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台風被害への対応事例

column

2019年10月25日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

今年は大雨や暴風雨を伴う台風による被害が特に多い年ですね。特に最近の台風15号、19号に関して、亡くなられた方にはお悔やみもう上げ、被害にあわれた方々におかれましては一日も早い復旧・復興を祈念申し上げます。

さて、首都圏を直撃した台風の際には、鉄道の線路被害や計画運休もあり交通大きな打撃を受けました。これにより始業時刻を遅らせる等、会社は特別な対処を求められたところです。今回は、これらの対処事例につき紹介いたします。

交通機関の乱れによる影響

1.前日の対応

気象予報の精度が上がっていることにより、今回のような超大型台風の接近または上陸により、大きな被害をもたらすであろう予測は容易になっています。公共交通機関が計画運休を発表するなどにより、台風が接近する当日に通常の時間帯で勤務ができないことを会社が事前に把握することができました。それに伴い、多くの会社では次のような事前の対処をしていました。
①就業規則等に基づき、始業・終業時刻を遅らせることを社員に通知した。
②社員の安全を考慮し、特別休暇や計画年休取得日とし、営業しないことを決定した。
③出社するか否かは、その時の状況により社員の自主的判断に任せることを通知した。

多くは上記①の対応をとったようですが、公共交通機関が予定していた運転再開時刻が後ろ倒しとなり、駅に入場するまでに長蛇の列をなす等、設定した始業時刻までに会社に到着できなかった社員が多かったようです。この場合は、鉄道各社の運転再開発表時刻よりも余裕をもった始業時刻設定が必要でしょう。

なお、始業を遅らせた分終業時刻を遅らせた会社と、始業時刻は遅らせたが本来の始業時刻から勤務したとみなしたケースのいずれも見受けられました。

また②の特別休暇では、当日分の給与を満額支払う年次有給休暇以外の特別休暇とした会社が多く、使用者の責めに帰すべき休業として休業手当(労基法に定める平均賃金の6割)を支給する日とした会社は少数派でした。

なお、年次有給休暇の計画的付与日とする場合は、事前に労働組合または労働者代表との労使協定の締結が必要でしたので、この対応をとった会社が少数だったようです。

2.当日の対応

前項にも記載しましたが、公共交通機関の運転再開事情により、当日の出社が遅らせた始業時刻にさえ間に合わなかった社員がいたようです。また上記③に基づき当初から出社しないことを決めていた者、あるいは出社しようと試みたが断念した者など、当日、遅刻・欠勤した社員が多数いました。

一般的に電車の遅延により遅刻した社員への対応については、公共交通機関が発行する「遅延証明書」を会社に提出させることにより、遅刻扱いとはせず始業時刻から勤務したこととみなす場合が多いようです(中には遅刻した時間により有給・無給を区別する場合もあります。)。しかし法令上では、遅延証明書が提出されてもノーワークノーペイにより当該不就労時間分の賃金の支払いを求めておりませんので、出勤扱いとするか否かは会社の裁量で決定できます。

今回の場合では、遅延証明書の提出がなくとも遅刻扱いとしないとした会社が多かったようです。

また出社しなかった(できなかった)社員への対応ですが、欠勤扱いとして賃金控除する会社などはごく少数で、有給の特別休暇とした会社が多いようでした。なお、フレックスタイム制を適用してる社員の場合は、清算期間(1か月が多い。)中の総労働時間のみを見ていますので、今回のケースで欠勤したとしても他の日にその分の時間労働して所定の総労働時間勤務すれば、賃金控除されることはありません。これはコアタイムの設定のある場合でも同様です。

このような事案もありました

失礼ながらクスッと笑ってしまうような、以下の話を聞きました。

ある社員が通勤に利用する公共交通機関と、同じ部署で勤務する上司のそれとが同じ沿線で、自分が利用する駅よりも上司の自宅の最寄り駅のほうが会社から遠方にある社員さんが、運転再開予定時刻に駅に向かったところ、入場するために長蛇の列をなしていたそうです。運転再開時刻も未定だったことからあきらめて一度帰宅したそうですが、先の上司から「いま、〇〇駅まで到着した。」や「やっと□□駅まできた。会社には△時くらいにはつける思う。ガンバル。」などとSNSを通じて逐一連絡がきていたそうです。

会社からは「場合によっては休んでも良い。」と言われていたそうですが、沿線の上司が会社に向かっているのに、部下の自分が休むわけにはいかないと重い腰を上げ、再度最寄り駅に向かい、本来の始業時刻の5時間遅れで会社に到着したようです。

上司からは一言「遅かったな。おつかれさん。」と声をかけられたそうですが、「同じ部署に沿線の者がいる場合には、事前にどのように対応するか話し合いをしておく必要がありますね。」と、その社員さんは苦笑いしていました。

被災者の皆さまに協会けんぽからのお知らせ

今回の台風19号の報道では、住居の2階近くまで浸水する等の大きな被害の状況が何度も放映されました。家財道具や大切な書類が水没してしまった様子がうかがえました。

今回の災害に関して、協会けんぽでは災害救助法が適用される地域の被災者に対して、健康保険証がなくとも病院や診療所で受診ができるよう対処する旨を発表しました(以下、URLを参照ください。)。是非ご活用ください。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g1/r1-10/2019101401

被災した皆様が、一日でも早く平穏な生活に戻れますことを祈念し、今回のコラムの筆を置くこととします。

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