上海のロックダウン
(1)いつから始まったか?
上海市中心部を流れる黄浦江という川を境に、2022年3月28日から東側、同年4月1日から西側のロックダウンが始まりましたが、実は3月から小区(※)の中に、濃厚接触者や陽性の疑いがある者がいた場合、2日間の隔離とPCR検査を実施し、陽性が判明した場合、2週間の隔離という施策が始まっていました。しかしながら、この施策では感染の勢いが収まらずロックダウンする流れとなりました。
当社でも3月初旬から小区が封鎖され、そのままロックダウンに突入し、これまでに2ヶ月以上隔離されている社員もおります。
ロックダウンは上述の日付から始まりましたが、封鎖期間は地域によっては、その以前から始まっているのが実態です。
(※)小区…居住区のこと。中国では、居住区は塀で囲まれており門から出入りします。
(2)具体的な施策は?
主だった施策について、簡単にご紹介いたします。
①交通機関
バスやタクシー、許可のない自家用車の通行は禁止となりました。地下鉄は2022年5月10日、これまで動いていた6号線と16号線も運行を停止し、全線で運航停止となりました。
②物流・デリバリー
上海へ入る車両は、通行証が必要となります。ロックダウン当初、通行証の取得が難しく上海への物流は著しく減少しました。筆者も団体購入で注文した物が、上海市へ入れずキャンセルされた、ということが何度かあり、欲しいものを買える状況ではなくなったことを目の当たりにしました。現在では、少しずつ物流も戻りECサイトで購入したものも、徐々に届きつつあります。
また、上海生活の要ともいえる食事のデリバリーですが、こちらもロックダウン当初は止まりましたが、現在では少しずつ注文できるようになっています。ただしお店の数も、商品数も以前に比べ少ないままです。
参照:時事ドッドコムニュース-中国経済が急失速、「ゼロコロナ」「ウクライナ」で先行き暗雲【解説委員室から】
③外出制限
上海では、3つの分類(封控区・管控区・防範区(※))に分けられています。この分類毎に、小区の名前が公表されています。自分の住んでいる小区はもちろん、近くの小区がどうなのかもチェックすることができます。
防範区となれば、小区の外に出ることも可能とされていますが、筆者の住んでいる小区は防範区にも関わらず外に出ることはできません。実際の運用は、自治体によって異なるようです。
(※)
「封控区」…直近7日以内に陽性感染者の報告があった地区です。
「管控区」…直近7日以内に陽性感染者の報告がなかった地区です。
「防範区」…直近14日以内に陽性感染者の報告がなかった地区です。「防範区」内で陽性感染者が出た場合は、「封控区」となります。
参照:人民網日本版-消毒作業を支援するボランティアチーム 上海市
④PCR検査と抗原検査
ロックダウン期間中、PCR検査と抗原検査どちらかを、ほぼ毎日行います。PCR検査は外で行うため、貴重な外出の時間となります。ロックダウン開始直後は、PCR検査は予約制でしたが、現在は、「核酸码」というコードが出来、予約不要となりました。
PCR検査の様子
参照:人民網日本語版-中国における「動的ゼロコロナ」とは?感染者ゼロに非ず
抗原検査は、キットが配布され結果をマンションあるいは小区毎のグループチャットに報告します。このグループチャットで、いつPCR検査を行うのか、政府からの配給の知らせなどが行われます。
抗原検査キット(筆者撮影):自身で検査を行い、結果をグループチャットへ送信します。
なお、感染が判明した場合、政府の施策としては、すぐに病院やホテルに移動させることですが、SNSの情報では、人数が多いため何日か経ってようやく移動するケースが多いようです。
⑤政府からの配給
話題となっている丸鶏は政府からの配給にあります。配給ですが野菜や、お肉といった食材がほとんどです。日本では見ない野菜も入っています。私の住んでいる長寧区では5月13日時点で5回ありました。内容と回数は、各区によって異なっており、別の区に住んでいる当社社員は8回程配給されたそうです。
政府からの配給の様子
参照:人民網日本語版-上海の「野菜入手困難」をどう緩和するか?
(3)経済への影響は?
2021年の上海市のGRPは4.3兆元で、中国GDPの約4%弱を占め、特に輸入額においては、14%を上海が占めています。
参照:JETRO日本貿易振興機構-上海の封鎖管理が物流や貿易などサプライチェーンに影響(中国)
サプライチェーンの面では、上海は世界最大の自動化されたコンテナターミナルを持ち、コンテナ取扱量も、12年連続で世界第1位となっています。この上海港は、封鎖期間中も稼働はしているものの、物流の管理体制の厳格化によってトラック等の運輸量が低下し、配送が追い付かず、大手自動車メーカーの工場停止等に追い込まれました。今回のロックダウンは、1日毎に約117.80億元の損失が出るとまで言われています。
参照:腾讯新闻-上海疫情对全球经济影响有多大?|观点
このロックダウン中に話題となったサービス
実際に生活する上で、ロックダウン期間中に話題となったサービス等を紹介していきます。
①「抢菜(qiang cai)」
直訳すると、「料理を奪う」です。食材の購入アプリで、食材を購入することを指します。各アプリで、受付時間、配送時間、配送料などが異なります。受付時間の前にアプリで欲しいものを買い物かごに入れ、受付時間になったら購入します。需要が多く、受付時間のタイミングを狙っても、買えない人は多いです。
抢菜APP(筆者スクリーンショット):攻略法をまとめた サイトも立ち上がりました。
ibuy亲子-上海线上抢菜攻略!超实用!买菜必备APP!
②「团购(tuan gou) 」
団体購入のことです。野菜のセット販売や、日用品のセット販売、パン、コーヒーなども購入できます。セット販売が多いため、金額もやや高くなります。もともと武漢市のロックダウン時にも行われており、当時のニュース記事などを見てみますと、実際に人がまとめて購入して届けるサービスのようでした。上海のロックダウンでは「群接龙(qun jie long)」というサービスを使ってオンラインで団体購入できるようになりました。
③「跑腿(pao tui)」
いわゆるお使いサービスです。アプリで配達員を手配し、飲み物、食べ物、日用品、コーヒーなどなどの特定の商品を代理購入させることができます。チップを払うことができ、より高いチップを支払うと配達員を手配しやすくなります。配達員とのやり取りを行うため、中国語能力が必要となります。
さいごに
今回は、上海ロックダウンについてご紹介いたしました。
ロックダウンという状況下においても、様々なサービスを駆使し互いに助け合いながら生活をする中国人は頼もしくバイタリティに満ちているように感じます。そして、我々外国人にとても優しく接してくれます。このような機会がなければ、住民ともコミュニケーションをとることはなかったかもしれません。
2022年5月16日現在、政府から段階的に開放をする旨の発表がありました。ようやく終わりが見えてきそうなロックダウンですが、以前の活気溢れる上海に戻るにはまだまだ時間がかかると思われます。ロックダウンが明けた後、変わってしまった所、変わらない所、目まぐるしく変わる上海の状況を引き続き注視していきます。
ロックダウン化での情報共有
4月から約1カ月半、在宅勤務をしていますが、当社が提供しているグループウェアや、ワークフローを自社でも用い、社内の情報共有や、社内申請は滞りなく出来ております。日頃からこういった情報共有ツールを利用しておけば、在宅勤務で業務を止めずに済みます。申請書のデジタル化を検討されている方、まずはお試しでご利用してみてはどうでしょうか。