大型帰省ラッシュ・春運(春运chūn yùn)について
春節には大きな問題も抱えています。それが大型帰省ラッシュ問題「春運」です。日本でも年末やお盆に帰省ラッシュが起こりますが、日本と比べ中国の人口は10倍近くあるため、問題が大規模となっています。中国伝統的な春節の問題「春運」についても、ご紹介をいたします。
弊社スタッフ撮影:2018年・春節(豫園)
春運はなぜ起こる?
「春運」という用語は、1980年に「人民日報」に最初に登場しました。春節を中心とした約40日が対象となります。2021年では1月28日に始まり、3月8日までの40日間が対象の期間です。改革開放以来、人々の移動に対する制限が緩和され、多くの人々が故郷を離れて仕事や勉強をすることを選択するようになりました。そして都心で働いている多くの人は春節のタイミングで帰省し、家族と再会することが習慣となっております。また、日本と比べ祝日が少なく、春節と国慶節の年に2回、大型連休がある関係も帰省が集中する一つの要因のようです。
世界人口約4割の規模が移動?!
通常稼働時の2019年では、全国旅客発送量が29.8億人の規模で、全世界人口約78億人の約4割に相当する人数が移動していることになります。「春運」と呼ばれ始めた当初の1980年は全国旅客発送量が約1億人で、約10年で10億人増加するスピードで拡大をしておりました。しかし、過去最高に多かった年は2014年の36.3億人で、近年は30億人前後に落ち着いています。
近年の旅客発送量の落ち着いている要因として、2つ考えられます。一つは労働人口(16歳から59歳まで)の減少です。2011年から2018年にかけて7年連続で減少し、7年間で約5,000万人の労働人口が減少したと言われています。もう一つは各地方都市の発展(城镇化)です。春運と呼ばれるようになった1980年頃は都市化率(城镇化率:都市部に住む人口の割合)が20%だったのに対し、現在では地方都市が発達したことで60%に上昇をしております。その結果、地元や近場に就職をする人が増加しました。上記の要因から出稼ぎの人口が減少していることが考え、移動の規模が緩和され、現在では「春運」が過去のものとなるのではと言われていたりします。
参照:中华人民共和国国家发展和改革委员会の報告より筆者が作成
※旅客発送量については、1人が春運期間中に使った交通機関の数をカウントするため、人口よりも多い数字となっています。また、14年以降の数字については、計算方式が変わり、公共バス(長距離バス以外)とタクシーを除いたため人数が減っております。
春運の主な移動手段は「長距離バス」
春運で活用される交通機関は「長距離バスなどの道路輸送」で全体の約8割を占めます。次に鉄道が多く全体の約1割、その次が空路、水路の順となっております。最近では、鉄道と空路の割合が急増しており、道路輸送を利用しているのは短中距離が割合としては多く、長距離輸送は減っている傾向があります。理由しては、個人の生活水準の増加により鉄道や航空を利用できるようになったことや、交通機関の路線・発車回数の増加が活用されていることが考えられます。
交通チケット入手難や交通渋滞などの日本でもよく見かける問題も発生していますが、交通網の発達や、身分証と交通チケットを連動させるなどの対策によって、徐々に緩和されてきております。
2020年のコロナ対策は?
2020年度はコロナウイルスの影響で全国旅客輸送人数は前年比50.3%減の14.8億人となりました。春節期間が延長されたことや、企業、学校など各機関の再開の遅れが影響し、乗客のピーク分散されたことが特徴です。コロナ対策としては、感染者が多い地域の都市封鎖や、移動制限、中国国内移動でも隔離実施、交通機関でのマスク着用義務化などの各地方政府が独自で政策を打ち立てていました。2020年の武漢のロックダウンについては、以前記事にしていますので、ご参考ください。
参照:中国式ロックダウン・「封城」について 2020/04/30
2021年も帰省自粛の呼びかけや、健康QRコードの各地域共通化、中高リスク地域からの移動の隔離実施など、2021年1月現時点でも多くの対策が発表されていますので、政策の情報収集は欠かさないようにしましょう。