中国では毎年3月に「全人代」が実施されますが、皆様はどんな集会か、何が決まるかご存知でしょうか。日本では全人代のニュースの中でGDPの目標がよく取り上げられておりますが、結局何なのか?今更聞けないという方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は全人代についてご紹介していきたいと思います。
全人代とは?
全人代は略称で、正しくは「全国人民代表大会」と言います。日本人が「大会」と聞くとスポーツなどの競技を思い浮かべると思いますが、実は日本の国会に相当する国家権力の最高機関です。毎年1回、3月頃に北京で開催されますが、「中国人民政治協商会議」(全国政協)と同時期に開かれていることから、全人代と全国政協は「両会」と呼ばれています。ちなみに日本では「全人代」と略していますが、中国では「全国人大(Quánguó Réndà))または「人大(Réndà)」と呼ばれています。
大枠を理解していただくために、概要などの基礎情報をまとめてご紹介します。
参照:中国政府网より「十三届全国人大四次会议开幕会_2021两会直播」
3つの役割
全人代には大きく分けると3つの役割があります。
- 憲法の制定・改正の実施。
- 各省から代表者が集まり、国主席や首相などの主要ポストの決定。
- 政治・経済・社会など各分野の政策運営方針を審議し、予算案の承認。
概要
設立:1954年に憲法で制定
開催時期:毎年3月5日頃から開始 ※開催時期は憲法で定められていない。
期間:10日間~2週間会議を実施
期数:5年を1期とし、中国共産党大会の翌年に期が改まる。
※2021年は第13期の第4年度
人民代表:全体約3,000人。中央政権・常務委員会約200人
代表任期:5年
どうやって代表が決まる?
人民代表の選出方法は、直接選挙と間接選挙の組み合わせにより実施されています。各少数民族はいずれも代表が一定数選出されます。
大行政単位(①国家/②省・直轄市/③大きな市):間接選挙
※一つ下のレベルの人民代表大会が、一つ上の人民代表大会の代表を選出。
小行政単位((④小さな市/⑤郷・鎮):人民直接選挙
参照:中国政府网より 全人代の会議風景
何が決まる?
中華人民共和国憲法第62条・第63条で、主に下記の権限が決まっています。
- 憲法改正
- 国家予算決定
- 国家主席や国務院総理(首相)、最高人民法院院長などの選出および
- 国民経済・社会発展計画、ならびに計画執行状況の報告、承認
- 省・自治区・直轄市の設置の承認 など
過去の全人代では何が決まった?
ここからは具体的に過去の全人代にて何が決まったのか?大きく取り上げられていた事例をご紹介していきたいと思います。
憲法改正
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国家主席の任期撤廃
従来の憲法には国のトップ国家主席は1期5年の任期で、「2期を超えて連続して就くことができない」という規定がありましたが、2018年これを撤廃しました。
国民経済・社会発展計画、ならびに計画執行状況の報告、承認
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「中国製造2025」の提出
2025年までに世界トップレベルの製造大国を目指す国の行動計画で、李克强首相が「中国製造2025」の計画について2015年3月の全人代で最初に提出しました。※実際には同年5月に「中国製造2025」の正式承認が下りています。
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「双循環」の定義
国内と国際の2つの柱を相互に促進する経済発展の方針で、2021年3月の全人代で「第14次五ヶ年計画」と「2035年の長期目標の概要」にて定義されています。
省・自治区・直轄市の設置の承認
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海南省の設立
1988年、全国人民代表大会は海南省の設立に関する決定を可決し、海南省の設立を承認しました。(広東省海南行政区→海南省)
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直轄市・重慶市の設立
1997年3月24日、第8回全国人民代表大会の第5回大会では、中央政府直下の直轄市・重慶市の設立に関する国務院の提案を検討し、設立を承認しました。(四川省重慶市・万県市・涪陵市・黔江地区→重慶市)
全人代では、ご紹介をしてきたような中国における重要な政治的決定が行われることから、重要な会議として位置づけられています。現地で特に一番注目している点は、自社の業界に対して影響が出る新しい政策あるか?という部分です。中国の政策は他の国と比べてもスピードと実行力があり、また中国は全世界的にも市場として魅力が出てきているため、近年より多くの人に注目されています。
中国のスピードに乗り遅れないよう、これからも引き続き情報収集をしていきたいと思います。