高年齢者就業確保措置への対応
高年齢者就業確保措置を講ずる場合、上記❶~❸は65歳を70歳と読み替えれば比較的導入しやすいものです。❹及び❺については今回新設された創業支援等措置であり雇用によらないものですが、その運用に当たっては事前に計画を作成し、当該計画について過半数労働組合又は過半数代表労働者の同意を得て、当該計画を周知する必要があります。このことは「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」(以下「指針」という。下記URL参照。)により示されています。
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H201102L0040.pdf
高年齢者就業確保措置を講ずる上でどの措置を講ずるかについては労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置を講ずることが望ましいとも指針にあります。以下に、会社として対応しやすい❶~❸について述べたいと思います。
70歳までの定年引上げ及び定年の廃止
定年年齢については高年齢者雇用安定法第8条により、原則として満60歳が下限と定められています。❶又は❷の措置は、努力義務である70歳まで定年年齢を引き上げてしまうか、そもそも定年制度を廃止してしまうという内容です。このケースでは、対象者が無期契約労働者全員となり選別することができないということが特徴です。
加えて、定年引上げや廃止の際に課題としてよく耳にするのは、退職金の支払いです。一般的に退職金制度は60歳定年を基礎として設計されていることが多く、定年が延びる(無くなる)ことにより積立期間を延長することは会社にとって人件費負担増になります。また、(定年)退職前に退職金を支払うと給与所得として税金計算をする必要があり、社員に不利益となります。結果的に実際の退職時まで支払いを留保しているケースが多いようです。
70歳までの継続雇用制度(再雇用制度)の導入
65歳以降は有期契約労働者として継続雇用する制度です。定年引上げや廃止と違い、対象となる高年齢者の基準を設けることが可能です。義務である高年齢者雇用確保措置では、原則として希望者全員を65歳まで雇用する必要がありますが、改正法が努力義務規定であるため基準を定めることが可能となります。
この対象者の基準の策定に当たっては、指針により「労使間で十分に協議の上」と原則として労使に委ねられています。但し、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨や、他の労働関係法令に反する又は公序良俗に反するものは認められません。単に「継続雇用の有無については会社が決定する。」ではNGということです。
対して以下のような、客観的かつ合理的であり社会通念上相当であると認められる理由を就業規則等に定めることにより、一定の高年齢者を継続雇用しないことができます。
- 心身の故障のため業務に堪えられないと認められること
- 勤務(業務)状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責(業務)を果しえないこと
加えて改正法により、グループ会社以外の事業主が引き続いて雇用する制度が認められました。この場合は当該事業主間で「高年齢者を継続して雇用することを約する契約」を締結した上で運用する必要があります。
このグループ会社以外の事業主が継続する雇用する場合の留意点としては、双方の会社が都道府県労働局長の認定を受けていても、同一の事業主との有期契約が5年を経過すると発生する無期転換申込権が発生するということです。グループ会社での継続雇用では発生しません。