今回は、2019/4/24に開催した中国版業種別審査ノート発行記念セミナーにて、「中国の業界リスク」と「中国で勝ち抜く企業の与信管理」をテーマに講演がありましたので、その講演内容を紹介いたします。
「中国の業界リスク」について
第一部は、趙氏から「中国版業種別審査ノート」の活用方法や中国での取引先企業の把握と評価などについて説明がありました。
まず、趙氏は中国の詩人である蘇軾の漢詩「題西林壁」を例にあげて、取引先企業の真の姿を把握するには、様々な視野で見る必要がある。全体的・マクロ的な国家あるいは国家間のリスク、ミクロの個社の企業リスク、その中間に業界ごとのリスクを見ていくべき、と述べました。
国家や国家間のリスクについては、セミナー内でも米国と中国の間の経済貿易摩擦を例にあげて紹介していましたが、貿易戦争はますます激しさを増しており、その重要性について実感をもって理解できる状況になってしまいました。
業界については、財務情報の分析が重要であり、財務の安定性、企業の売掛金などを見ていくべきで、今回の「中国版業種別審査ノート」にはこれらの分析結果も掲載されているとのこと。
「中国版業種別審査ノート」の活用方法について、趙氏は中国の有名な戦略家である孫氏の兵法の言葉「敵を知り己を知れば百戦危うからず」を用いて、以下が重要だと説明しました。
- 業界の財務指標とリスクを把握
- 取引先企業について、所属する業界におけるポジションを把握
- 自社の所属する業界でのポジションを把握
リスクモンスターチャイナの提供するRM与信限度額については、自社の企業体力と取引先の財務情報や取引先の属する業界の財務データも加味して算出していますので、RM与信限度額は孫氏の考えにも通じる算出方法だとあらためて認識しました。
信用調査レポートは、主に取引先企業の把握と意思決定に使用されますが、趙氏から調書の掲載内容や注目ポイントが紹介されました。
注目ポイントとして・情報収集:情報の完全性、情報の豊富さ、情報収集のスピード、収集ルート、・情報の見分ける:情報の真実性、情報の信憑性、情報の有効性、・情報分析:分析手法と専門性、・運用:信用評価と与信限度額、支払サイトの算出を上げて説明しました。
中国で勝ち抜く企業の与信管理
第2部は、リスクモンスターの川本氏から、「中国で勝ち抜く企業の与信管理」をテーマに講義しました。昨年2018年、日本で上場・大企業に対して実施した与信管理意識アンケート調査の結果を基に、中国でも勝ち組企業となるための与信管理手法についての話がありました。
このアンケートの趣旨としては「取引リスクに対してどのような取り組みをしているのか」「業種、地域、企業規模によって、与信管理の取り組みにどのような傾向が生じているのか」を見るもので、アンケートより得られた知見から「勝ち抜く企業」の取り組みを紹介してもらいました。
まず、貸し倒れ発生について、アンケート回答の実に4割もの企業で、直近3年間内に、貸し倒れや回収遅延に遭遇していて、取引先の与信管理の重要性をあらためて認識しました。
アンケート回答企業における、与信管理上の最大の課題は「取引先の情報入手」であるという結果を紹介し、中国での商取引の特性や与信の判断材料となる取引先の情報収集方法について紹介がありました。
また情報収集の方法として、今回の「中国版業種別審査ノート」の活用や中国企業信用調査レポートの活用方法を説明しました。
下記の図は、「中国版業種別審査ノート」内の分析データの1つについて説明したものですが、平均値の推移だけでなく、上位層・下位層のばらつきも見ていくことで、よりその業界の動向を把握できる。と川本氏は述べています。
与信限度額についても、アンケート回答から9割の企業で与信限度額を設定し運用しており、また、4割の企業では与信限度額の算出について課題と認識している、と紹介しました。
川本氏から、リスクモンスターが推奨する与信限度額の算出方法について紹介がありました。
そのほかにも取引先の定期的な見直しや取引先全体のリスクを把握するポートフォリオ分析、与信管理ルールの設置と運用など、中国で勝ち抜く企業に必要な与信管理手法の紹介がありました。
ディスカッション
第3部として、趙氏と川本氏をパネラーとして、さらに筆者が進行役として入り、「中国版業種別審査ノート」を中心テーマにディスカッションを行ないました。
お二人から書籍発刊の経緯や、掲載の15業種に選んだ理由、与信管理上注意すべき業界(債権回収難が目立つ業界)などをお話しいただきました。
あらためまして「中国版業種別審査ノート」は中国での業界ごと特有のビジネスモデルや今後のトレンドを把握することができますので、参考にしていただければ幸いです。