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「働き方改革関連法」遵守のために、
中小企業が今、取り組むべきこと

column

2020年02月26日(最終更新 2022年03月16日)

これまで日本は、よくも悪くも「長く働く国」として世界に知られてきました。実際、多くの業界で残業や休日出勤はよくあることだったのですが、近年になって長時間労働に起因する事件や事故が多発したことから、ついに「働き方改革関連法」が立法化され、2019年4月より順次施行されています。
本稿では、主に中小企業を対象にし、この法律を遵守するために、どうすれば必要な対策を講じることが可能かを解説します。

「働き方改革関連法」とは、どのような法律か

この法律の正式名称は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といい、既存の労働法8本の改正を一括で行う内容となっています。

この法律の趣旨は、“法改正を通じて、あらゆる企業で働く労働者が長時間労働を是正しつつ、多様な働き方を選択でき、雇用形態にかかわらず公正な待遇を確保できる社会を実現する”ことです。非常に強制力の高いことが特徴で、条項は単に努力義務として規定されているのではなく、違反に対して懲役刑や罰金刑が用意されています。

「働き方改革関連法」で定義されている中小企業とは

この法律では、対象が大企業と中小企業に二分され、それぞれ別に扱われています。ここでの中小企業とは、その企業における「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」によって定義されます。具体的には表1のとおりです。

表1:「働き方改革関連法」における中小企業の定義

①資本金の額または出資金の総額

業種 資本金の額または出資の総額
小売業 5,000万円以下
サービス業 5,000万円以下
卸売業 1億円以下
その他 3億円以下

または

②常時使用する労働者数

業種 常時使用する労働者の数
小売業 50人以下
サービス業 100人以下
卸売業 100人以下
その他 300人以下

※個人事業主や医療法人など資本金や出資金の概念がない場合は、労働者数のみで判断することになります。

※厚生労働省京都労働局「働き方改革関連法の主な内容と施行時期」より抜粋

「働き方改革関連法」のうち、中小企業への影響が大きい改正項目が2つあります。それは「年次有給休暇の確実付与義務」と「時間外労働の罰則付き上限規制」です。すでに前者は2019年4月より施行されており、後者は2020年4月より適用開始になります。

御社がもし、上記に該当する中小企業であり、まだ具体的な対策を講じられていないというのであれば、すみやかに行動に移す必要があります。

中小企業への影響が大きい2つの改正項目

ここで一度、中小企業への影響が大きい2つの改正項目をおさらいしておきましょう。

まず「年次有給休暇の確実付与義務」ですが、ここでの最大のポイントは労働者に、確実に有給休暇を取得させるということです。具体的には、年次有給休暇が10日以上付与されているすべての労働者に対して、毎年5日分を使用者がそれを確実に取得させる義務を負います。しかも、基本的には取得時季に指定期間があり、使用者は労働者の意見を聴取して、できる限り休暇が労働者の希望に沿った時季になるよう努めることが求められます。

もし、年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、対象となる労働者1人につき30万円以下の罰金が科せられることになっています。ただ、労働基準監督署による監督指導では、“原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととする”と厚生労働省など関係省庁は言明しており、違反イコールただちに罰金刑ということにはならないかもしれません。

一方、「時間外労働の罰則付き上限規制」というのは、時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなるというものです。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働+休日労働を合計した場合で月100時間未満、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」がすべて1ヶ月当たり80時間以内に収まらなければなりません。

また、臨時的な特別の事情があっても、 時間外労働が月45時間を超えられるのは年6ヶ月が限度になります。さらに気をつけなければならないのは、これらの時間計算は企業の決めた「所定労働時間」ではなく、法律の定めた「法定労働時間」で算定されるということです。“当社は1日9時間、1週45時間労働だから、残業は発生していない”といっても、法定労働時間は1日8時間、1週40時間労働であるため、この主張は通らないことになります。上記に違反した場合は、使用者に6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。“恐れがあります”という表現になっているのは、こちらも“やみくもに処罰するつもりはないけれども、悪質と判断したときはその限りではない”というニュアンスが含まれているものと思われます。しかし万が一、罰則を受けるようなことになると、それは当然ながら報道の対象となります。企業イメージの大幅な低下は避けられないため、法律は遵守するのが賢明です。

中小企業が今、取り組むべきことは

では、中小企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか。これまで見てきた中でお気づきかもしれませんが、「働き方改革関連法」の施行で求められているのは、労働者の労働時間を正確に管理することです。また、日本の多くの企業が長時間労働になる原因の1つに、労働生産性の低さが挙げられています。残業や休日出勤を発生させないためには、1つひとつの業務の効率を上げていく必要があります。

