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新型コロナ、感染者等への対応

column

2020年08月12日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

世の中は新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という。)一色です。本稿執筆時点においては、東京都では367人もの過去最大級の感染者数の発表があり、小池知事が、酒類を提供する飲食店とカラオケ店の営業を午後10時までに短縮するよう要請(強制力はない)するとの報道が流れました。

感染者の内訳をみると、家庭内を含め市中感染が進んでいる様子がうかがえ、企業としても従業員の健康管理にはますます気を使う必要があります。

今回は、社内で新型コロナに感染した疑いがある社員が出た場合、また残念にも感染者が出た場合の会社の対応につき、その一例をご紹介します。

感染の疑いがある社員が出た!

発熱に喉の痛み、咳症状がある社員には、自主的に会社をお休みしていただきます。この場合は年次有給休暇を取得してもらうか、有休のない者は病欠扱いとします。発熱などの症状があることだけを理由として社員に自宅待機命令等の措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は休業手当の支払いを要します。

社員本人には、「帰国者・接触者相談センター」や医師会、診療所等に対して病状を報告してもらい、その後の対応を相談していただきます。対して会社は、感染者(感染の疑いがある者を含む)の対応をする部署や担当者を事前に決定しておき、当該社員が発症したと思われる日の2日前から現在までの間の行動を、無理のない範囲で調査・確認します。当該社員の陽性が確認された場合に、直ちに濃厚接触者に対応を求めることができます。

なお、濃厚接触者とは国立感染症研究所が以下の通り定義しています。患者(確定例)の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者を指します。なお、感染可能期間とは、新型コロナを疑う症状を呈した2日前から隔離開始までの期間をいいます。

  • 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等)があった者
  • 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護もしくは介護していた者
  • 患者(確定例)の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
  • その他、手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策無しで、患者(確定例)と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断することになっています。)

この行動の調査・確認については、当該社員に対し、感染者と決めつけるような言動を控え、また、社員に不安を与えないように注意する必要があります。

感染者が出た!

検査により陽性反応が出た場合、当該社員には保健所や医師の指示に従っていただき、症状が消え、完全に感染リスクがなくなるまで休業してもらいます。この休業は都道府県知事が行う就業制限によるものであるため、会社には賃金の支払い義務はありません。健康保険に加入している社員には傷病手当金が支給されます。また感染が業務または通勤に起因する場合は、労災保険が適用されます。

新型コロナにより事業そのものの休業を余儀なくされた場合に、社員を休業させるときには、労使がよく話し合って社員の不利益を回避するように努力することが大切です。令和2年9月までは雇用調整助成金の新型コロナ特例措置が適用されますので、こちらを活用して休業補償することをお勧めします。

前述の調査・確認により、濃厚接触者と判断された社員に関しては、その者に症状があるか否かにかかわらず、感染した社員と接触した最後の日から14日間の自宅待機(就業禁止)命令を出すことを検討すべきです。この措置により、更なる感染拡大防止に繋げることができるからです。

この濃厚接触者として自宅待機させる者に対する賃金支払いの考え方は、次のとおりです。

①行政からの要請や指示による休業の場合は、不可抗力のため、給与の支払い義務はない。加えて使用者の責めに帰すべき休業にも該当しないため、休業手当の支払い義務もない。
②新型コロナの感染が疑われる症状(発熱、咳、喉の痛み、嗅覚・味覚障害等)がある社員は、労務の提供ができる健康状態にないと考えて賃金の支払い義務はありません。ただし、労使関係を良好に保つために、雇用調整助成金を活用することの検討については前述の通りです。
③症状が出てない社員に対して、更なる感染予防のために自宅待機(就業禁止)を命ずる場合は、休業手当を支払う義務があります。

職場復帰はいつから可能?

感染者の職場復帰の時期の目安としては、「①発症から14日以上経過していること。②症状が完全に消えてからすくなくとも72時間を経過していること。」に照らして判断することになります。

なお職場復帰する社員から会社への何らかの証明書の提出について厚労省は、感染者は「医療保健関係者による健康状態の確認を経て、入院・宿泊療養・自宅療養を終えるものであるため、療養終了後に勤務等を再開するに当たって、職場等に、陰性証明を提出する必要はありません」と言っています。

その他

上記に加えて会社は、新型コロナ感染や、新型コロナに関連して社員が休暇を取得したこと等、新型コロナに関連したいじめ・嫌がらせが行われることがないように、社内周知・社員啓発、適切な相談対応等の必要な対応を徹底する必要があります。

参照文献等 :厚労省HP 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)

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