新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という。)の猛威が止まらず、経済も大打撃を受けています。緊急事態宣言もいつまで続くことやら...。休業を要請されている店舗や事業場においては、家賃や従業員給与の負担が重くのしかかっています。このうち給与に代わる休業手当の補填が雇用調整助成金(以下、「雇調金」という。)です。たびたび特例措置が追加されて支給要綱が定まりませんが、助成金を早期に受給されたい方ばかりだと思いますので、雇調金の支給要件(4月30日現在のルール)と“まず何をしなければならないのか”等、雇調金申請の流れについてご紹介します。
休業手当の支払いについて
「使用者(会社)の責めに帰すべき事由による休業に対しては、平均賃金の6割の休業手当の支払いを要する。」と労基法に定めがあります。ただし、不可抗力による場合はこの限りではありません。
新型コロナの感染拡大防止のため、国や都道府県知事からの要請に応じて休業する場合は、この不可抗力に当たり休業手当の支払い義務がないのでは?との声が一部の事業主から聞こえてきました。
雇調金FAQの問42、「緊急事態宣言を受けて休業する場合は、休業手当を支払わなければならないか?」には「個別判断なので近くの労基署に問合せ下さい。」と明確な回答がなされておりませんが、加藤厚生労働大臣は、「指示(要請)により事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、労使がよく話し合って、休業中の手当の水準、休業日、休業時間の設定等について、労働者の不利益を回避する努力を願う。また、労基法上の休業手当の要否にかかわらず、雇調金が支払われるので、それをしっかり活用して欲しい。」と発言しています。
仮に不可抗力に該当し休業手当の支払い義務が会社になくとも、会社としては従業員の雇用を維持するため、休業手当の支払いがマストであると考えます。
雇調金の支給要件(ポイント)
雇調金の支給要件は次表の通りですが、①従来の要件、②本年1/24~7/23までの休業に対する特例、さらに③4/1~6/30までの緊急対応期間中の休業に対する特例に分かれておりますので、注意が必要です。特に表中の(2)、(5)に加え、休業協定(労使協定)に基づいた休業を実施していることと、労基法に定める額以上の休業手当を支払っていることがポイントとなります。
|
①特例措置以外の場合(通常) |
新型コロナウイルス感染症の特例 |
②「特例」 |
③「緊急対応期間の特例」(全国) |
「4/25公表拡充案」 |
支給要件 |
- 雇用保険適用事業所の事業主
ただし、事業所設置後1年以上の事業主であること
- 売上高は、直近3か月間の月平均値が前年同期に比べ10%以上減少している(「生産性要件」)
- 雇用保険被保険者数及び受入派遣労働者数について、直近3か月間の月平均値が前年同期に比べて、中小企業の場合は10%超かつ4人以上、中小企業以外の場合は5%超かつ6人以上増加していない(「雇用量要件」)
- 実施する休業等が労使協定に基づくものであること
- 対象労働者に係る休業等の実施日の延日数が、対象労働者に係る所定労働延日数の1/20(大企業の場合は1/15)以上であること(「休業規模要件」)
|
- 雇用保険適用事業所の事業主(事業所設置後1年未満の事業主も対象)
- 売上高は、前年同月(1か月)に比べて10%以上減少
- 雇用量要件は撤廃
- 同左
- 休業規模要件を中小1/40以上、大企業1/30以上に緩和
|
- 雇用保険適用事業所の事業主(事業所設置後1年未満の事業主も対象)+雇用保険適用事業所以外の事業主
- 売上高は、前年同月(1か月)に比べて5%以上減少
- 同左
- 同左
- 同左
- 自宅での教育訓練等が可能
- 半日教育訓練と半日就業が可能
|
拡充要件
A 解雇等を行っていない、かつ、賃金の60%を超えて休業手当を支払っていること
B Aのうち、新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき都道府県対策本部長が行う要請により、休業又は営業時間の短縮を求められた対象施設を運営していること、かつ、100%(又は8,330円以上)の休業手当を支払っていること |
*赤字は特例措置の内容。予定を含む。
まず何から始める?
雇調金申請までのイメージを掴んでいただくために、とても大まかにですが以下に説明します。
- まずは休業させること。一部休業を除き、決して労働させてはなりません。
※本来であれば休業計画提出の後に休業させますが、特例として先に休業していても良いです。
- 休業協定の内容を決定し、協定を締結してください。1)休業の実施予定時期。2)休業の時間数。3)休業の対象者。4)休業手当の算定基準。
- 就業規則、労働条件通知書(雇用契約書)、出勤簿(シフト表)、賃金台帳、直近の労働保険料確定申告書を用意してください。
- 休業等実施計画届等を提出します。
※例えば全日休業の場合は、計画届は1回のみの提出で可です。また6/30までは先に休業させ、事後に計画届を提出できます。
- 支給申請書、休業実績一覧表、助成額算定書を提出します。
※計画届、支給申請書は給与計算期間ごとに提出願います。
詳しくは、厚生労働省HP(以下URL)をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
おわりに
一部の新聞には「社労士が雇調金の受託に二の足を踏んでいるので、申請件数が伸びない。」と、我々社労士が助けを求める会社の声に耳を傾けないような記事が掲載されましたが、少なくとも私の知る社労士にはそのような者はいません。 前述のように日々変わる制度に追いついていけるよう研鑽に励み、コロナの感染リスクのなか、皆がんばってお困りの会社の求めに応えようとしています。ご不明な点があれば、是非、お近くの社労士にご相談ください。
参照文献等 : 厚生労働省HP