つまり、求められているのは労働時間の管理と業務効率化です。中小企業の場合、こうしたことにあまり取り組むケースが少なく、取り組んでいたとしても十分にIT化されていないため、管理が追いつかないきらいがありました。

たとえば、「時間外労働の罰則付き上限規制」では、時間外労働時間が月45時間以内であることや、2~6ヶ月平均で月80時間以内に収まっていることを、きっちり見ていく必要がありますが、紙ベースの管理では進捗管理が困難です。その結果、月末に締めた後でないと実態がつかめず、上限を超えていたことがわかっても、後の祭りというわけです。

しかし、IT化されていれば、月半ばでも、その時点の全労働者の残業時間が把握でき、上限を超えそうな労働者がピンポイントでわかります。そのため、当人に声をかけてペースを落とさせる、当人の仕事を誰かに割り振る、などといった適切なアクションを取れます。結果として、上限規制を無理なく守ることができるのです。

ITによる業務の見える化と効率化

「『働き方改革関連法』を守るために専用のITツールを導入しなければいけないのか。お金も、人手もないのに」と思われる方は多いかと思います。しかし実をいうと、スタートはそれほどハードルが高くありません。最近は中小企業においても、スムーズな社内協業のためグループウェアの導入が進んでいます。グループウェアのスケジュール機能などをうまく活用すれば、労働者の勤務実態や休日や休暇の取得状況を俯瞰的に把握することが可能です。また、スケジュールの内容や会議予約などの状況を見て、業務の進め方にムダがないか見直しをかけることもできます。グループウェアで実現できる仕事の見える化こそが、労働時間の管理と業務効率化の第一歩です。そうした中、J-MOTTOでは月額150円/人~で25種類の機能が使える低コストのグループウェアを提供しており、中小企業のビジネス成長をサポートしています。

「働き方改革関連法」では、正確な労働時間を把握する必要がありますが、これに向けては勤怠管理のIT化を充実されることをお勧めします。

J-MOTTOには、「J-MOTTO Web 勤怠」というオプションサービスがあります。「働き方改革関連法」の施行に合わせたバージョンアップを行っており、労働者と管理者がともに勤怠状況の進捗確認ができたり(画面1)、残業時間の閾値超えを把握して(画面2)、当人や管理者にアラートを上げる(画面3)、などといったことができ、労働者・管理者・経営者それぞれが本業に専念しながらも、無理なく「働き方改革関連法」を遵守することが可能になります。

画面1:労働者、管理者双方が勤怠状況を確認可能な出勤簿

画面1:労働者、管理者双方が勤怠状況を確認可能な出勤簿

画面2:労働者の残業時間が進捗管理できます

画面2:労働者の残業時間が進捗管理できます

画面3:閾値を超えた労働者にアラートメールを送信できます

画面3:閾値を超えた労働者にアラートメールを送信できます

「J-MOTTO Web 勤怠」は、ソニービズネットワークス株式会社の勤怠管理システム『AKASHI』をベースに、クラウドサービスとして提供しているもので、J-MOTTOグループウェアをご利用の企業なら、月額3,000円/10人~でご利用いただけます。

「情報」の共有・利活用でさらに業務を効率化

また、業務効率化という観点で、企業内でのファイル共有も非常に有効です。ある企業で従業員がどのような業務で残業しているのかを調査した結果、最も多かったのが「資料作り」だったというケースもあります。日中の活動時間は対顧客、対他部門業務で割かれてしまうため、営業提案資料作りや会議資料作りが、どうしても夜間や休日に回ってしまうのです。しかし、こうした資料の中身がすべてオリジナルである必要があるかというとそうでもなく、既存資料を再利用、部分利用できる箇所は多いものです。

そこで、一度作成したファイル類はできる限り社内共有するように努め、新規作成する際は、まず共有ファイルを探し、使えるものがないかを確認するところから始めると、かなり時間のムダを省けます。

J-MOTTOもオンラインのファイル共有サービスを提供しており、直観的な操作で行えるファイルアップロード機能や社外とも連携可能なファイル共有機能を提供しています。こちらは100GB月5,000円/10人~となっています。

導入のハードルが低いITを有効活用し、取り組む働き方改革。御社もぜひ、この機会にご検討ください。

参考文献:

厚生労働省 京都労働局「働き方改革関連法の主な内容と施行時期」
https://jsite.mhlw.go.jp/kyoto-roudoukyoku/content/contents/000271655.pdf

厚生労働省 働き方改革特設サイト 「年次有給休暇の時季指定」
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/salaried.html

厚生労働省 働き方改革特設サイト 「時間外労働の上限規制」
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/overtime.html

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