認の問い合わせ連絡が来て初めて事業主証明書の提出ができる手順もあるとのことです。会社が加入する健康保険組合ごとに対応方法が異なる場合がありますので、ご注意ください。
「被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書」の様式は、厚生労働省HPからダウンロードすることができます。
厚生労働省HP:事業主証明様式(Word)
※この様式は、被扶養者認定の際や毎年の被扶養者の収入確認の際に被扶養者を雇用する事業主が発行し、通常必要とする書類に添付して保険者に提出します。
※様式を提出しても、「一時的な収入増である」と認められなければ、当然に被扶養者として認定されるものではありません。
毎年、被扶養者状況リストが協会けんぽより事業主宛に送付されます。被扶養者の収入確認を行った際に、年収が130万円(被扶養者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害を有する者の場合は180万円)以上の場合であって、人手不足による労働時間延長等に伴い、一時的に収入が増加していることが確認できた場合は、被扶養者状況リストの「変更なし」にチェックをしたうえで、「一時的な収入変動」に係る事業主の証明を被扶養者状況リスト等と併せて提出します。
※収入を確認する書類(所得証明書等)は、ご提出いただく必要はございません。
※本年(2024年)も同様の運用になることが予想されます。
※保険者が健康保険組合の場合には、健康保険組合ごとに対応が異なることが想定されますので、ご注意ください。
民間企業において、配偶者がいる労働者に対して支給される手当のことを「配偶者手当」といいます。実際の手当の名称は、企業によって「家族手当」「扶養手当」などさまざまです。配偶者手当を支給する企業は減少傾向にありますが、令和4年職種別民間給与実態調査によると、配偶者に家族手当を支給する企業は約55%あり、そのうちの80%以上が「配偶者の収入基準」を支給要件として設定しています。
従って、配偶者手当をもらうために、他社で働いている配偶者が、手当受取の収入基準を超えないよう就業調整を行う、ということが想定されます。
労働力人口が減少していくことが予想され、働く意欲あるすべての人がその能力を十分に発揮できる社会の形成が必要とされます。中でも、就業調整につながるような配偶者手当については、「配偶者の働き方に中立的な制度となるよう見直し」が望まれます。
円滑な見直しに向け、4ステップのフローチャートが提言されています。
Step1 賃金制度・人事制度の見直し検討に着手
Step2 労働者のニーズを踏まえた案の策定
Step3 見直し案の決定
Step4 決定後の新制度の丁寧な説明
※各ステップの詳細は次の資料をご確認ください。
(例)配偶者手当を廃止し、相当部分を基本給に組入れ
(例)配偶者に対する手当を廃止し、子どもや障害を持つ家族に対する家族手当を増額
(例)配偶者手当の支給要件に「一定年齢までの子供がいる場合のみ」を追加
(例)管理職・総合職に対する配偶者手当を廃止し、実力・成果・貢献に応じて配分
(例)生活保障の観点から配偶者手当を存続し、代替案として他の手当を改廃
※次の資料にて、具体的な取り組み事例(手当の廃止・縮小等)が取り上げられています。
関連コラム
社労士コラム「年収の壁・支援強化パッケージ」について【前編】