労働時間管理について
労基法第38条第1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されています。労働基準局長通達(S25.5.14基発第769号)では、この「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合を含むとしています。
これにより、副業・兼業している場合、各々の事業主が労働者の申告等によって、会社(事業場)における労働時間と他の会社における労働時間とを通算して管理する必要があります。
労働時間を通算し時間外労働となる部分には割増賃金の支払いを要しますが、今までは会社Aと会社Bの労働時間を、労働者の申告により各々把握して合算をし、時間外労働となる時間がある場合には、AまたはBのうち当該労働者との労働契約を時間的に後から締結した会社が割増賃金を支払うことになっていました。
上記方法に関しては、双方の会社に手続き上の負担が発生することから、労働時間の申告等や通算管理における労使双方の手続上の負担を軽減し、法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)での対応が可能となりました。
管理モデルは、副業・兼業の開始前に、当該副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた会社Aの事業場における法定外労働時間と、時間的に後から労働契約を締結した会社Bの事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)とを合計した時間数が単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内において、各々の会社の労働時間の上限をそれぞれ設定し、各々がそれぞれその範囲内で労働させることができるというものです。
また、 会社は自らの事業場における法定外労働時間の労働について、会社Bも自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ割増賃金を支払えば足ります。これにより会社A及びBは、副業・兼業の開始後においては各々あらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働されば、他の使用者の事業場における実労働時間を把握する必要なく労基法を遵守することが可能となりました。
なお、労働時間を通算する場合で、労働者本人の申告により、時間外労働をした事実を会社が知らなかったときは、割増賃金を支払わなかった場合でも罰せられないことになっているようです。