深圳の経済
深圳の成長速度は急激で「深圳速度(深圳スピード)」と呼ばれています。深圳GDPは香港の1%未満であった1980年2億7000万元から、40年で2019年2兆6,900億元へ1.4万倍に急速に発展しております。どんな発展をしていたのか、要因を中心にご紹介をしていきます。
成長の要因:ポイントは香港と既存産業がないこと
1980年に中国で初めて設定された経済特区とは、当初海外企業向けの税制優遇策で、外資企業の誘致を行った経済政策です。深圳のほかに3都市(珠海、汕頭、厦門)が指定されていましたが、深圳が特に急速発展した理由をご紹介していきます。
一つは香港に隣接している立地の点です。当時から世界的にも金融・貿易センターとして有名な香港が資金を投入し、深圳に工場が建設されました。深圳の土地と労働を使って外資企業が生産する方式の「三来一补」で、多くの外資系加工貿易企業が参入されたことで、人口と規模が急速に発展していきました。
もう一つは既存産業がないことです。もともと農村地域が半数を占める都市であった深圳は産業や大学もなく「既得権益」がないため、全国で才能、技術がある人を深圳に集め続けても弊害が多くありません。そのため、政府からの大胆な政策や外資企業の流入にも、柔軟に対応しやすい環境であったことも重要な要因だと伺えます。
ハイテク産業:思い切った政策転換
加工貿易企業などの技術的内容が少ない労働集約型産業によって発展しておりましたが、世界技術開発について熟知した李子彬氏が1995年深圳市長就任したことにより、ハイテク産業への政策に大きく舵を切ったことも今日まで成長している一つの要因です。
深圳には「ハイテク産業」「金融業」「現代物流業」「文化・創造産業」の四大支柱産業があり、2019年ではGDPの約65%を占め、その中でもハイテク産業の付加価値は9.320億8,500万元でGDPの約34%を占めています。特許申請件数は中国全体30%を占めており、その数17,500件にも及びます。深圳に本社がある企業は、Huawei、テンセント、BYD、ZTE、DJIなど世界的に有名な企業が多く、ハイテク産業だけで約17,000社あり企業数としても多いことがわかります。
【深圳市主要産業】
主要産業・付加価値 | 2019年度 | 前年比 |
---|---|---|
工業 | 9,587億元 | 4.1%↑ |
金融業 | 3,667億元 | 9.4%↑ |
卸売・小売業 | 2,536億元 | 4%↑ |
宿泊業、飲食サービス業 | 4,477億元 | 7.6%↑ |
不動産 | 2,284億元 | 5.3%↑ |
交通運輸・郵便業 | 765億元 | 3.7%↑ |
【深圳市基礎情報まとめ】
各項目 | 2019年度 | 前年比 |
---|---|---|
面積 | 1,997.47㎢ | ― |
人口 | 1,343.88万人 | 3.16%↑ |
人口密度 | 6,484人/㎢ | ― |
GDP | 2兆6,927億元 | 6.6%↑ |
第一次産業GDP割合 | 0.09% | ― |
第二次産業GDP割合 | 38.98% | 0.6%↓ |
第三次産業GDP割合 | 60.93% | 0.6%↑ |
一人当たりGDP | 20万3,489元/人 | 2.9%↑ |
一人当たり可処分所得 | 6万2,522元 | 8.7%↑ |
社会消費品小売総額 | 9,144億元 | 7.3%↑ |
輸出額 | 24,212,399万米ドル | 1.6%↓ |
輸入額 | 18,935,168万米ドル | 9.6%↓ |
参照:深圳市人民政府のHPより
世界最速の発展を遂げている深圳ですが、私が気になった点は、成功要因の一つが「既得権益がない」という理由と、発展途上の中でハイテク産業への方向転換した点です。国の政策に関わらず、企業や個人においても新しいことをする上で、頭を悩ませるのが「既得権益」だと思います。過去の栄光にしがみついてしまうと、新しい成功にはつながらず、取り残されてしまう可能性すらあるのではないかと感じました。私自身も過去の栄光にしがみつかず、成功している時にこそ、先を見据えて行動することを意識していきたいと思います。
深圳は速報で2020年GDP成長率は3.1%であり、中国全体ではGDP2.3%の伸びであったことから、成長スピードは現在においても他の中国国内都市と比べて高いことは間違いありません。今後の動向もチェックしていきましょう。
※深圳の数値情報は下記参照。
深圳市人民政府
※日本の情報は下記参照。
総務省統計局