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平均賃金の算定について

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2023年03月08日

社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一

政府は企業に対して例年にも増した賃上げを要望しているところです。その関係でしょうか、行政機関たる労働基準監督署が「賃金引上げに向けた取組について」という書面を用いて、企業に賃上げ検討を促しています。今回のコラムは、賃金は賃金でも平均賃金についてです。算定の原則のみならず、例外についても記載してありますので確認していきましょう。


平均賃金とは?

平均賃金とは、労働基準法(以下、「労基法」という。)で定められている手当や補償、減給制裁の制限額を算定するときの基準となる金額です。

平均賃金は、原則として算定事由の発生した日以前3か月間を算定期間として、以下の計算式により算定されます。

【算定期間中の賃金総額 ÷ 算定期間中の総歴日数】

平均賃金を算定するとき

以下いずれかを計算する際に、平均賃金を用います。

  1. 解雇する場合の予告に代わる解雇予告手当 …平均賃金の30日以上
  2. ②使用者都合により休業させる場合に支払う休業手当 …1日につき平均賃金の6割以上
  3. ③年次有給休暇を取得した日について平均賃金で支払う場合の賃金
  4. ④労働者が業務上負傷し、もしくは疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償等
  5. 休業補償給付など労災保険給付の額の基礎として用いられる給付基礎日額も原則として平均賃金に相当する額とされています。
  6. ⑤減給制裁の制限額…1回の額は平均賃金の半額まで、複数事案につき制裁する際は支払賃金総額の1割まで
  7. ⑥じん肺管理区分により労働局長が作業転換の勧奨または指示を行う際の転換手当… 平均賃金の30日分または60日分
 

算定事由の発生した日とは?

平均賃金の算定事由発生日は、以下の通りです。

  1. ①解雇予告手当の場合は、労働者に解雇を通告した日
  2. ②休業手当の場合は、休業が発生した初日
  3. ③年次有給休暇に支払われる賃金の場合は、年次有給休暇を与えた最初の日
  4. ④災害補償の場合は、業務上負傷した日
  5. ⑤減給の制裁の制限額については、減給の意思が相手に到達した日
 

例外的な平均賃金の算定方法

原則的な平均賃金の算定方法であっても、以下のような制約があります。

  1. ①算定対象から除外すべき期間および当該期間中の賃金がある
  2. ②算定事由発生日以前3か月間の起算日は直近の賃金締切日である
  3. ③賃金総額から除かれる賃金がある

さらに、以下で特別なケースでの平均賃金の算定方法を紹介していきます。

平均賃金の最低保障

日給制、時間給制、出来高払制、請負制の場合、平均賃金が低額となってしまうこともあります。

このような場合を考慮して次の算出による最低保障が定められています。

【算定期間中の賃金総額 ÷ 算定期間中の実労働日数 × 60/100】  

雇入れ後3か月に満たない場合の平均賃金

算定事由発生日以前に3か月間の期間がない場合は、 雇入れ後の期間とその期間中の賃金で算定することになります。なお、算定期間が2週間未満の者、または雇入れ当日に算定事由が発生した場合については、都道府県労働局長が決定するものとされています。

日給月給制で欠勤控除が多い場合の平均賃金

今回特に注目したいのがこれ、算定事由発生日以前3か月間に私傷病等による欠勤が多く、賃金総額が極端に少なくなってしまうケースです。

前述の最低保障額は、賃金の一部または全部が日給等によって定められている場合についてのみ規定したもので、欠勤控除のある日給月給制には適用できません(S270510基収6054号)。ただし、この方法により単純に計算すると著しく低額となる場合については「厚生労働大臣の定めるところによる。」とされており、以下の①~③の合計額が平均賃金となります(S300524基収1619号)。 

  1. ①日給制、時間給制又は出来高制その他の請負制の部分
  2. 算定期間中の賃金総額 ÷ 算定期間中の実労働日数 × 60/100】
  3. 日給月給等の部分(月、週その他一定の期間によって定められ、かつ、欠勤日数もしくは欠勤時間数に応じて減額される部分)
  4. 算定期間中、無欠勤としたときの賃金総額 ÷ 算定期間中の実労働日数 × 60/100】
  5. ③月給、週給等の部分(月、週その他一定の期間によって定められ、かつ、欠勤日数 または欠勤時間数に応じて減額されない部分) 
  6. 【算定期間中の賃金総額 ÷ 算定期間中の総歴日数】
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