皆さんは“健康経営”という言葉をご存知でしょうか?WHO憲章における「健康」の定義は、「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること。」だそうです。
健康経営とは?
健康経営とは、従業員の健康管理を経営課題とし、戦略的に取り組む経営手法のことです。健康経営に取り組むことで、従業員の活力向上や労働生産性の向上など会社の活性化をもたらし、中長期的に業績の向上や企業の価値を高めることが可能であるとされています。
次世代ヘルスケア産業協議会において、生涯現役社会の構築に向けた「アクションプラン2018」の中で、人生100年時代も間近となる中、次の4つの壁があると言っています。
- 身体の壁: いわゆる現役時代から適切な健康管理が行われていない
- 価値観の壁:リタイア後の生活設計や生き方についての意識が低い
- 選択肢の壁:高齢者に適した柔軟な働き方や利用可能なサービスが少ない
- 情報の壁:自らに適した働き方や良質なサービスにたどりつけない
政府は、この「4つの壁」を乗り越えるためにも健康経営を強力に推進すると言っています。
また、経済産業省は健康経営を促進するにあたり、東京証券取引所と共同で従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む上場企業を原則1業種1社「健康経営銘柄2020」として選定しています。さらに、「健康経営優良法人認定制度」として、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度を設けています。
加えて、協会けんぽ東京支部、健保連東京、国保組合等は、働く人とその家族の健康を守るため、事業主と連携して「健康企業宣言」に取り組んでいます。そのメリットとして、①従業員の健康づくりは、企業リスク管理ができる。②従業員が健康であることにより、企業も実力を発揮できる。③企業で健康づくりを実施することでリスク低減が期待できるとしています。また、これらに取り組むことにより結果的に医療費が減少し、保険者の負担も減るという考え方です。
会社においても、メンタルヘルス不調や高齢化に伴う通院率の増大、ストレスチェックの実施など、従業員の健康への配慮が必要となっています。健康経営に取り組むことにより、①「従業員を大切にする企業」とイメージがアップし、これにより優秀な人材が集まりやすくなり定着する。②健康な従業員の仕事のスキルがアップすることにより、コストが下がり生産性が向上する。③人事・労務面のリスクマネジメントをすることにより、健全性が保てる等の効果があります。
健康経営の進め方
健康経営を実践するための進め方のコンセプトは次の通りです。
- 少ない費用でスタートできる。
- スモールチェンジから始め、成功体験を積む。
- PDCAサイクルを意識して実行する。
- 一気に結果を求めずに、無理なく実施する。
- 長期的な視点でのゴールを目指す。
- 手段が目的化しないように注意する。
まずは、定期健康診断の徹底から始めましょう。これにより健康状態を把握して適切な健康管理を行い、職場の有害因子を改善し、健康状態に応じた適正な配置をし、従業員の健康への関心を高めることができます。
私がお勧めする、健康経営を実践するための具体的ステップは次の通りです。
[ステップ1] 健康企業宣言を行う
- 健康宣言について会社の経営層が理解する。
- 社内外に向けて健康経営を行うことを宣言する。
[ステップ2] 組織体制を構築する
- 健康経理プロジェクトを立ち上げる。
- 健康づくりに関する外部人材の活用を検討する。
- 健康経営に関する表彰制度の策定を検討・実施する。
[ステップ3] 課題を把握する
- 健康度の見える化、数値化を図る。
(定期健診や再診の受診率、有所見率の確認。実労働時間、年次有給休暇取得率、喫煙率等を確認。)
[ステップ4] 計画策定・健康づくりの推進
- 優先的に取り組む課題を決定する。
- 課題の解決方法を検討し、計画を立案の後に実施する。
[ステップ5] 健康経営への取り組みの評価・見直しを行う
- 健康づくり等(体を使ったレクリエーションやセミナー)の実施状況、参加状況を把握する。
- 生活習慣・健康状況の改善、参加者の満足度・モチベーション・効果を確認し把握して、さらなる改善策を検討する。
ぜひ、「健康経営」と「働き方改革」に同時に取り組み、労働生産性を向上させましょう!