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ハイテク時代に露店?中国「屋台経済」事情

column

2020年07月29日

利墨(上海)商务信息咨询有限公司  逢坂 興昌

最近中国で「屋台経済(露店経済)」が一つの注目ワードになっていることを皆さんはご存知でしょうか。5Gや自動運転などハイテク産業が注目されている現代で、「屋台(露店)」がキーワードに出てくるとは、私は思ってもみませんでした。

なぜこのタイミングで注目されているのか?を中心に、中国の屋台経済についてご紹介をいたします。

屋台経済(地摊经济 Dìtān jīngjì)とは?

屋台経済とは、車やバイクなどを使って移動しながら、雑貨や食品などの物品販売を行っているもので、中国では1990年代に流行し、庶民の経済に活力をもたらしておりました。

しかし、近年の目覚ましい発展により「景観や衛生面の問題」などイメージが悪化したことや、流動的な経済形態であるため「紛争や問題が発生しやすい」という問題があったことから、規制が厳しくなり、徐々に街から屋台・露店が消えていった背景があります。

なぜ注目されているのか?

では、なぜその悪いイメージがあった「屋台・露店」が再び注目されるようになったのでしょうか。コロナウイルス後の「雇用機会の創出・失業解決策」という点で、再度国が経済政策の一つとして目を付けたことで、注目されるきっかけとなりました。現在では20以上の政策が立てられ全国各地方政府が積極的に対応しております。

  • 特徴
      <メリット>
    • 失業改善⇒働き口の増加→雇用回復→景気回復へ
    • 参入が容易⇒初期投資を安価で準備も短期間で対応可。失敗しても撤退コストも高くない。
    • 消費者の生活費節約⇒参入が容易のため価格・品質競争が激しく、ECサイトよりも比較的良い製品を安価で購入することができる。
      <デメリット>
    • 街の景観の悪化
    • 食品の安全衛生が懸念
    • 偽物商品流出の危険
    • →上記の点は、政府の規制によってコントロールされるが、厳しくしすぎると雇用の安定につながらない。屋台経済の優位性が損なわれないよう、どのように管理していくかがポイント。

何がどこで売られているのか?

何が売られているか?

携帯ケース、キッチン用品、飾り物(髪飾り、ブレスレットなど)、靴・傘の修理、お花、夜食(マーラータン、おでん、ミルクティーなど)、野菜、果物などがあります。屋台の売上高は100~800元/日、利益率は30~40%が一般的です。

どこで?

住宅地、観光地、ショッピングセンター、駅など、人の流れが比較的集中しているエリアに主に出店しており、特に一番多い場所は「居住地区の付近」と報告されています。

屋台を利用のユーザーの満足度は、「低価格」のほか、「買い物のしやすい距離・立地」が高いという結果が出ておりました。

実績と想定

四川省成都市では、屋台販売を活発化させるように、仮設屋台を約2万ヶ所設置するなど政策を打ち出したことで、「10万人以上の雇用が生まれた」と報告されています。

成都市人口約1,600万人から雇用創出した比率を出し、中国都市部(約8億5,000万人の都市永住者)に置き換えると、屋台経済が拡大されれば、「新規雇用約512万人」が想定できます。新しい雇用が一人当たり年収を3万元増加と仮定すると、「国民所得約1,500億元」増加できます。(2019年 GDP約0.15%相当)

日本でも屋台は小さいころからよく目にしますが、「イベント」の要素が強いイメージがあります。中国では「生活の一部」としても違和感なく捉えられているという点が、経済政策として考えられたポイントの一つではないかと推測ができます。少なくなりかけた屋台が、デジタルが発達した現在の環境と絡み合い、どこまで経済に影響を与えられるかも注目のポイントです。

参考:中国地摊经济数据分析

各大手企業の動き

1990年代の流行時と異なる点は、個人で屋台を展開しているだけではないところです。各大手企業が屋台経済の盛り上がりに目をつけ、各得意分野に特化した支援策を打ち立て、経済活性化活動をしております。

屋台とデジタルエコノミー?

百度(Baidu)

中国の検索サイト大手の百度は、消費者が屋台の場所を地図アプリ「Baidu Maps」で調べられるように、「運営場所の登録フローを簡素化させる」と発表しています。店舗の広告や、ユーザーレビューなどのマーケティング活動の機能を、無料で行えるよう支援しているため、消費者と屋台経営者が繋がりやすくなり、経済活性化に貢献をしております。

百度(Baidu)

参考:Baidu Maps(百度地图)

阿里巴巴(Alibaba)

各記事でもご紹介をしておりますアリババですが今回も登場いたします。アリババは、「屋台経営者向け卸専用ECサイト」を立ち上げ、直接メーカーと小売業者を繋ぎ、効率的かつ経済的な価格で提供できるよう支援しています。また、700億元の与信枠を出していることから、金融機能としても支援策を打ち出しております。

阿里巴巴(Alibaba)

参考:1688地摊市场(アリババ屋台卸売り専用ページ)

人気急上昇中の屋台カー!

五菱汽車集団

屋台販売に使えると五菱汽車集団の「移動販売車」がネットで人気となっています。普通車免許(C)でも運転ができるトラックであり、価格も約60,000元であるため、気軽に購入しやすいところも特徴です。香港証券取引所に上場する五菱の株価が6月3日に急上昇し、一時は上昇幅が120%を超えたことで話題となりました。また、6月3日の1日だけで前月5月の販売台数300台を超えたというぐらい急激に注文が殺到し、人気拡大していることがわかります。

五菱汽車集団

参考:柳州五菱汽车工业有限公司HP

「古い政策は使えない」という私の勝手な固定概念を打ち砕いてくれた内容でした。中国は新しいものばかり見て、最先端を進もうとしている印象でありましたが、活用できるものをしっかり見極め、経済政策につなげている点は、勢いだけで成長していない国であることを改めて実感いたしました。

中国で屋台を見かけた際には、「昔の戦略」と「現在の環境」を掛け合わせたものも「新しい戦略」となる可能性があるということを思い出していただきながら、お食事やショッピングを楽しんでいただけますと幸いです。

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