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労働基準法関係諸法令

column

2022年12月06日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

労働基準監督署(以下「労基署」という。)では、働き方改革を推進するため、また労働者からの申告により、労働基準監督官が臨検・監督を実施し指導しています。今回は、労基署の監督指導のもと書類送検された事例をピックアップしてみたいと思います。

定期監督等

臨検・監督のうち定期監督は、「各労働局の管内事情(産業構造、労働時間の状況、労働災害の発生状況、電話、投書等による情報等の分析等)に即して対象事業場を選定して年間計画により実施しているものです。令和3年度は全国で122,054事業場に対して実施され、うち83,212事業場で何らかの法違反が認められました。68.2%もの事業場において法違反があったことになります。法違反に関する集計結果は以下の通りです。

法 違 反 状 況
労働条件の明示

(労基法15条)

労働時間

(労基法32条)

上限規制

(労基法36条)

割増賃金

(労基法37条)

年次有給休暇

(労基法39条)

10,025 18,007 1,664 16,521 9,783

送検事例①【令和4年3月8日送検】

今治労基署は、労働者に対して所定日までに賃金を支払わなかったうえ、労働条件の通知、賃金台帳の作成、タイムカードの保存を怠ったとして、手すりなどの金属製品加工請負業者を松山地検に書類送検した。賃金不払いについては、労働者が独自に保存していたタイムカードの写しを基に立件している。

同労基署によると、同社は労働者1人に対し、令和2年10月~3年3月までの6カ月間の定期賃金、合計約26万円を所定日までに支払っていなかった。雇入れ時には、労働条件を口頭で伝えたのみで、書面での交付をしていない。

賃金台帳は、まったく作成していない状態だった。タイムカードの原本はしばらく保存していたが、同労基署が調査に入った際には破棄してしまっていた。

送検事例②【令和4年9月15日送検】

大淀労基署は、宿泊施設と道の駅で働く労働者7人について最低賃金額未満で働かせたなどとして、会社と同社副社長および支配人を労基法37条(割増賃金)と最賃法4条(最低賃金)違反、道の駅の責任者を労基法37条違反の疑いで奈良地方検察庁に書類送検した。

同社は、宿泊施設の夜間フロントスタッフ2人に対し、令和3年12月26日~4年4月25日の期間について、最賃以上の賃金を支払わなかった疑い。深夜労働などの割増賃金も所定支払日に支払っていなかった。スタッフの給与は日給制であったが、時間額に換算すると最賃を下回っていた。

道の駅では、販売員5人に同期間の割増賃金の一部を支払わなかった疑いがある。同労基署によると、副社長が割増賃金の不払いなどを決定し、支配人と責任者の2人を指揮して実行した。支配人らは勤怠管理を行う立場にあり、かつ副社長の指示により賃金が支払われないことを認識していながら労働者を働かせたとして、送検の対象となっている。

労働者に支払われていなかった総額は106万8735円に上る。

送検事例③【令和4年9月27日送検】

中央労基署は、機械式駐車装置の調整を行わせるに当たり、労働者に危険が及ぶおそれがあったにもかかわらず機械の運転を停止しなかったとして、装置の製造・管理を行う会社と同社サービスセンター所長代理を労働安全衛生法20条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで東京地検に書類送検した。

昨年9月、地下駐車場の装置内部で労働者が構成部材に挟まれて死亡する労働災害が発生している。装置内部では自動車を乗せたパレットとおもりがチェーンでつるべ状に吊られていた。別の労働者がパレットを上昇させたことでおもりが降下し、下にいた労働者が床面との間に挟まれた。同労基署によると、被災者らは複数人で現場を回り、装置の定期メンテナンスを行っていた。ビルごとに構造が違うこともあり、労働者間の連絡調整が上手くいっていなかったとみている。同種の駐車装置での事故を防ぐため、業界団体と連携を図っていくとした。

送検事例④【令和4年10月12日送検】

岡山労基署は、36協定の締結・届出なく労働者6人に違法な時間外労働をさせたとして、食料品製造業の会社と同社代表取締役を労基法32条(労働時間)違反の疑いで岡山地検に書類送検した。同社は今年4月に、最も長い者で月253時間の時間外労働をさせた疑い。5月に同労基署が臨検した際、労働時間数を過少に記載した虚偽の勤務報告書を提出した疑いも持たれている。

同社は今年4月の1カ月間について、36協定を締結することなく、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて働かせた疑い。5月に同労基署から臨検を受けた際には、各事業場の管理者が本社に報告するために労働時間を記録したという「勤務報告書」を提出した。同労基署は報告書について、労働時間を確認できる書類の提出を求められたことを受けて同社が作成した虚偽の書類とみている。

労働時間数は同労基署が確認した実際の時間数より過少に記載されていたという。虚偽の書類提出に関し、同社を労基法101条(労働基準監督官の権限)違反の疑いで送検している。同労基署によると、時間外労働は労働者によって長短があり、最も長い者で月253時間に上っていた。時間外労働の上限規制や、いわゆる過労死ラインを大きく上回っているうえ、虚偽の報告も行っており、悪質と判断している。36協定に関しては、「少なくとも立件対象とした1カ月間については締結も届出もされていなかった」とした。

おわりに

毎月おおよそ10件程度の送検事例があるようです。その後、起訴処分になるか否かは個別事案ごとに異なります。事案としては、労災事故事案が圧倒的に多いようですが、労働基準法はじめ関係諸法令の違反を放置しておくと、このような事態に陥りますので十分ご注意願います。

※資料出所:労働新聞(労働新聞社)

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