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column
2019年12月25日
利墨(上海)商務信息咨詢有限公司 河原 吉虎
今回は中国の教育産業についてご紹介します。
2019年3月に、中国で政治的な重要な会議である全人代(全国人民代表大会)が開かれました。この中で、李克強首相は中国の2019年の実質国内総生産(GDP)の成長目標を6.0%から6.5%に設定し、安定成長を目指す姿勢を示しました。
同じく全人代で、経済成長への下支え策として製造業向けの増値税(付加価値税の意、日本における消費税に相当しますが、中国では業種ごとに税率が異なります)これを2019年4月1日から現在の16%から13%に引き下げるという政策が発表されました。必要とされる減税施策をダイナミックに決めて、即座に実行するのには、本当に驚きます。
今回の全人代でも国民教育は重要なテーマの1つとして扱われました。
中国では、毎年中国全土で一斉に行われる大学入学試験(「高考」と呼ばれています。)とその大学受験に至るまでの小学校、中学校の学習時間の長さと、宿題の多さが有名です。
中国の学校の宿題事情ですが、小学生でも毎日宿題が出て、夜の9時や10時までかけて終わらせる。また親も連帯責任で、子どもが宿題を提出できなかったり、宿題の答案が間違っていても親に指導が来ます。親も子どもの宿題を見ますが、親がつきっきりで出来ない場合は、代わりに祖父母が孫の宿題をフォローしたり、補習塾に行ったり、家庭教師をつけたりもするようです。
昨今、インターネットとモバイル端末が普及した中国において、教育の分野でもオンライン上で提供されるサービスやアプリケーションが数多くあります。また、中国では都市と地方(農村)との教育環境の格差があり、中国政府としても是正すべき課題であり、解決策としてのオンラインでの教育サービスというのが普及を促進しています。
ジェトロも中国のインターネット教育についてのレポートをあげています。
「インターネット教育に沸く中国の教育市場https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/9715817cd88c5466.html」このレポートの中で、中国の2017年のオンライン教育市場の規模は1,941億2,000万元(1円17元換算で3兆3,000億円)、また2019年には2,727億1,000万元(1円17元換算で4兆6,361億円)に達する見込みと報告しています。また、同レポートの中でも、オンライン教育のプラットフォームやアプリケーションをいくつか紹介しています。
まずは、中国教育市場に関わる日系企業の取り組みを紹介します。
日本でも展開しているベネッセの家庭向け通信学習「こどもちゃれんじ」、これが中国でも展開されておりメインキャラクター「しまじろう(中国語で 巧虎 と表記)」は中国でも人気のキャラクターです。ベネッセホールディングスのIR情報によると中国での会員数で115万人にも上るとのこと。(2018年4月時点https://www.benesse-hd.co.jp/ja/ir/individual/overseas.html)
しまじろうのTVアニメは中国でも子どもに人気のコンテンツの1つですし、都市部ではショッピングセンターの一角などで、しまじろうの人形や教材が露出されているのを見かけることが出来ます。
中国での教育系のアプリケーションをいくつか紹介します。
算数の四則演算ドリルの画像を読み取って、瞬時に答え合わせを行ってくれるスマホアプリです。
試しに、私の子どもの掛け算で試してみましたが、うまくいきませんでした。(アプリが識字できる範囲を越えた数字の書き方だったのか、もしくは日本の掛け算フォーマットに対応していなかったのか、分かりません。)
なお、最近になって日本語版が登場したようです。アプリケーション名は「CheckMath」(https://itunes.apple.com/jp/app/checkmath/id1447618956)
お子さんの宿題の作業支援に、ぜひお試しください。
つづいて、教育がメインということではないですが、音声配信を通じた教育学習ができるアプリを紹介します。
中国で人気があり4億人以上が利用登録するインターネットラジオです。書籍や小説の朗読やニュースやお笑いなどの音声コンテンツ配信、ライブ配信などがある音声配信プラットフォームです。英語やビジネススキル、歴史のコンテンツもあり、知識習得ツールとしても多くの人に利用されています。
私自身も、漢詩や上海語(中国の普通語ではない上海方言の中国語)の語学学習に使ったりしています。
左が世界的な名著「老人と海」の朗読。中国国内だけでなく世界の書籍を音声で聞くことができます。日本の作家、東野圭吾なども中国で非常に人気の作家です。
中央が上海語の教材の音声です。上海出身の中国人は日常会話の中で普通語と上海語とを頻繁に切り替えたり、時に混ぜながら使いこなしています。
右は英語のコンテンツです。
こちらも日本向けにもサービス展開がされているとのこと。興味ある方は試してみてください。
中国の都市部では、(大人向け、子ども向けともに)ダンススクールや水泳教室、英語教室などのほかにピアノ・ギター教室など見かけます。中国の人気短編動画アプリ「抖音(Tik Tok)」でもダンスをしたり、楽器を弾いたりする動画をよく見かけます。
楽器学習のアプリを紹介します。
このアプリは、アプリ上でピアノやギターなどの楽器の習得ができます。まず、学習をしたい楽器を選ぶと、自分自身のレベルを査定するクイズがあります。楽譜を読んだり、記号名を答えたりします。下の写真はそのクイズの1つですが、音楽を聴いて曲名を当てるものです。中国語の知識もある程度必要とされます。
それを終えると、自己のレベルに合ったところから始めて、先生の動画を見たり、直接、先生とやりとりして、徐々にレベルを上げていきます。
二胡のコンテンツもあるのが中国らしいです。中国語と楽器が同時に学べて一石二鳥ではありますが、私はまだ始めていません。
若いころから学習競争に勝ち抜いてきた中国の人たちは、社会に出てからも学習する意識、知識を習得する意識は強いです。彼等が慣れ親しんだスマホアプリケーションやオンライン上で新しいサービスがどんどん生まれています。興味深く観察していきたい分野です。