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労働時間の認定に係る質疑応答と参考事例集

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2021年07月14日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

働き方改革を進めるに当たり労働時間管理は重要なポイントですが、本年3月30日に厚生労働省労働基準局補償課長から各都道府県労働局労働基準部労災補償課長宛てに「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の活用について」として労働時間の認定に係る質疑応答や参考事例が通知されています。

労災補償にかかる労働時間の認定についてですが、今回はこの内容についてご紹介します。

労働時間の認定に係る質疑応答と参考事例集

Q1

所定始業時刻より前の時刻にタイムカードを打刻しているが、タイムカードを打刻した時刻から労働時間に該当するか?

A1
タイムカード等に記録されている時刻は、そのものが必ずしも被災労働者が労働した時間であるとは限らないことから、所定始業時刻より前の時間帯に、被災労働者が使用者から労働することを義務付けられ、又は余儀なくされて労働していたのか検討し、労働時間に該当するか判断すること。また、使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(例えば、着用を義務付けられた所定の服装への着替え、清掃、朝礼等)を事業場内において行った時間は、労働時間に該当すること。

Q2

自己申告をした終業時刻からかい離した時刻に事業場を退社した記録があるが、どちらの時間を終業時刻と評価すればよいか?

A2
労働時間管理に自己申告制を採用し、実際に労働した時間よりも過少に労働時間を申告している場合やタイムカード等を打刻した後に継続して労働している場合、労働時間を全く把握していない場合等使用者が適正に労働時間を管理していなかったため、被災労働者の実際の労働時間が適正に把握されていない場合があるが、このような場合にも、被災労働者の労働時間を可能な限り適切に把握し、評価する必要がある。また、使用者の指示により、業務終了後の業務により関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間は、労働時間に該当すること。

Q3

いわゆる手待時間は労働時間に該当するか?

A3
使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等をしている時間(いわゆる「手待時間」)は労働時間に該当する。

手待時間の例として、次のようなものがある。

  • 休憩中の当番休憩中に電話や来客があった場合には、これに対応して適宜処理することが要求されているような場合、労働から離れることを保障されているとはいえないことから、仮に電話や来客がなかったとしても労働時間に該当する。
  • 施設等の警備員休憩中であっても、十分な交代要員が確保されていない等により非常事態が発生した場合に即時に対応することが求められ、実際に休憩中に非常事態等に対応することがあるような労働から解放されているとはいえない時間については、労働時間に該当する。
  • トラック運転手の荷待ち時間等荷積み、荷下ろし時間について、具体的な指示や連絡がいつ来るかわからないまま待機している場合や車列で順番待ちを行わなければならない場合等労働から解放されているといえない時間は労働時間に該当すること。

したがって、脳・心臓疾患事案においても、手待時間は労働時間であることを前提として、業務の過重性を適切に評価すること。ただし、その際、仮眠時間や宿直勤務中の時間など、業務による過重性がほとんどないような態様についてはこの限りではない。また、精神障害事案において、手待時間が多い等により労働密度が特に低い場合には、心理的負荷の評価に当たり考慮する必要があることに留意すること。なお、給付基礎日額の算定に当たっては、上記のような場合であっても、当該手待時間は労働時間から除外しないこと。

Q4

移動時間は労働時間に該当するか?

A4
移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものであること。この基本的な考え方により、所定労働時間内に業務上必要な移動を行った時間については、一般的には、労働時間に該当すると考えられるが、所定労働時間外であっても、自ら乗用車を運転して移動する場合、移動時間中にパソコンで資料作成を行う場合、車中の物品の監視を命じられた出張(※)の場合、物品を運搬すること自体を目的とした出張の場合等であって、これらの労働者の行為が使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされていたものであれば、労働時間として取り扱うことが妥当であり、労働時間に該当するか否かを、実態に応じて個別に適切に判断すること。

なお、出張や事業場外の移動時間が労働時間に該当しない場合であっても、脳・心臓疾患の請求事案に当たっては、移動時間及び移動時間中の状況の観点等から、労働時間以外の負荷要因である「出張の多い業務」としての評価を十分に検討すること。

※出張とは、一般的に、使用者の指揮命令により、特定の用務を果たすために通常の勤務地を離れて用務地へ赴き、用務を果たして戻るまでの一連の過程をいう。

おわりに

紙面の都合上紹介を省きますが、本通達には行政として会社を調査する上での注意点と裁判例の記載もあります。全文で193ページにもおよぶものですが、行政の着眼点として参考となりますので、お時間のあるときにご一読いただいてはいかがでしょうか。

参照文献等 : 基補発0330第1号

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