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健保・厚保における報酬について

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2019年05月22日

社会保険労務士法人味園事務所 特定社会保険労務士 味園公一

 “平成”から“令和”へと時代が変わりました。新年を迎えるがごとく、一部にはカウントダウンパーティーもあったようです。新年を迎えて4か月しか経過していませんが、新時代となり気持ちも新たに執筆いたしますので、令和になってもこのコラムにお付き合いいただけると幸いです。
 さて、日本年金機構(以下「年金機構」という。)では少なくとも4年に1回事業所の調査を実施しています。調査内容としては、(1)被保険者資格の取得漏れの者はいないか?、(2)標準報酬は適正に算定されているか?、(3)月額変更の手続きは適正に行われているか?、(4)報酬の判断が正しく行われているか?等です。
 今回は、上記(4)についてご紹介しようと思います。

報酬とは?

 健康保険、厚生年金保険において報酬とは、標準報酬月額(保険料や給付の算定基礎となる額)の算定の元となるもので、その名称を問わず、労働者が労働の対象として受けるものをいいます。金銭(通貨)に限らず、現物で支給される食事や住宅、通勤定期券も報酬に含まれます。なお、臨時に受けるものは報酬の対象とはなりません。
 ちなみに、以下に年金機構が報酬とはならないとしているものを記します。

報酬とならないもの
通貨で支給されるもの ●事業主が恩恵的に支給するもの
病気見舞金、災害見舞金、結婚祝金など

●公的保険給付として受けるもの
傷病手当金、休業補償給付、年金など

●臨時的、一時的に受けるもの
大入袋、解雇予告手当、退職金など

●実費弁償的なもの
出張旅費、交通費など

●年3回まで支給されるもの
賞与など(年3回以下支給のものは標準賞与額の対象となる)
現物で支給されるもの 食事(本人からの徴収金額が現物給与の価値の2/3以上の場合)
社宅(本人からの徴収金額が現物給与の価値以上の場合)
制服・作業衣などの勤務服など

ある日の調査にて

 先日ある年金事務所において、私が担当した弊所顧問先の調査で窓口担当者と次のようなやりとりがありましたのでご紹介します。
 賃金台帳に「表彰」という支給項目があり、昨年1回だけ、かつ、お一人だけ30,000円の支給実績がありました。年金事務所の職員さんからは「表彰とはどのような内容ですか?」との質問があり、「部門で不定期に実施する、販売促進コンクールでの上位者に支給される賞金ですよ。」と私からお答えしたところ、「これは報酬に当たりますので、賞与支払届を提出し保険料を納付してください。」と突然宣告されました。私としては先の“臨時に受けるもの”との認識でしたので寝耳に水の話でした。

臨時に受ける報酬

 年金機構HPにも掲載がありますが、「疑義照会回答(厚生年金保険 適用)」の被保険者資格取得届の8「報酬の範囲について」では次のように回答されています。
 臨時のもののうち例えば大入袋については、大入袋のもつ本来の性質「1.発生が不定期であること、2.中身が高額でなく、縁起物なので極めて恩恵的要素が強いこと。」からすると生計にあてられる実質的収入とはいい難く、報酬及び賞与としないとしています。
 「臨時にうけるもの」とは、①被保険者が常態として受ける報酬以外のもので、②狭義に解するものとすることとされており、通常の生計に充てられる収入の性質が報酬であり、臨時的なものは報酬となりません。
 臨時的かどうかは、③支給事由の発生、原因が不確定なもの(就業規則等により規定されていない。)であり、④きわめて狭義に解するものとすることとされていますので、⑤例年支給されていないか、支払われる時期が決まっていないかにより判断されることになります。
 これらを鑑みると先の「表彰」に関して、上記①については毎月の給与の内容とは別のものなので要件を満たしている。上記③については就業規則やその他において規定されていないので要件を満たしている。上記⑤については販売促進コンクールが不定期に行われているものなので要件を満たしている。上記②、④の極めて狭義に解するかは具体的な事例がないので判断がつかないと考えますと「臨時に受けるもの」となり、先の賞与支払届提出には当てはまらないのではないかと個人的には考えます。

本件結末

 ここ最近の年金機構では、「会社が支払うべきものは全て報酬とすべし。」という考え方をしているようですので、このような臨時の給与・手当を支払う場合は、報酬に当たるか否かの判断を個別に年金事務所に相談すべきでしょう。  また、年金事務所から不要な指摘を受けないようにするためには、臨時の給与・手当に関して就業規則等に手当や一時金と規定をして、労働の対価として支払うことにし、報酬として対処(月次の給与や賞与としての取り扱い。)をすることです。

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