1~2年前まではアメリカの世界的IT企業群「GAFA」と肩を並べるほど急成長をしていた「BATH(Baidu、Alibaba、Tencent、HUAWEI)」を筆頭とした中国の大手IT企業ですが、去年から今年にかけて急減速しています。GDP世界第2位の超大国「中国」を支える大手IT企業の「現状」、「急減速の理由」、「今後」についてみていきたいと思います。
2022年の中国大手IT企業のリストラ情報
ほぼ例外なく大手IT企業でリストラが加速しており、2022年下期以降も引き続きリストラを続ける企業が多いと言われています。
※大幅に採用を増やす大手IT企業はなし
BATH
企業名 |
内容 |
阿里巴巴(アリババ) |
最終的に全従業員の15%以上に相当する39,000人程度をリストラする可能性がある |
腾讯(テンセント) |
・テンセントは今年3月、既にクラウド・スマート産業事業で人員の15%をリストラ
・ゲーム事業部門が人員を10%リストラ
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百度(バイドゥ) |
ゲーム部門では300人以上をリストラ。ライブ配信業務は90%削除され、教育業務もリストラ |
その他中国大手IT企業
企業名 |
内容 |
滴滴(ディディ) |
全従業員の20%をリストラ |
字节跳动(バイトダンス) |
教育事業関連で3,000人以上をリストラ予定 |
出典:界面新聞 https://www.jiemian.com/article/6945519.html
出典:NETEASE https://www.163.com/dy/article/H2LV6P7U0519D4UH.html
中国のIT業界が減速している理由
法律の整備(独占禁止や個人情報保護)による影響
独占禁止
2021年2月7日に公布した「プラットフォーム経済における独占禁止ガイドライン」において、プラットフォーム企業の市場支配的地位の乱用を認定する上での審査基準などが具体的に示されました。
【独占禁止ガイドラインの明確化による影響】
- 独占禁止ガイドラインに違反したインターネットプラットフォーム大手の阿里巴巴(アリババ)は約182億元(日本円で約3,640億円)の罰金を受けました。
- 検索大手の百度(バイドゥ)、インターネットプラットフォーム大手の腾讯(テンセント)などを含む12社は50万元(日本円で約1,000万円)の罰金を受けました。
- 腾讯(テンセント)が音楽の独占的ライセンスを放棄しました。
→これまで中国の大企業が実施してきた市場の寡占化が安易にできなくなりました。
個人情報保護
2021年9月に「データセキュリティ法」、2021年11月に「個人情報保護法」が施行されました。
【法施行による影響】
- 中国の配車サービス大手の滴滴出行は80億元(日本円で約1,600億円)の罰金を受けました。
- EUのGDRP(EU域内の個人データ保護を規定)に似ており、世界一厳しいと言われています。その影響でインターネット広告の収益が減ると予想されています。
※EUでもGDRP制定後にインターネット広告の収益が減少しました。
→この法律に対応するために今までのスピードで、サービス開発・提供することが困難になりました。
出典:Baidu https://baijiahao.baidu.com/s?id=1721090547674817988&wfr=spider&for=pc
出典:SOHU.com http://news.sohu.com/a/500093430_120724467
コロナウィルスによる影響
根本的な要因ではないが、コロナウィルスによる影響は一時的にあった(これからもある可能性あり)と言われています。中国では初期段階でコロナウィルスの封じ込めに成功し、当初は大きな影響はありませんでした。ただし2022年4月から上海での2カ月間のロックダウンで物流や供給網が混乱し国内のネット通販事業を中心に大きな影響がありました。
※この影響で阿里巴巴(アリババ)の四半期ごとの対前年比の売り上げは、2014年にニューヨーク証券取引所に上場して以来初めて減少しました。
今後同規模のロックダウンが発生した場合は、再び影響があると言われています。
今後の中国のIT企業
これまで中国のIT企業は急激なスピードで成長してきました。生活のIT化は日本より進んでいると言われています。その急激なスピードを支えてきたのか、大企業による寡占化とセキュリティの緩さと言われています。しかし今回お話ししたように、中国IT企業の急減速の要因の法整備によりこれまでと同じスピードでの成長は難しいと考えられます。
今後は中国のIT企業はより、「海外へのサービス展開」や「IT化の余地がある企業向けのサービス強化」で生き残りを図ると予想します。引き続き、中国のIT企業の動向を注視していきます。