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パワーハラスメントに関して法制化されています

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2019年09月18日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

本年5月29日に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下、「労働施策総合推進法」という。)」の一部が改正され、パワーハラスメント(以下、「パワハラ」という。)の防止等に関して法制化されました。改正法の施行日は、「交付の日(6月5日)から1年以内の政令で定める日」となっていますが、おそらく2020年4月1日になると思われます。

今まで、セクシャルハラスメント、妊娠・出産・育児・介護休業に関するハラスメントに関しては、法律でその定義等が明文化されていましたが、パワハラに関しては法の規定がありませんでした。今回の法改正によりパワハラが法律上定義され、企業にとって法律に沿った対応を求められることになりました。

今回は、改正法されたパワハラ関係法について見ていきたいと思います。

改正法の内容

パワハラの定義と防止義務(労働施策総合推進法第30条の2第1項)

『事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。』

職場におけるパワハラとは、以下の要素の全てを満たすものです。
① 優越的な関係を背景としている
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動による
③ 就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
※適正な範囲の業務指示や指導についてはパワハラには当たりません。
また、パワハラの防止等措置の義務について、大きくは以下の3点を会社に義務付けています。
① 周知、啓発(研修等)の実施
② 相談窓口の設置及び整備
③ パワハラ発生時には、迅速でかつ適切な対応を取ること

不利益取り扱いの禁止(同法第30条の2第2項)

『事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。』

次に、労働者への不利益な取り扱いを禁じています。パワハラの相談を行ったこと、また相談に協力したことを理由とする解雇等、不利益な取り扱いが規定化されました。

ちなみにセクハラにおいても同様の規定が男女雇用機会均等法に、また妊娠・出産・育児・介護休業に関するハラスメントにおいても育児介護休業法に新たに盛り込まれ、ハラスメントの防止措置義務と不利益な取り扱いの禁止はセットで規定されることになります。

国、事業主、労働者の責務(同法第30条の3)

紙面の都合上、条文の原文の掲載は割愛しますが、国、事業主、労働者に対して次のような努力義務が課せられ、パワハラ問題への取り組みや理解を求めています。

① 国の責務:前述の第30条の2第1項の、優越的言動問題の事業主と国民の理解を深めるために広報活動、啓発活動等の措置を行う。
② 事業主の責務:労働者が他の労働者に対する言動に注意を払うよう、研修会の開催等の配慮を行う。他。
③ 労働者 の責務:優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払う。

紛争解決の援助(同法第30条の4、5。第33条)

パワハラの個別労働関係紛争に対して、都道府県労働局長の助言・指導・勧告及び紛争調整委員会に調停を行わせること等が定められました。

また、厚生労働大臣が助言・指導・勧告できる規定を設け、さらに当該勧告に従わないときは、その旨を公表できることが定められました。

会社の対応

今回の法制化にあたり参議院附帯決議の中に、「職場におけるパワハラ等によって多くの労働者の健康障害が生じている。その規制・防止を行うことが喫緊の課題である。」との一文が盛り込まれています。会社としては、パワハラによる健康被害の発生を未然に防ぐために、また残念ながら発生してしまったとき、最低限、以下の対応を行う必要があると考えます。

① 事業主がパワハラを含むハラスメントを発生させない旨を宣言し方針を示す。
② 上記①の方針や、パワハラが発生した場合の対処が厳正に行われる等を就業規則に規定し、それを周知する。
③ パワハラの認識を高めるための研修会を実施する。
④ パワハラの相談窓口を設置し、相談者等のプライバシーの保護等ルールを策定する。

パワハラが発生するような職場は、やはり雰囲気が悪いはずです。そのような職場では労働者の皆さんが楽しく生き生きと働くことが難しいでしょう。ひいては労働生産性が低下してしまう可能性も大です。

今回の法制化を機に、会社はパワハラ対策を積極的に進める必要があります。

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