皆様は中国の映画を見たことがありますか?中国が経済的に発展していることはご存知だと思いますが、エンタメ業界でも成長をしております。今回は世界最大規模になっている中国の映画市場について、どんな発展を遂げているのかご紹介をしてまいります。
中国映画について
中国初の映画と言われているのは1905年に制作された京劇映画「定軍山」で、実はすでに100年以上の歴史があります。中国伝統的な京劇から始まり、中国武術を使った「カンフー映画」など、中国映画を発展させていきました。中国における有名なジャンルや日本との繋がりについて、ご紹介いたします。
やはりカンフー映画が有名?!
中国映画が国際的に注目を集め始めたのがカンフー映画です。「カンフー映画(功夫片gōngfūpiàn)」は、中国拳法およびカンフーを主体としたアクション映画で、俳優の身体能力を最大限に生かした肉体技が繰り出される格闘シーンが特徴的です。
1970年代に活躍したブルース・リーが代表的ですが、最初に米ハリウッドの映画会社と共同制作したことでも有名です。また、オスカー賞を受賞した中国映画は2021年現在においても「卧虎藏龙」のカンフー映画のみであり、カンフー映画は重要な位置づけであることが言えます。
日本のアニメが人気!
中国でも海外映画が多く上映されており、近年でも全体放映数の30~40%近く(2020年は16%)が海外映画となっておりますが、日本映画の拡大は意外と最近です。2015年までの10年間で中国に放映された日本映画はわずか17本でしたが、2015年より増加傾向で2020年までの5年間で72本もの映画が公開されております。その多くはアニメ作品で実写よりも興行収入が高く、中国で公開された日本映画(※2021年3月時点日本単独作品)の歴代興行収入1~10位まですべて2015年以降のアニメ作品となっており、興行収入1位は日本でも2016年に大ヒットした「君の名は。」の5億7,685万元でした。中国ではACGN(アニメなどの二次元)が流行していることや、ハリウッド映画と比べて輸入費用が高くないことが、増加傾向の要因と言われております。
余談ですが、2021年春節にて興行収入が最も高い「唐人街探案3」は日本を舞台にした作品で、日本で有名な俳優、女優も多く出演しております。本編の約半分近くは日本語で話されているため、中国語が苦手な方にとっても楽しめる作品となっております。
【2020年までに中国で上映された日本映画の興行収入上位10作品 (単位:元)】
順位 |
作品名(日本語) |
カテゴリー |
中国上映日 |
興行収入 |
1 |
君の名は。 |
アニメ |
2016年 |
5億7,685万 |
2 |
STAND BY ME ドラえもん |
アニメ |
2015年 |
5億3,032万 |
3 |
千と千尋の神隠し |
アニメ |
2019年 |
4億8,832万 |
4 |
天気の子 |
アニメ |
2019年 |
2億8,849万 |
5 |
名探偵コナン 紺青の拳 |
アニメ |
2019年 |
2億3,205万 |
6 |
ドラえもん のび太の宝島 |
アニメ |
2018年 |
2億929万 |
7 |
ONE PIECE STAMPEDE |
アニメ |
2019年 |
2億503万 |
8 |
となりのトトロ |
アニメ |
2018年 |
1億7,373万 |
9 |
ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険 |
アニメ |
2017年 |
1億4,890万 |
10 |
名探偵コナン ゼロの執行人 |
アニメ |
2018年 |
1億2,740万 |
参照:艺恩HPより筆者が作成
世界最大級の興行収入
中国の興行収入は年々増加傾向です。2020年はコロナの影響もありますが、アメリカの2020年の興行収入21億米ドル(約136億元)を抜き、中国が201億元(約31億米ドル)で世界1位となりました。コロナ前後の状況を見ながら成長過程をご紹介いたします。
コロナ前の成長過程
興行収入の統計データが確認できている中では、2011年131億元からコロナ前の2019年641億元までで約4.9倍に増加しています。近年の成長は10%未満と鈍化している状況ですが、年平均成長率は21.95%と急速に伸ばしております。対して、アメリカの興行収入はコロナ前の通常時2019年度時点で-4.8%のマイナス成長であったことを考えると、逆転するのは時間の問題だったかもしれません。それだけ中国がエンタメ業界としても、市場として魅力のある国に変化していることがわかります。
なお、映画チケット価格は日本より比較的安く、近年は増加傾向ではありますが平均チケット価格は約半分(2019年時点平均チケット価格中国:37元/日本:1,340円※約84元)です。直近の春節期間は48.9元でしたが、それでも日本よりも安いため、価格が上昇すると市場規模が大きくなるかもしれません。
参照:中商情报网HPより
参考:猫眼专业より筆者が作成
コロナ後の影響について
日本ではコロナの影響で、外出自粛による全国的な営業休止や数々の映画公開延期など、2020年の映画興行収入が1,432億9,000万円で成長率-45.14%と大きく落ち込んでいたましたが、実は中国のほうが大きく影響を受けております。
興行収入だけで見ると204億1,700万元(約3,266億7,200万円)で、半分以下の成長率-68.33%に落ち込んでいます。一番大きな要因としては、コロナ対策として2020年1月23日から7月20日まで、営業停止期間が半年近く続いたところです。その中でも、いち早く回復したことも影響し2020年においては世界最大の興行収入となりました。
2021年の春節は興行収入が最高益に転じます。理由としては政府からの呼びかけによる地元に戻らない人が増加したため、春節期間中の観光と旅行は減少し、映画を見ることが費用対効果の高い消費者の選択になった点も増加の要因と言われております。2021年は約2ヶ月しか経過していない3月9日時点で、興行収入164億元と前年の約8割に到達していることから、2021年は回復傾向になることが予想されます。
参照:一般社団法人日本映画製作者連盟HPより
経済だけでなくエンタメとしても急成長をしている中国ですが、世界トップレベルの市場として、魅力が拡大していることが伺えます。エンタメは発展していないだろうと勝手な想像をしていた未知な私にとって、恥ずかしい結果となりました。コロナ禍においては特に変化が激しくなることが伺えますので、感覚だけでなく数字の変化をしっかりキャッチし、今後も中国の動向についてチェックしてまいります。