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2023年12月20日
社会保険労務士法人味園事務所 代表社員所長 味園 公一
「年収の壁」を意識したパートタイマー等の短時間労働者が年末にかけて就業時間や就業日数を減らす「就業調整」が問題となっています。この「年収の壁」への対応として、全世代型社会保障構築本部より発出された「年収の壁・支援強化パッケージ」が、2023年10月20日より実施されています。
少々ボリュームが多いので、次回を含めて前後編に分けてご紹介いたします。
年収の壁を超えて働く短時間労働者が社会保険に加入するにあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給する手当がこれに該当します。本人負担分の社会保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定基礎額から除外されます。この手当は「106 万円の壁」の時限的な対応策として、臨時かつ特例的に労働者の保険料負担を軽減すべく支給されるものです。
2025年度末までに労働者を社会保険に適用させ、賃上げか労働時間の延長によって労働者の手取り収入を増加させた事業主に対して、1人あたり最大50万円が助成されます。
一時的な収入変動である旨の事業主の証明により、年収130万円を超えても引き続き被扶養者認定がなされます。
企業における配偶者手当の在り方について見直しが進むよう、見直し手順のフローチャートや事例紹介パンフレットが示されています。
今回は、1.及び2.についてご紹介します。
パートタイマーをはじめとする短時間労働者の賃金が一定額を超えると、賃金から社会保険料が天引きされるようになり、手取り収入が減ってしまいます。これを回避するために、年間の就業日数や就業時間を減らす短時間労働者が少なくありません。これが、いわゆる「年収の壁」といわれる問題です。
年収130万円以上になると、被扶養者ではなくなり、国民年金・国民健康保険に加入することになるため、保険料負担を避けるために意識される壁です。
厚生年金保険の被保険者数が常時101人以上(2024年10月からは常時51人以上)の事業所で働く短時間労働者の場合は、年収106万円(月額8.8万円)以上となることで、厚生年金保険・健康保険に加入することになるため、保険料負担を避けるために意識される壁です。
社会保険適用促進手当は「短時間労働者への社会保険の適用を促進するため、労働者が社会保険に加入するにあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給するもの」です。
社会保険適用に伴い新たに発生した「本人負担分の保険料相当額を上限」として、標準報酬月額・標準賞与額(社会保険料)の算定対象となりません。ただし、各労働者について、2年が経過した後は、通常の手当と同様に標準報酬月額・標準賞与額の算定に含めなければなりません。
なお、本人負担分の保険料相当額を超える部分については、通常通り社会保険料の算定に含めなければならないので、会社は社会保険適用促進手当とは別の名称の手当として支給していただくことが想定されます。
新たに社会保険の適用となった労働者であって、標準報酬月額が10.4万円以下の方が対象となります。
また、労働者間の公平性を考慮し、事業主が同一事業所内で同じ条件で働く、既に社会保険が適用されている労働者についても同水準の手当を特例的に支給する場合には、(標準報酬月額が10.4万円以下であれば)本措置の対象となります。
※厚生年金保険の被保険者数が常時101人以上(2024年10月からは常時51人以上)の事業所に勤務する短時間労働者に限られません。
新たに社会保険に適用されることで生じる保険料負担が労働者の手取り収入の減少につながらないよう、手当等により労働者の収入を増加させた事業主に対して助成するメニューです。
⇒適用1年目と2年目は賃金の15%以上分を一時的な手当(社会保険適用促進手当等)で追加支給し、適用3年目以降は基本給等の増加や労働時間延長によって、恒常的に賃金を18%以上増加させることで助成されます。支給申請は6か月ごとに計5回行い、中小企業における助成額は最大10万円×5回の50万円となります。(大企業は4分の3の額)
※「賃金の15%以上」は、労働者負担分の社会保険料額以上の金額が手当等で支給されていれば、運用上要件を満たしていなくても支給されます。
労働時間の延長を組み合わせて収入を増加させた事業主を助成するメニューです。
⇒週所定労働時間を4時間以上延長(賃金増加との組み合わせにより、延長時間が1時間以上4時間未満でも可)させることで助成されます。助成額は6か月で30万円(1回のみ)となります。
週所定労働時間の延長 | 賃金増加 |
4時間以上 | なし |
3時間以上4時間未満 | 5%以上 |
2時間以上3時間未満 | 10%以上 |
1時間以上2時間未満 | 15%以上 |
※賃金増加との組み合わせによる場合、社会保険適用促進手当等の一時的な手当ではなく、基本給による恒常的な増加が必要です。
1.手当等支給メニューと2.労働時間延長メニューの併用により助成するメニューです。
⇒1年目で1.手当等支給メニューにより社会保険適用促進手当等を支給し、6か月ごとに10万円×2回の助成を受け、さらに2年目に2.労働時間延長メニューを選択することにより、6か月で30万円の助成を受けることができます。(最大50万円)
※2年目の賃金増加要件について、1年目に払った社会保険適用促進手当等を、標準報酬月額の算定対象とされる恒常的な手当に変更することで、賃金増加分に含めることができます。
キャリアアップ助成金の申請手続きにおいては、通常、対象コースの実施日の前日までに都道府県労働局に「キャリアアップ計画書」を提出しておく必要があります。しかし今回の社会保険適用時処遇改善コースは2023年10月1日に遡及適用された為、2024年1月31日までに取組を開始する場合には、キャリアアップ計画書を事後提出することが特例として認められています。
※2024年2月1日以降に取組を開始する場合は通常通り事前提出が必要です。
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