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新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけ変更について

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2023年05月17日

社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一

約3年を超える期間、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という。)により普段の生活も仕事も多くの制約の中で窮屈な想いをしてきました。ここにきて、やっと収束の兆しが見えてきたところで、政府も感染症法上の「2類相当」と位置付けている新型コロナを「5類」に引き下げることを予定(本稿をご覧いただている頃には既に引き下げられていると推測しますが。)しています。
今回は、この位置付け変更後の療養期間の考え方と、考え得る企業の対応についてご紹介します。


療養期間の新たな考え方

感染症法上「2類相当」のときは、一定期間の外出自粛が求められていました。同「5類」への位置づけの変更後は、行政が新型コロナにり患した者に対し、外出自粛を要請することはなくなり、外出を控えるかどうかは、季節性インフルエンザと同様に個人の判断に委ねられることになります。
以下で、厚労省が発出したその判断の根拠となる情報を見ていくこととしましょう。

他人への感染リスクは?

個人差があるにせよ、新型コロナは発症2日前から発症後7~10日間は感染性のウイルスを排出していると言われています。発症後3日間は、ウイルスの平均的な排出量が非常に多く、5日間経過後は大きく減少することから、特に発症後5日間が他人に感染させるリスクが高く注意が必要です。また、排出されるウイルス量は発熱や咳などの症状が軽快するにつれて減少するようですが、軽快後も一定期間ウイルスを排出するといわれています。

どのくらいの期間外出を控えるべきか?

前述の通り「5類」に位置付けが変更された後は、外出を控えるかどうかは、個人の判断に委ねられます。その際、以下の情報を参考にすると良いでしょう。 なお、会社は、個人の主体的な判断が尊重されるよう配慮が必要です。

外出を控えることが推奨される期間

  • 特に発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことから、発症日を0日目(無症状の場合は検体採取日を0日目)として5日間は外出を控えることが推奨されます。
  • 5日目に症状が続いていた場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは、外出を控え様子を見ることが推奨されます。

周りの者への配慮

10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があることから、不織布マスクを着用したり、高齢者等ハイリスク者と接触は控える等、周りの者へうつさないよう配慮が必要です。発症後10日を過ぎても咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、マスクの着用など咳エチケットを社員に推奨しましょう。

濃厚接触者の取扱い

「5類」に移行した後には、保健所から新型コロナ患者の「濃厚接触者」として特定されることはありません。よって「濃厚接触者」として外出自粛は求められませんので、対象社員本人の判断に委ねられることになります。

家族が新型コロナにり患したら?

社員の家族や同居する者が新型コロナにり患したら、可能であれば部屋を分け、感染した家族等の世話はできるだけ限定した者で対応するなど、社員に注意を促してください。 その上で、社員本人が外出する場合は、新型コロナにり患した者の発症日を0日として、特に5日間は自身の体調に注意するよう指導しましょう。

7日目までは発症する可能性があるので、手洗い等の手指衛生や換気等の基本的感染対策のほか、不織布マスクの着用や高齢者等ハイリスク者と接触を控える等の配慮を求めましょう。


企業の必要な対応等

社員が新型コロナにり患した場合、前述の通り外出自粛要請ができなくなりますので、症状が重い者は別として、症状がごく軽度の者や無症状の者は本人の判断で出社できることになります。一定の社内ルールが定められれば良いのですが、その基準を決定することが難しいという面もあります。

社内ルールの見直し

収束してきたとはいえ、一部のり患者は重篤化し死に至るケースもありますので、会社としては一定の線引きをし、出社の可否をルール化できれば良いと考えます。熱が何度以上ある場合、咳が頻繁に出る場合等、基準が示せると良いですね。なお、自宅療養させる場合には休業手当の支払いを要します。

また、マスク着用、手指消毒、検温、アクリル板等パーテーションの利用、窓開け等の喚起など、会社として今まで求めていた対応を今後どうするかを決定する必要があります。
これらについて、就業規則の服務規定等に定めた場合には、当該条項の改定が必要となります。

社内制度の見直し

新型コロナ対策として新たに導入したであろう以下の制度等についても、廃止するのか、内容を見直すのか、または引き続き運用していくのかを決定する必要があります。


 ・在宅勤務、テレワーク ・フレックスタイム制度 ・時差出退勤制度
 ・在宅勤務手当の支給 ・通勤交通費の支給基準の見直し etc

この場合、労働条件の不利益変更との関係をどう見るかですが、新型コロナに合わせ新たに導入した制度を元に戻すことは不利益変更には当たらないと考えます。

新型コロナが蔓延する前から導入していた制度の改廃については、新型コロナにより就業形態が変わり、さらに収束により就業形態を見直すとしても、不利益変更と指摘を受けないよう対応が必要です。このような制度改廃については、社会通念上相当である合理的な理由を社員に対して説明し合意を得る必要があると考えます。

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