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テレワークガイドラインが改定されました

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2021年04月28日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

新型コロナウイルスの感染拡大から、一気に普及が進んだテレワーク。導入した会社は、労働時間管理や手当の支払いなど手探りで対応しているのが実情です。令和3年3月25日にテレワークに関するガイドラインが改定されました。

以下に特に労働時間に関する点で重要と思われる箇所につき紹介いたします。

改定ガイドラインの主なポイント(労働時間編)

(1)労働時間の柔軟な取り扱い

  • 労基法上の全ての労働時間制度でテレワークが実施可能である。このため、現状の労働時間制度を維持したまま、テレワークを行える。一方で、テレワークを実施しやすくするために労働時間制度を変更する場合には、各々の制度の導入要件に合わせて変更することが可能である。
  • 必ずしも一律の時間に労働する必要がないときは、始業及び終業の時刻や所定労働時間につきテレワークを行う労働者ごとに決定することも考えられる。
  • フレックスタイム制は、労働者が始業及び終業の時刻を決定することができる制度であり、テレワークになじみやすい。
  • 事業場外みなし労働時間制により、テレワークにおいて一定程度自由な働き方をする労働者にとって、柔軟にテレワークを行うことが可能となる。

※テレワークにおいて、以下①②のいずれも満たす場合には、事業場外みなし労働時間制を適用することができる。(⇒は各々の条件を満たす例示)

①「情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと」
⇒勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合
⇒勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合
⇒会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、又は折り返しのタイミングについて労働者において判断できる場合

②「随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと」
⇒使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、1日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合

(2)テレワークにおける労働時間管理の把握

  • 労働時間の管理については、本来のオフィス以外の場所で行われるため使用者による現認ができないなど、労働時間の把握に工夫が必要となる一方で、情報通信技術を活用する等によって、労務管理を円滑に行うことも可能となる。
  • 労働時間の把握については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を踏まえ、次の方法によることが考えられる。
    • パソコンの使用時間の記録、サテライトオフィスへの入退場の記録等の客観的な記録を基礎として、始業及び終業の時刻を確認すること
    • 労働者の自己申告により把握すること

(3)労働時間制度ごとの留意点

テレワークの場合においても、労働時間の把握に関して、次のような点に留意することが必要である。

  • フレックスタイム制が適用される場合には、使用者は労働者の労働時間については、特に適切に把握すること
  • 事業場外みなし労働時間制が適用される場合には、必要に応じて、実態に合ったみなし時間となっているか労使で確認し、使用者はその結果に応じて業務量等を見直すこと
  • 裁量労働制が適用される場合には、必要に応じて、業務量が過大又は期限の設定が不適切で労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われていないか、みなし時間と当該業務の遂行に必要とされる時間とに乖離がないか等について労使で確認し、使用者はその結果に応じて業務量等を見直すこと

(4)テレワークに特有の事象の取扱い

《中抜け時間》

  • テレワークに際しては、一定程度労働者が業務から離れる時間が生じることが考えられる。このような中抜け時間については、労基法上、使用者は把握しても、把握せずに始業及び終業の時刻のみを把握しても、いずれでもよい。
  • 中抜け時間を把握する場合、その方法として、例えば一日の終業時に、労働者から報告させることが考えられる。

《勤務時間の一部についてテレワークを行う際の移動時間》

  • 勤務時間の一部についてテレワークを行う場合の就業場所間の移動時間について、労働者による自由利用が保障されている時間については、 休憩時間として取り扱うことが考えられる。
  • 一方で、テレワーク中の労働者に対して、使用者が具体的な業務のために急 きょオフィスへの出勤を求めた場合など、使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じ、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は、労働時間に該当する。

《休憩時間の取扱い》

  • テレワークを行う労働者について、労使協定により、一斉付与の原則を適用除外とすることが可能である。

《時間外・休日労働の労働時間管理》

  • テレワークの場合においても時間外・休日労働をさせる場合には、36協定の締結、届出や割増賃金の支払が必要となる。

《長時間労働対策》

  • テレワークについては、業務の効率化に伴い、時間外労働の削減につながるというメリットが期待される一方で、労働者が使用者と離れた場所で勤務をするため相対的に使用者の管理の程度が弱くなる等のおそれがあることに留意する必要がある。
  • このような点に鑑み長時間労働による健康障害防止を図ることや、労働者のワークライフバランスの確保に配慮することが求められている。
  • テレワークにおける長時間労働等を防ぐ手法としては、以下のような手法が考えられる。
    • メール送信の抑制(制限)ルールの設定
    • サーバー等のシステムへのアクセス制限の設定
    • 時間外、深夜、休日労働についての手続きの見直しと運用の厳格化
    • 長時間労働等を行う者への注意喚起 等

おわりに

紙面の都合上、今回は労働時間に限って紹介しましたが、重要なのは「労使で十分に話し合ってルールを決定すること。」とそのルールを対象労働者に周知をして運用することです。もちろんルールはより良いものに随時改定されるべきもとだと考えます。

その他の内容については、以下URLから「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」をご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/000759469.pdf

参照文献等 : 厚生労働省HP

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