新型コロナウイルス感染症にかかる全国の緊急事態宣言が解除されました。各地で第2波を警戒しつつも、「withコロナ」、「新たな生活様式」などいろいろなスタイルも変わりつつあります。
もともと東京五輪を迎えるに当たり東京都が推奨していた、スムーズビズのなかのテレワーク、コロナ禍で一気に導入企業が増えました。テレワークに関するいくつかの調査結果を見ても、「感染が収束に向かってもテレワークを継続実施したい」という労働者が、概ね50%以上いるようでした。
感染症対策としてテレワークは有効ですが、会社としては労働時間管理等が難しいなど、デメリットととれることもあります。実施可能な会社がテレワークを運用するには、就業規則等にルールを定めておく必要があります。今回は、テレワーク規程*1(規定*2)の作成について紹介します。
テレワークの定義
そもそもテレワークという言葉は、「テレ(tele=離れたところで)」とworkがくっついた造語です。情報通信技術(ICT)を活用して、時間や場所を有効に活用できる働き方のことをいい、その種類は次のように区分されます。
- 在宅勤務 … オフィスに出勤せずに、自宅を就業場所とする勤務形態です。通勤の負担が軽減され、時間を有効に活用することができます。
- サテライトオフィス勤務 … 所属オフィス以外の事業場や遠隔勤務用施設を就業場所とする勤務形態です。職住近接の環境を確保することができます。
- モバイル勤務 … 移動中の車内やカフェなどを就業場所とする勤務形態です。様々な場所で効率的に業務を行うことにより、生産性が向上する効果があるといわれています。
規定しておくべき事項
テレワークに関する社内ルールは、就業規則に規定してもテレワーク規程として別規程を定めてもいずれでも良いです。曖昧にせずにしっかりとペーパーにしておきましょう。
次に、定めるべき項目について説明します。
- 目的 … 「テレワーク勤務に関して、必要な事項を定めたものである。」等、目的を定めます。
- テレワークの定義 … 前述の定義のうち、必要な勤務形態につき定めをします。
- 適用対象範囲 … テレワークの対象となる従業員の範囲や対象業務の範囲を定めます。合わせて、テレワークを認める条件を定めても良いです。逆に、適用除外者を定める場合もあります。
- 適用期間 … テレワークを適用する期間を定めます。「1回の申請につき●か月間とする。但し会社が認めた場合には当該期間を延長する。」のように、無期限としないことをお勧めします。
- 適用の解除 … 会社の命令によりテレワーク勤務を解除する条項を規定します。テレワーク勤務を阻害する要因が起こった場合等を想定します。
- 申請手続き … テレワークを希望する者の手続きを規定します。
- 服務規律 … 就業規則に定める遵守事項以外でテレワーク勤務に必要な服務に関する以下の事項等を規定します。
・機密情報、個人情報等の取り扱いについて
・職務に専念する義務について
・テレワークに使用する機器の取り扱いについて
・情報セキュリティ対策について ⇒ こちらに関しては、総務省が発出する
「テレワークセキュリティガイドライン」を参考にしてください。
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労働時間 … 労働時間管理をどのように行うかを規定します。
①実労働時間を管理して行う
②フレックスタイム制による
③事業場外みなし労働時間制とする
等を定めます。
①又は②による運用の場合は、始業・終業時刻の連絡方法なども指定します。なお、事業場外みなしを適用する場合には次の要件を満たす必要があります。
1. 業務が自宅又は社外で行われること。
2. パソコン等の情報通信機器により、会社の指示で常時通信可能な状態になっていないこと。(電子メール等により会社の指示に即応する義務がない状態のことをいいます。労働者が任意で機器の電源を入れている状態であり、かつその場を離れることができる状態は「常時通信可能」状態とはいいません。)
3. 業務が随時会社の具体的な指示に基づいて行われていないこと。
- 給与 … 給与については、基本的には変わりがないと思われますが、出勤しない日の通勤交通費の支給をどうするか、在宅勤務時にかかる費用を手当として支給する場合はその旨を規定します。
- 費用負担 … Wi-Fi等の通信回線利用料、電話通話料金、水道光熱費の負担などについて規定します。もちろん、パソコンやスマートフォンを貸与した場合とそうでない場合の規定内容は違ってきます。
- その他 … 使用機器に関する事項、連絡体制の構築に関する事項、労災事故に関する事項、教育訓練に関する事項、安全衛生に関する事項、規程の場合はその改廃に関する事項、施行年月日を規定します。
おわりに
テレワークは、適用可能な職種がある程度限定されます。また適用可能職種であっても、オフィスへの出勤を余儀なくされる時もあります。
また、毎日テレワークはあり得ないと考えます。経験豊富な中途採用者は別として新入社員にいきなりテレワークを適用することはできませんし、やはり、対面のコミュニケーションをとることは重要だと考えます。オンライン飲み会が開催されるほど、さみしい方も多いですしね。
まずはルールを決めて運用を始め、随時ルールを改善していきましょう。
参照文献等 :厚生労働省HP、日本テレワーク協会手引き。